行財政改革特別委員会調査報告書について 

<前書きと要旨>

 平成10年12月、町田市議会に「議員定数の削減を求める請願」が出されました。その取扱を決定するにあたって、「議会改革特別委員会」と、この「行財政改革特別委員会」を議会内に設置することになった。

 当初の請願は、「議会改革特別委員会」で審議されることになり、その請願審査が終了するのに1年近くを要した。最後にはその削減数を4名と決定するところとなり、採決では初めて記名投票を行うなど、町田市議会史上でも有意義なことであった。結果的に、今期で勇退する現職議員が大量に発生するなど、その後の議員の意向を大きく変える働きをする契機になった。
 他に、議会議事録のインターネット化、議会のTV中継などを決定した。議会のインターネット化については、既に昨年の12月段階で実現される運びとなった。こうして、この委員会は複数のテーマを個別に健闘することになり、都度、重要な決定を行った。

 ところで、一方の「行財政改革特別委員会」は、その審議に長大な時間をかけ、他都市への視察などにもかなりの重点が置かれた。もとより、行政のあり方について、その改善を求めるのは議会の存在理由の一つと考えられる。

 その委員会では、次のテーマが掲げられた。(1)財政の問題、(2)民間委託の問題、(3)遊休資産の有効利用の問題、(4)労務管理の問題であったが、最大の提言は、民間委託の問題であった。主に提言されたのは、学校給食、清掃業務全般、運転業務であるが、町田市の場合は、これらが市の直営事業となっている。この報告内容は、その推進を求めるものであるが、もとよりこの課題については、当初より反対意見が存在するものである。委員会と本会議の両方で反対論もていきされたが、賛成多数でこの報告を承認した。
 
 この報告は行政の改善を求めるもので、その実施の基本部分については、理事者の判断による。理事者は住民と直接対応するものであり、議会の求めることを実施するにあったては、それ自身の主体性をもって考えることになる。今後、町田市は市長・市議の改選を控えており、とりわけ市長の場合は、その結果によって、自己自身の立場を主張することになろう。


<報告書の本文>
  本委員会は、付議された事件についての調査を、下記のとおり報告する。



  1.付議事件        行財政改革についての調査検討

  2.調査目的        行財政全般について調査検討する

  3.委員会の開催状況

月 日概           要
平成11年(1999年)3月12日1.行財政全般についての調査検討のため、委員14人の本特別委員会が設置された。

3月29日 1.特別委員の選任(本会議議決) 委員 細野龍子、  高嶋 均、  田中修一、 藤田 学、 伊藤泰人、 戸塚雅夫、 長村敏明、 大西宣也、 佐藤常雄、 中里猪一、渋谷佳久、 志村賢蔵、 井上正行、八木邦治
2.正副委員長の互選   委員長 井上正行
                 副委員長  長村敏明   

4月26日1.特別委員の辞任(議長許可) 委 員 中里猪一

4月27日
議題 1.行財政改革について   
     2.委員会の運営について     
    調査検討事項     
    (1) 財政の問題 (2) 民間委託の問題 (3) 遊休資産の有効利用の問題  (4) 労務管理の問題

6月7日 1.特別委員の選任(本会議議決)   
    委 員 金森 貢

月 日概要
平成11年(1999年)7月26日 議題 1.再雇用について  
    2.委託状況について  
    3.給与費について  
    4.委員会の運営について

9月3日 議題 1.公有財産(土地)の状況について
      (1)普通財産(土地)について (2)行政財産(土地)について

10月7日 議題 1.公有財産(土地)について  
    2.委員会の運営について

11月18日 行政視察 市内各所   
   公有財産(土地)の状況について
平成12年(2000年) 1月17日 議題 1.公有財産(土地)の状況について  
     (1)学校跡地利用について (2)行政監査報告書(普通財産のうち土地の管理)につ いて (3)公有財産(土地)の概算評価格の状況について (4)委員会の運営について

2月7日 議題 1.公有財産(土地)の状況について 
    2.委員派遣について

2月14日 議題 1.公有財産(土地)の状況について  
    2.委員会の運営について

3月1日中間報告(本会議)

4月17日〜4月19日 行政視察 
 ・兵庫県加古川市 (行財政改革調査特別委員会について)  
 ・広島県福山市 (行財政改革大綱及び行財政改革実施計画について)
 ・広島県広島市 (第2次広島市行財政改革大綱及び地方分権・行財政改革推進対策特別委員会について)

7月14日 議題 1.民間委託の状況について 
    2.委員会の運営について                   3.委員派遣について

月 日概           要
平成12年(2000年)8月24日 行政視察〔学校給食の委託実施状況〕
・東京都八王子市   (デリバリーランチの実施状況について)
・東京都墨田区   (調理業務等の直営から民間委託への移行状況について)

9月29日 議題 1.公有財産(土地)の状況について 
    2.民間委託の状況について  
    3.委員会の運営について

10月20日 議題 1.遊休資産の有効利用について
    2.委員派遣について

11月17日 行政視察〔清掃事業の実施状況〕
・神奈川県相模原市   (ごみの収集体制及び民間委託への検討事項について)
・東京都多摩市   (民間委託と市の業務について)

