● 学生インターンシップによる
     研修生の受入体験を語る

◎ プロローグ

 私は、「政治と政治家の活動が、住民に信頼される対象となるようにしたい」といつも考えています。とりわけ若い学生の皆さんが、市議会議員や町田市議会の活動を身近に見ることで、偏見に陥りやすいマスメディアを通じてでなく、自分の目で実態はどうなのかを、確かめる機会を作りたいと願ってきました。
 そう考えている私に、学生を研修生として迎え入れるチャンスが巡ってきました。そうして、下記のように約2ヶ月間(平成10年11月−平成11年1月上旬)、学生団体の STATESMAN の企画による、インターンシップ(学生研修生の受入)を行いました。

◎ インターンシップ受入の要約
 このSTATESMAN の企画による、インターンシップ(学生研修生の受入)で、主催者に提出した資料は下記の内容でした。面接の会場では、応募した議員の資料が冊子にまとめられ、参加した全部の学生に配布されました。
 私への研修希望者が他の議員に比べて多かったのは、下記の文面のように、議会の勉強が出来ることを強調したからでしょう。
◇  氏  名
 吉田 勉
 所属会派名
 自由民主党会派 
◇  経 歴     
 連続2期当選し、今期より総務常任委員長を務める。過去、国政選3回・市議選1回の落選したユニークな経験を持つことで明かなように、全くの新天地で活動を始めて、ようやく地盤(?)を確保する。
◇ 理念、立場、政策、
@情報公開のエキスパートを自認し、その制度の普及と拡大を図る。さらに、情報公開の成果を市民生活に役立てる。A多彩な意見・少数意見に耳を傾け、討論と批判の場を確保する。B二期目のスローガンは<子ども優先の政治を創る>とし、高齢者重視傾向の転換を唱えた。現在、個々の具体化を提言中。C他に消費者問題。
◇ 学べること
「市議会の傍聴」わたしは総務常任委員長職にあり、委員会審議の経過を間近に見学出来ます。さらに議員として毎回欠かさず一般質問を行い、決算委員にも就任するので、会議全般の模様を学べます。一般質問の作成に、可能な範囲で協力して頂きます。「街頭演説の同行」今期は議会月のため、回数を減らして実施します。
◇ こんな学生にきてほしい
 様々の会議の審議経過とりわけ、わたしと他の議員の発言や態度の比較を通じて、議会と行政の関係及び、議員相互の確執を直につかんで頂きたい。さらに、「慎重派」と「せっかち派」か一方の性格を持つ、両者1名づつの方とコンビを組めたら最高。もちろん男女は問わず、パソコン利用の初歩的レベル程度は出来れば希望する。
◇ 期間 
 11月25日より12月21日(議会最終日)まで。人数希望は2名。
◇ 面接日時
 11月18日(朝と夜まで)もしくは19日午前
◇ 場 所  原則として町田市議会の会派室
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 上記の内容で5名の応募者がありましたが、面接の結果3名の学生を研修生と受け入れることにしました。定員は2名としていましたが、次の学生を得難いと考え、喜友名智子さん(慶応大学4年生)、高橋佳奈さん(中央大学2年生)、出雲充さん(東京大学1年生)を研修生として受け入れました。
 募集の条件とした、「会議の傍聴、質問作成の協力」はほぼ約策を果たせた思います。他に、私の議員活動報告としての「議会レポート」の原稿も一部書いてもらいました。インターン期間中は、研修生に「インターン記録レポート」を書いてもらいましたが、そのレポートに対する私の指示が十分ではありませんでした。当初の目標、最終成果の認識という課題を想定するべきであったと思います。
 このタイトルの記事掲載は、今回と次回の2回とし、見出し内容に沿って分割して取り扱います。<学生に学んでもらいたいこと>以降の分は、次回の掲載とします。
◎ インターンシップ体験の見出し

<議員と学生の集団面接>
<STATESMANの紹介>
<学生との単独面接>
<インターンシップ開始>
<私の緊張した意識>
<他の議員の受けとめ方>
<学生になにを見てもらえたか>
<学生に学んでもらいたいこと>(次回)
<私の成果>(次回)
<私の反省に代えて(今後の展望)>(次回)

