インターン記録レポート(9) 東猴 史紘

町田市議会議員 吉田つとむ    2004/3 /18 作成
 東猴 史紘 3年生 2004/3/26 到着 
主要研究項目  吉田の勉強室の片付け


インターンシップレポート(9)
                               東猴 史紘(とうこう ひろふみ)

● 東猴 史紘さん
厳しい就職難を理由に自殺する大学4年生が急増したという暗いNEWSが流れたのが、
この3月25日である。99年の363人をピークに2000年以降毎年320−
340人の短大、大学生が自殺しているとのこと。この300という人数は私の通う
青学法学部三年生の定員と同数である。単純に私を含め、青学法学部全て自殺してい
る計算だ。
いったい日本に今、何が起きているのだろうか。自殺サークルを作っての自殺、先日
の某新幹線へのダイブによる自殺、そしてこの短大、大学生の自殺に見られるように
現在日本は自殺が年々多くなってきている。彼らの自殺は何を物語っているのか、こ
の自殺の延長上にあるものは何なのか。
それは恐らく、日本における「価値観の複雑化」と「自発性」というキーワードに行
き着くのではないかと考える。一つ目の「価値観の複雑化」とは要するに価値観が多
様化しすぎたことによって自殺するのだ。これはフランスの社会学者エミール・デュ
ルケームの「自殺論」でいう「アノミー的自殺」である。アノミーには様々な捉え方
があるが、一般的には社会で共有されている価値観、規範の崩壊と認識されている。
現在の日本はアノミー社会である。親を敬い尊敬するといった儒教精神、結婚まで婚
前交渉は禁止といった一昔前の日本で共有されていた厳格な価値観は今や崩壊してし
まっている。価値観が崩壊すると人間は何をしていいか分からなくなる。現在今まで
では考えられなかった形態の殺人事件や売春、またフリーターの増加もこの流れであ
ろう。
そしてアノミー化して価値観が喪失し、多様化した中で人は何をすればよいか分から
ない状況下において、現在の日本は同時にそんな人たちに「自発性」を求める。これ
はグレゴリー・ベイトソンでいう「ダブル・バインド」であろう。ダブル・バインド
とは実行不可能な命令のことである。幼稚園で園児に向かって「さあ自発的に勉強し
なさい。」と命令したり、アフリカ人に「のどが渇いたら水を飲みなさい」と命令し
たり、パンがなくて食糧危機になって暴動を起こす人たちに「パンがなくなったらお
菓子を食べなさい」といっているのと同じで、これらは実行不可能な命令である。
大学生にとって「価値観の複雑化」によって必ずしも就職する必要はなくなった。
ミュージシャンを目指すのもよい、宗教に向かうのもよい、フリーターでも生きてい
ける。法を侵す以外なんでもチャレンジしてよい時代となった。大学生は卒業したら
就職といった昔の価値観は崩壊し、今は「自分独自の生き方」を考えなくてはいけな
い時代になったのだ。これは今の大学生にはとても難しい。なぜならば、少なくとも
私の世代は高校→大学→就職が王道であるという価値観の中で育った。そして大学に
入ったころに、この価値観は崩壊し始めたのだ。いきなり「さあ自分の足で歩きなさ
い」と言われても歩けないのだ。レールを歩くことに慣れてしまっているのだから。
さらに「自発的に、自分の足で歩きなさい」と命令されても不可能である。現在問題
となっている大学生の自殺問題はこの「価値観の自由化」「自発性」の二つに板ばさ
みになってしまったがゆえの自殺であろう。
グレゴリー・ベイトソンのいう「ダブル・バインド」は果たして打開できないのか、
果たして本当に実行不可能であろうか。この3月25日はインターンがあったわけで
あるが、この日は一日中、吉田氏の自宅のIT設備の復興をテーマに研修が行われた。
要するに吉田氏の自宅のパソコンが壊れたので新しいものにかえる作業がこの日なさ
れた。この作業にあたって私の他に国立大付属高校を合格した青年も一緒だった。さ
すがに理系だけあってテキパキした動作でIT設備を構築していく。そばで見ていて、
本当に中学校を卒業したばっかりなのかと感嘆してしまった。また吉田氏の本棚に目
を移すと、「資本論」「マルクス経済学」など小難しい本が並んでいた。さらにこれ
らは高校生の時に読んだというから驚かされる。
しかしその吉田氏もIT政策には強くてもITシステム構築には難があった。この日は
もっぱら国立大付属高校の青年に白旗を上げていた。よくよく考えてみれば、多忙な
政治家に「自発的」に本業に加えてIT設定といった雑務まで全て一人でやりなさいと
要求するのが不可能な話であり、これこそグレゴリー・ベイトソンのいう「ダブル・
バインド」であろう。だがこの日のインターンで得たのは、この実行不可能なダブル
・バインドを打開する方法である。答えを言ってしまえばコロンブスの卵である。
答えは「人に助けを請えばよい」のである。実に簡単なことではないか。吉田氏はこ
の日、自分でできないことを友人に助けを請い、弱点を補った。人は本来不完全で一
人では生きていけないのだ。現在大学生の自殺が問題となっているが、彼らに口を大
にして言いたい。一人で全てやろうとするなと。一人で全てを抱え込むなと言いた
い。確かに今日本は「自発的」に動くことを要求しており、過去の価値観で育った
我々には厳しい世の中になりつつある。一人で歩くのは怖い、自殺したくもなるであ
ろう。だが、そこで落ち着いて周りを見渡してほしい。必ず助けになってくれる人が
いるはずである。
もちろん助けは受動的に生きている人にはやってこない。「自発的」に生きている人
に助けはやってくるものだ。あのイエスキリストでさえ「求めよ、さすれば救おう」
と言った。この求めるという行為はもちろん自発性を要求されている。「受動的に生
きている人も助けなさい」という命令が社会主義で唱えられたが、これはグレゴリー
・ベイトソンのいう「ダブル・バインド」であろうか。
● 吉田つとむ
 このレポートに回答を出すのが遅くなってしまいました。東猴史紘さんがわかっているように、吉田がまだまだ多忙であるためです。結果的に、次回のレポートを同時に記事をアップすることになりました。

