インターン記録レポート(4) 東猴 史紘

町田市議会議員 吉田つとむ    2004/2 /20 作成
 東猴 史紘 3年生 2004/2/18 到着
主要研究項目  「自然災害と防災対策」の講演を聴いて

インターンシップレポート(4)
                               東猴 史紘(とうこう ひろふみ)

 
 2月17日、この日は東京ネットワーク勉強会に参加させていただいた。これは東京都内自治体議員が行う自主的な勉強会である。講演内容は「自然災害と防災対策」であった。講師は応用地質株式会社という主に地質調査や地震、津波予測を業務としている会社の方がされていた。講演の内容をまとめると次のようになる。

 前半:日本における地震の不可避性とそれによる日本の問題を述べられていた。
日本は世界屈指の地震国である。世界で起こっている地震の二十%は日本で発生している。よって日本において地震は避けることのできないものである。なぜ日本は地震(自然災害)が多発するのか?それは次の二つの理由からなる。一つは、日本は地質行動運動がとても盛んな地域であるということ。第二に大陸東岸の温帯モンスーンが原因である。以上の二つが原因で日本は地震、火山、台風などが起こりやすい。
また日本は低平な軟弱地盤地域に都市が発達し人口と社会インフラが集中しているので上記の地震などによってもたらされる自然災害の被害が極めて大きいものになってしまい、現在の日本の社会問題の一つになっているという。

では日本はどのようにこの災害リスクに対処すべきか?これが後半で述べられた。
 後半:災害リスクへの対処は一般的に四つあるという。(1)リスクの保有(2)リスクの削減(3)リスクの回避(4)リスクの移転である。順に説明すると、(1)はリスクを受け入れるということである。すなわち、地震が起こるのは仕方がないので我慢しましょうということである。(2)は、地震はいつか発生するのだから事前に対処しようということである。すなわち、地震に備えて事前に建物を耐震構造にするといったことである。(3)は言葉のとおり、そもそも対処せずに逃げるということである。すなわち、リスクヘッジは行わないということである。(4)はリスクを保険に移転するということである。

以上をふまえて、応用地質株式会社さんは次のことを主張された。(4)のリスクの移転は個人レベルの問題であるので置いといて、行政として求められるリスク対処は(2)「リスクの削減」であり、(1)「リスクの保有」(3)「リスクの回避」は不適当であるとの事だった。では「リスクの削減」(事前に対処する方法)としてどんな方法があるか?それは「災害に強いまちづくりを目指した双方向情報システム」である。このように主張された。では双方向情報システムとは何か?それはインターネット技術、モバイル技術等を活用して、A)自治体による情報提供の場「安心ウェブ」、B)市民の情報提供手段「安心君」、C)避難拠点に設置する「安全ステーション」の三つを結んで災害発生時に細やかで迅速な情報収集・情報提供を実現させるシステムである。要するに、
パソコン等の情報端末を自治体に一台、家庭に一台、避難場所に一台置いて今の状況、今後の行動を行政と市民で相互確認しあいましょうというシステムである。 ここで応用地質株式会社さんが開発した上記のパソコン(情報端末)を披露された。どんなパソコンか?小型のノートパソコンにカメラと地震計がついているというものであった。

地震時にこれをどのように使うか?それは次のように使う。まず地震が起こる。そうするとパソコンについている地震計が反応し、警告音がなって地震の発生と震度を我々に知らせる。その後、パソコンを外に持ち出して避難し、外からカメラで自分の家を撮る、そして画面上に表示されるアンケートに答えて写真と一緒に自治体にインターネットで送り自分の家の被害状況を知らせる。こうすることによって被害が客観的に行政に伝わるし、消防士などの救助する側も効率的に動けるという。
以上が後半の内容であった。

 さて読んでいただいてお分かりになるように、このシステムは突っ込みどころ満載であった。質疑応答の時間ではこのシステムに対する疑問の声が多くあがった。その中で一番大きな疑問としては「費用対効果問題」であった。このシステムを導入するには莫大な費用がかかり、またこのシステムを使わなくても携帯や携帯カメラで市民が自治体に写真を送ればすむ話である。またパソコンなどを使いこなせる人は多くはない。よって費用の割には効果が期待しにくいということであった。