◎ インターンシップ体験のレポート

<議員と学生の集団面接>

 STATESMAN>と言う学生グループの提唱で、首都圏の議員が約20名と学生が30名とが一同に会しました。「マッチングフェア」と名付られた方法は次の通りでした。
 事前に主催者が、そのインターンシップに参加するPR文書を、議員に対して提出させていましたので、主催者はそれをまとめて冊子にして、参加した学生全員に配布しました。
 学生は、まずその冊子資料をもとに、自分がインターンとして学ぶ相手を検討・選択する方法が採ることが出来ました。次に、参加した全部の議員を4グループにわけ、グループごとに議員が一定の時間で、順次自己PRしました。学生は、議員紹介冊子で議員をまず選択し、議員の発言(自己説明)交替時間で、他のグループにも自由に動けました。
 前述のように、全体の構成は次の次第です。全面に4つの机を間をかなり空けて配置し、その机のそれぞれで、順に議員が自分の前に集まった学生に自己PRを行うわけですが、前の議員の時に学生がたくさん集まっていても、自分の順番になると、学生が別の机の議員の話を聞くようになることもありました。参加した議員からすると、人気がある議員と、人気が薄い議員が一目で判り、厳しい面もありました。
 学生側に全て選択権がありますが、ただしあまりたくさんの学生が同じ机の前に並ぶと、質問も出す時間が限られると言う事態となり、どの机の議員の話を聞くかを瞬間的に判断する必要もあるわけです。
 議員の自己PRでは、それぞれの議員が、めいめいに用意した自分のパンフットを配布しました。数ヶ月後には、統一地方選挙が迫っていましたので、出席した議員の多くは、選挙運動の雰囲気で説明をしている議員もいました。
 つまり、議員が自己PRする機会は1回ですが、学生は任意の机に4−5回移動することが出来、それぞれの議員の話を聞くことが出来たわけです。そういう中で、それぞれの学生は、自分がどの議員のところに行って、研修するのが適当かを判断し、主催者に自分が希望する議員名を提出したのでした。
< STATESMANの紹介 >
 今回の案内文によると、STATESMAN は市民と政治の架け橋となって、真の民主政治を実現することを目的に、NPO(非営利組織)です―――と述べています。
 この STATESMAN は、現実の政治を機能不全の状態に陥っていると見なしており、次のように述べています。(以下の「 」内の文章は、STATESMAN 自身の言葉を借ります)
 「つまり、国民の代表であるはずの議員は、世襲議員や官僚出身者など、一般市民、主婦やサラリーマンの代表といえない人ばかりです。それは、議員になるためには、莫大な資金と組織力と地盤が必要であることに主な理由があると思います。さらに、そうした市民と遠い議員による法律や政策は、私たちでは理解しにくいものばかりです。それは、選挙で当選した時にすでに出来あがっている、利権やシガラミに縛られているからです。」
 「そうした、現在の悪循環を絶ち、もっと自分たちの声が反映された、真の民主政治を創り出すことを目的に活動しています。そのような市民の声が反映された政治を創り出すには、私たち一人ひとりが自分の身の回りを見つめ直し、全ての問題を自分の問題としてとらえる私製が必要です。」
 さらに、インターンシップを「学生と政治家の架け橋となって、真の民主政治の実現への第一歩」と位置づけています。このインターンシップによって、学生が政治家の仕事を一定期間体験する場を提供することで、「学生と政治の’架け橋’」になります―――と学生に呼びかけました。