 前段にせっかく長い文章を書いてくれましたが、その内容へのレスは、省かせていただきます。

 さて、この日は、吉田のパソコンの入れ替え作業をしました。合わせて、部屋の片付けも行いましたので、びっくりだたようです。東猴さんがそれ以上にびっくりしたのは、吉田がパソコン操作、接続などの作業がとても苦手という事態であったでしょう。

 それを救ってくれたのは、知人の中学生でした。今年の4月から高校生になるのですが、数学や理化系統がとても得意の生徒です。彼のパソコンの先生は、本来が吉田つとむのはずですが、いつのまにか、私より遥かに知識が豊富になり、また手先が器用ということで、パソコン入れ替えの手伝いをお願い致しました。実に手際良く片づけを進め、パソコンの入れ替えもスムーズでした。

 自前の名簿の整理も滞っていましたが、これから順調に進んで行くでしょう。IT環境では、プリンターも新鋭のレーザープリンターが導入できたので、印刷もスムーズに展開できます。なにせ、これまでは請われたプリンターを何とか操作して、作業を行っていました。ほっとしたところです。

 私にとって、インターン生は、自分の行動が果たして若い世代にどのように映るか、それを照らし出す鏡の存在でもあります。一方で、こうした中学生と会話が出来るのは、今の時代には自分が特異な存在であるかも知れません。

 今日は、私の部屋が一新した御礼を、この両者に述べることで締めくくりにしたいと思います。

 なお、この中学卒業生のことを、進学高校を「国立大付属高校」とし、それ以上は記しませんでした。インターン生とは、まったく違う扱いにしています。
 
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