 私も質問させていただいたが、それは次のような質問であった。「従来の防災訓練は、地震発生時にまず机に下に隠れ、おさまったら第二の地震に巻き込まれないように外に避難するというものである。応用地質株式会社さんのシステムを導入すると仮定すると、まず机の下に隠れ、その後すぐ外には非難せずアンケートに答えてから外にでて避難することになる。第二地震が発生したら巻き込まれてしまうのではないか?」というものだった。(この時はまだ応用地質株式会社さんから、地震発生時にパソコンを外に持っていってからアンケートに答えるとは聞いていなかった。)しかしながら避難の際にパソコンを外に持っていってアンケートに答えてカメラで撮るとしても摩訶不思議な風景である。いったい何人の人がこの動作を行うことができるだろう?いったい何人の人が避難する際にパソコンを持って脱出するだろうか?

 確かにこのシステム自体の発想は素晴らしいし、現代的だと私は思う。しかしITの時代だからといって何でもかんでもIT化して良いのだろうか?ITに頼りすぎてはいないか?今回の地震対策の件でいえば、行政の地震対処の一番の方法としては「災害発生時に市民がどこに避難すれば良いか」ということを日ごろから徹底して伝えることであると私は思う。地震発生時にパソコンを持ち出すのではなく、大切な家族を持ち出してほしい。少なくとも私はそう思う。

● 吉田つとむ
 「東京ねっとわ−く」は、東京都内の議員が自主的に勉強しようと言う、超党派のグループです。今回の勉強会も、その定例会として企画したものです。
 さて、今回の講演のテーマは、「自然災害と防災対策」としたもので、講師は応用地質株式会社の経営企画室長 若佐秀雄 様と、中部支社の高橋広人様にお世話になりました。その若佐秀雄様には、日本の地震をメインとした自然災害の特性をお話いただきました。高橋広人様には、災害に対応した双方向システムの開発現状に関してお話いただきました。

 震災の体験からすれば、個人を軸に置く考えから、行政がそのようなその事前情報を発すべきか、あるいは災害情報の発信によって、二次災害をいかにおさえるか、と言う問題があります。

 こうした企業の場合は、個人の啓発が直接の目的でなく、自治体は災害に対していかに準備すべきか、これが根本命題でしょう。例えば、阪神大震災の教訓は、第一に建物の耐震基準の強化をもたらしました。他に、震災と言っても、地形や建物の場所によって、被害が大きく異なると言うことも学ぶことができました。さらに、救援体制がどのようにあるべきか、そのシステムはいかに構築されるべきか、そうした分野の研究も進んで着ました。なにごとも、基本になるベースの考え方が備わっていることが肝要と思っています。

 そうした時に、現実の災害はどのように起きているか、それをいち早く情報を把握し、より有効な救助手段を取る必要が出てきます。従来のやり方では、「震災被害の細かい把握、より正確な把握に劣っている」と言う認識が、応用地質株式会社が持っている見解でしょう。それを、いち早くシステムとして構築すれば、かならずビジネスになるはずだ、この企業では想定しているのだと考えます。

 この「災害につよいまちづくりを目指した双方向情報システム」の中身では、各地の被害の情報収集システムがまず想定されています。地震の場合は、全部の場所で被害が一様に起きるわけではありません。比較的に被災の少ないところもあり、あるいは直接被害を免れる人も多数あることが一般的です。そうした災害が起きた時でも、100人に一人、もしくは1,000人に一人は、物事を冷静に見つめる人がいます。日ごろから若干の訓練を積んでおき、手元に情報発信のツールがあれば、必ずや災害発生時には、有用な情報発信をしてくれるでしょう。

 このシステムは、そうした百人に一人,1000人に一人が、災害情報の発信をしてくれれば、被災にあった数万、数十万人の人達の緊急支援、救済に役立つことを知りぬいた人達が、その作成に携わっているようです。

 考えるに、通信の連絡手段をネットワーク機器と考えれば、災害情報を発信する側は、携帯電話、それを受ける側は受信記録の保存整理を行うサーバーを保持しておれば、あとはその「情報をシステム」に被災の個別情報を付加していくことのみの作業になります。

 この種のシステムでは、一般に大きなコストがかかるように考えられがちですが、この「災害につよいまちづくりを目指した双方向情報システム」導入においては、基本タイプのものをメーカーが開発すれば、他の場所では応用システムを拡大していくことにより、より簡易なものとなるでしょう。
 地震との費用対効果で疑問があれば、自治体ごとに、導入の是非を考えていけば良いでしょう。
 私は、この様に考えています。
 
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