11月22日 議題 1.遊休資産の有効利用について 
    2.委員会の運営について

12月19日 議題 1.民間委託について 
    2.遊休資産の有効利用について 
    3.委員会の運営について
平成13年(2001年)1月23日 議題 1.民間委託について  
    2.労務管理について  
    3.委員会の運営について

2月2日 議題 1.労務管理について 
    2.民間委託について

2月21日 議題 1.労務管理について 
    2.民間委託について

3月1日中間報告(本会議)

4月9日 議題 1.労務管理について 
    2.委員会の運営について

月 日 概           要
平成13年(2001年)5月17日 議題 1.労務管理について           
     2.委員会の運営について        

7月2日 議題 1.財政について  
    2.労務管理について   
    3.委員会の運営について

7月30日 議題 1.労務管理について  
    2.財政について   
    3.委員会の運営について

8月29日 議題 1.財政について  
    2.労務管理について 
    3.委員会の運営について

9月28日 議題 1.財政について  
    2.委員会の運営について

10月29日 議題 1.財政について 
    2.委員会の運営について

11月16日 議題 1.財政について  
     2.委員会の運営について


4.調査の結果

  現在、町田市を取り巻く環境は、地方分権の推進や長引く景気低迷、本格的な少子・高齢社会の到来など様々な課題を抱え、21世紀の活力あるまちづくりや多様化した市民ニーズに柔軟に対応する必要性に迫られている。
  また、市財政については、実質的な収支は黒字であるものの、財政構造が硬直化の傾向にある。
  現下の町田市の財政状況、組織、機構を思料すると、21世紀に向かって大胆な改革が必要と考える。
  市の行財政改革においては、平成8年よりオプティマ21(町田市行財政改革推進計画)を作成し、庁内において段階的に実施している。しかし、市の行政の取り組みだけでは限りがあると思われることから、町田市議会として、オプティマ21を含め、行財政全般についての調査検討を体系的かつ効果的に行うために本特別委員会を設置したものである。
  調査に当たり、当特別委員会では調査検討事項を、
 (1)財政の問題
 (2)民間委託の問題
 (3)遊休資産の有効利用の問題
 (4)労務管理の問題
 とした。
  もとより、行財政改革は、旧来の行財政システムをスクラップ・アンド・ビルドの精神にのっとって見直し、行財政の再構築を目指すところにその意義が存在するのであり、それは単に行政内部の自己努力によってのみではなく、住民の代表である議会も共に考え、議論しなければ、実質的意味において行財政改革を行ったことにはならないと考える。
  以上のような観点から、調査検討を行った結果、委員会として下記事項を提言するものである。

 (1)財政について
   @ 今後、少子・高齢社会を迎えることにより生産年齢人口が減少し、また、経済構造改革が進むことにより市民の80%以上を給与所得者が占めている町田市は財政面で厳しい状態に陥る。今後、自主財源を確保する観点から国からの財源移譲を積極的に進め、併せて、町田市独自の税制を視野に入れるなど財源の確保に努めるべきである。

   A 現在、公債費比率は7%前後であるが、公債費比率の上昇は、後年度財政への負担が増加し、財政の硬直化が懸念される。事業実施に当たって、将来世代に負担してもらえばいいという起債に対する考え方は非常に安易であり、今後計画に当たっては、十分検討すべきである。

   B 中長期的な事業に当たっては、事業計画と併せて、最低5年後を見据えた長期的財政計画の策定をすべきである。

   C 金融機関との取引については指定金融機関の中のみで行うのではなく、入札制度の導入を検討するなど、指定金融機関のあり方も含めた見直しを行うべきである。

   D 一般会計の予算編成時の一律カットについては、カットすることで行財政改革を行ったとの認識ではなく、あくまで市民サービスを低下させず、むしろ向上させるための行財政改革であるとの認識の下に行われるべきである。また、最小の費用で最大の効果を上げるという観点からも不要不急の事業の見直し等考慮すべきである。

   E 財政計画策定や予算調整は実質収支比率等をもとに調整が行われているが、その際の基準を明確にすべきである。

   F バランスシートの導入に際しては、行政評価と一体的にとらえ、導入の目的を明確にするとともに、行政コストの算定については、行政組織のあらゆる面がコストに反映されるとの認識の下に行われるべきである。

   G 取得した資産の価値を実態に則して把握するため、減価償却費をバランスシートに計上すべきである。

   H 事業にPFI(Private Finance Initiative)の手法を活用する場合は、財政の効率及び投資効果という観点から、適正な導入のあり方を検討すべきである。

   I 各種補助金などについては、十分精査の上、補助効果のある事業について行うべきであり、補助効果に消極的評価のあるものについては、思い切って削減するなど、サンセット方式を導入する等の補助のあり方を検討すべきである。