<学生との単独面接>
 今回の企画に応募した議員の年齢は、大半が20−30歳代で占められていました。50歳の議員など、他に1名あった位でしたので、果たして何名の学生が私のもとで研修しようと考えるかと思いましたが、実際には、5名の研修希望者がありました。STATESMAN の説明によると、まず、今回のインターンシップ申込議員の中で、研修希望者がもっとも多い議員の一人であったとのことでした。他の議員は、選挙準備活動及び政治活動の手伝いを主に求めていましたが、私の場合は、私と一緒に行動しながら議会や議案などのことを学べる点を協調したことが学生に興味を持たれたのではないかと思いました。
 当初から決められた方法ですが、別の日に面接日を指定し、5名の学生とSTATESMAN の学生担当者に町田市議会に来ていただきました。そこでは、議員側が学生に「なにを学びたいか」を聞く立場に代わりました。上記のように、2名の学生を募集したのですが、応募者は5名もありました。応募者全員が優秀な印象を受けましたが、全員を受け入れたのではとても研修は無理だろうと考えました。
 自分の人生の中で、複数の相手を選別して可否を決める、と言う経験はほとんどありませんでした。選挙に出て、有権者から選ばれなくて落選をしたり、選ばれて当選出来たりすることは、現在行っていることですが、「否」という判定を求める相手に示すことは大変困難なことです。しかし、断るのがいやで5名もの研修生を受け入れては、12月議会の中で自分が動きが取れなくなる可能性があると考え、最終的には3名に絞り込みました。また、この3名の研修生には、地方議員がどのような活動をしているか、自分なりに伝えることに専念しました。
 研修生として受け入れる判断をし、後日、その3名の学生に直接通知をしました。あとの2名の方には、STATESMAN のほうから、断りの連絡を入れてもらいました。それらの学生さんは STATESMAN のほうで、募集条件が異なる他の議員に紹介されたと思います。私が研修生として受け入れた3名は、喜友名智子さん(慶応大学4年生)、高橋佳奈さん(中央大学2年生)、出雲充さん(東京大学1年生)でした。
<インターンシップ開始>
 自分では、議会事務局にも、会派にも「学生研修生を受け入れ、議会の内容と議員の活動を勉強してもらうことにしました」と、十分に説明したつもりでした。しかし、どこからそんな学生が来たのか、そんな学生をいれて大丈夫なのか等々の話題を振りまきました。政令都市ならともかく、市議会議員が秘書を連れ歩くことなど、町田市の場合は前代未聞のことでした。私としては、秘書(給料を払う、継続的に育てる)として採用することなど、とても出来るはずはないのです。研修生に対して、交通費と食事代を負担する(STATESMAN との最初の取り決めの一つ)くらいしか、考えつかないことでした。
 最初の日の研修生は、ただただ会議を傍聴し続けるだけでした。それというのも、議会で取り扱う問題が切迫していたために、私の時間が十分にとれず、昼の時間も含めて研修生と話し合う時間も持てない状況になりました。研修生には、その状況自身になじんでもらうことにしました。さらに、会派内においても、「研修生」という突然の宇宙人のような存在に対して、対応の仕方が決まらなかったという次第でした。 

<私の緊張した意識>
 毎年、3・6・9・12月の議会が開催される月においては、自分がなにを質問するか、委員会で会議をどのように進行させていくか、それらのことを考えるたけでも、気が張りつめるものであります。
 ましてや、議会フロアーや市庁舎内を、私が秘書とも見られる学生を引き連れて歩いていると、誰が見ても「吉田もなまいきになったものだ」と思われることは自明でした。
 一方、私が関係する委員会では、傍聴席に研修生が座ると、「少し、かっこよく振る舞わないといけないかな?」と言う気が私自身の心の中にわいてきます。むろん、私自身が「研修生には、あるがままの委員会や本会議野木論を見てもらいたい。せっかく、会議を見るのであれば、その雰囲気も感じてほしい」と言っているわけですから、私自身は、はやる心を抑えて、それぞれの議員の発言と態度を学んでもらうことに専念しました。 
<研修生を導入したことへの他の議員の受けとめ方>
 上記の「<インターンシップ開始>欄」に書いているように、研修学生は、宇宙人的に見られることはもちろんのことですが、「市議会議員の候補者になるのではないか」と言う見方、「議会の見張りに来たのではないか」等々の憶測が飛び交いました。
 しかし、研修生が委員会の傍聴を続けるほど、彼らを奇異に見る見方は変わってきました。さらに、「吉田の秘書とも見えないなー」と言う印象に代わってきたのでした。議員全員、議会全体としても、メーバー相互が一日中、委員会の場に居るという状況にもなじんでもらいました。
 初日から一週間もすると、会議の休憩中などに自由民主党会派室に招き入れられるように変わってきたり、役職者、役職(議長など)経験者等にインタビューも行ってもらうようになりました。今回、町田市議会の吉田つとむに付いて研修した学生は、「市議会議員というものを、間近に自分の目で確かめてもらえた」と思います。
 最終的には、議員や議会事務局スタッフにも、「研修生」として認知もされ、議長・副議長とのインタビューだけでなく、理事者(高山書役が取材に応じてくれました)とのインタビューも実現しました。

<学生になにを見てもえたか>
 インターンシップの企画書で次のように述べています。
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○ 政治学は勉強していても、実際の政治家が普段なにをやっているのかわからない。
○ 政策がどのように決定されているか知りたい。
○ 議会を見てみたい。<STATESMAN>は政治の世界をもっとよく知りたいと思っている学生を
  政治家のもとへ送り出します。
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 偶然にも、私は、<STATESMAN>の皆さんの考え通りのことを考えていました。自分の活動事態をオープンにする−−−このことを希望する学生がいるのであれば、自分自身が名乗りをあけで、その希望に応えたいと考えていたわけです。
 これまでは経過を書きましたが、次回は、@ その成果を具体的に語る A研修生の言葉で勉強した成果を示したいと思います。
(以下、次回の記事に続く)