   J 今後、受益者負担については、不公平感の是正の観点から、適正なあり方について検討すべきである。

   K 財政状況を判断するに当たって、必要とされる財政に関する情報提供がなされていない。市民に対するアカウンタビリティーという観点からも、市財政の将来計画及び、基本理念等も含めた情報提供を徹底すべきである。

 (2)民間委託について
   @ 少子・高齢化社会を迎え、行政に対する市民要望は増大化し、各自治体では財政的効果等の観点から民間委託を増やす傾向にある。当市においても、民間委託の可能なもの、また、民間委託によりサービスの向上が図れるものは積極的に委託をすべきである。今後、民間委託を検討するに当たっては聖域をつくらず、市民病院の公設民営化、保育園、図書館についても検討することとし、とりわけ、学校給食、清掃業務全般、運転業務等については民間委託を前提に、早急に退職者不補充及び再雇用の基本計画を定め、民間委託等を実現すること。

   A 民間委託については、行政責任を確保しつつ、単に経費の節減効果だけではなく、市民サービスの向上、及び民間活力並びに合理的な経営方法の導入を図ること。また、民間を活性化させていく観点からも積極的に推進していくこと。その結果として削減できた人員については、新たな業務及び市民要望に対応するため、計画的に行うこと。

   B 清掃業務の民間委託については、市民要望のある午前中の収集、夜間の収集等及びごみ集積所の清掃管理からも積極的に推進する必要がある。また、分別収集、環境問題等の業務も増大する中で、現職員については分別収集、環境問題等で指導的な仕事に従事すべく職務内容の変更を行うこと。

   C 施設管理公社への委託についてはかなりの部分でさらに再委託されており、直接委託した場合と比較してコストの削減になっていない。また、市に依存するところが多く、法人化するなどで自立的団体に成長していかなければ、存在意義がない。強く検討を求める。

   D 競争入札をする場合、民間企業と市が同じ条件で競争できるような体制を検討すること。

   E 契約時においては、民間従事者の労働条件等が保持されるように配慮すること。

(3)遊休資産の有効活用について
     当行財政改革特別委員会は、普通財産及び行政財産のうち土地に関して、主として取得時の目的と異なった利用がなされているもの、並びに現在未利用のものについて調査を行ってきた。その結果、長期間にわたって取得目的と異なった利用がなされている土地、代替地として長期間にわたって処分できないでいる土地、道路残地のように放置状態にある土地、全く未使用な土地など、あまりにも多くの課題がある土地を所有していることが明らかになった。当委員会は市民の財産である公有財産(土地)を有効に活用及び管理するため、下記の提言を行う。

  @ 公有財産(土地)の有効利用を目的とした検討委員会を設置すること。

  A 検討委員会は市民、学識経験者及び関係民間事業者を含めた委員会とすること。

  B 公有財産(土地)を有効活用及び管理するための専門部署を創設すること。

 (4)労務管理について

   @ 組織・職務職階制について

    イ 町田市の職務職階制は中間に複雑な職名を置いているため、市民から見ても非常にわかりづらい組織機構になっている。組織を簡素化し、市民から理解されやすい組織機構に再編すること。

    ロ 責任の所在を明らかにするため、所属、職名、氏名及び顔写真を記載したネームプレートを着用すること。

   A 人事制度について
    
    イ 人材育成の観点から民間企業との人事交流制度等の導入を検討すること。

    ロ 人材の登用を柔軟に行うため、役職定年制度を設けること。

    ハ 主任になるまでの期間を短縮するなど任用制度全般にわたって再検討すること。

    ニ 再任用制度が実施されることから、経験豊富な再任用職員を活用し、支所機能の充実を図るなど、地域ニーズへの対応を図ること。

    ホ 専門性を必要とする職場での人事異動は、定期異動とは別にすること。人事異動は職場の必要性、職員の希望、人材育成の観点からそのあり方について再検討を行うこと。

    ヘ 日常の業務を公正に評価するとともに能力開発の観点から人事考課制度を導入すること。

   B 給与・手当について

    イ 給与体系を見直し、生活給、能力給の導入を検討すること。

    ロ 公務員の給与制度においては、異なる職種には異なる給料表を適用することから給与表は行政職及び技能・労務職に分離すること。

    ハ 職務と責任に応じて給与を決定するという趣旨から、同じ職層であっても、それ
     ぞれの職責に応じた給与とすること。

    ニ 人事考課制度の導入に当たっては期末手当に連動させること。

    ホ 特殊勤務手当については、個々に、かつ具体的に再検討を行い、そのあり方を常に留意し、適正化を図ること。

    ヘ 年功序列的な現行の給与体系を見直し、職務給の原則に則った給与体系を確立すること。

   C 労務について

    イ 行政に携わる職員の能力を適正に引き出し、十分な活用を図る労務管理は組織体の機能を最大限発揮させるために重要である。職員課を改編し、労務を担当する専門の部署を設け、部長職を配置し、労務全般の把握を行うこと。

    ロ 職員団体との交渉のあり方を見直すとともに、交渉窓口の一本化を図ること。

平成13年(2001年)11月16日

                       行財政改革特別委員長  井上正行        

町田市議会議長   中里猪一  様