電子投票の課題と展望について

 2016年1月17日に電子投票選挙が実施され、スムーズに終了

 最新では、2016年1月17日に青森県六戸町議会議員補欠選挙が電子投票で実施され、順調に終了しました。ただし、一般メディアでは、この選挙が電子投票選挙であったと伝える情報は目にしません。現在、公職選挙で電子投票を採用しているのは全国でわずかに2自治体(日本で最初に電子投票を実施した岡山県新見市、今回電子投票を実施した青森県六戸町)のみになりました。最も多かった時には10自治体に上ったのですが、最初の選挙導入した際に失敗が起きたことで、それ以降は継続ができなかった自治体もあれば、自ら取りやめた自治体もありました。

 その中で、この六戸町と新見市は最初の電子投票を継続しています。受注した電子機器メーカー(が同じだということがありますし、そのメーカーは電子投票機に1ケの記憶媒体(予備にあと1ケ保存)を設置したスタンドアローン方式を採用しているこが特徴です。他方、複数の電子投票機を1台のサーバーに接続するクライアントサーバー方式を用いたメーカーがスタート当初から大失敗する状況が発生し、そのことが電子投票選挙に不信感や懐疑心をもたらす多いな要因になりました。



 六戸町に設置されていた電子投票のデモ機を操作しています。

 とりわけ失敗したメーカーが日本を代表するメーカーであったことで、電子投票方式で公職選挙を実施することの全部が欠陥を持っているかのように、思われてしましました。広報した新聞メディアにも大きな責任があったと思いますが、もう10年を超す時間を経過したことであり、それを問題視してもそれほどの意義は無いかもしれません。

 電子投票方式の本来の意味と意義=投票結果記録の正確性 

 電子投票の本来の意味と意義は、有権者の投票意思が正確に出ることです。投票用紙に氏名を手書きで
記入する方法は、投票に疑問票(不明票)や按分票を生じさせる原因になっており、得票結果によっては当選者と次点候補者の間で争いが起きることがあり、それが裁判に至ることもたびたび起きています。また、選挙の候補者が裁判官の判断に最終的に任されることが決して合理的な答えとは思えません。こうしたことを体験した人々が電子投票のことを知れば、自ずと考えが変わるのではないでしょう。電子投票の記録の正確性につても理解に変化が生じると考えます。

 なお、方式は異なっていると思いますが、町田市議会は電子投票を実施しています。一旦、個別の議員名の賛否状況のランプが表示され、それが集計されて賛否数が表示されます。その利用にあたって、数字の正確性が発揮されており、設置されて以来、一度も事故はなく、かつ、疑問性を問う声はこれまで皆無です。一般の公職選挙にこの経験が生かされるべきだと思っています。

 電子投票方式の開票の速さについて 

 今回の青森県六戸町の選挙では、選挙長の開票開始宣言から、開票作業の終了と選挙結果の発表で20分以内でした。投票者総数が3,098人(不在者投票したために投票用紙で投票した人数は31人、期日前投票を電子投票で投票した人数は3,025人。白票に相当する電磁式記録式投票機を途中で終了した者の数42人)でした。1台にテーブルには、各投票所分の投票用紙が集められ、もう1台のテーブルには、期日前投票分と10か所の投票所ごとの選挙の投票記録データが入ったコンパクトフラッシュを収めたケースが置かれました。
 元来、投票総数、とりわけ、町議補欠選挙であったことで投票数が少なかったことで、電子投票分の集計の速さが際立つことがありませんでした。

 投票データが入った記録媒体の情報を吸い出し、パソコンで読み込み、得票数を正確に表示する。

 大きな有権者数を数える自治体選挙における選挙の方が、電子投票選挙の開票スピードの利便性は高いとおもいます。大人口の選挙、特に町田市のように開票作業に多大な時間を要している自治体の公職選挙に電子投票が相応しいと改めて思いました。

 電子投票機を用いた場合は、1つの投票機で連続して別の選挙ができる

 今回、本来は六戸町の町長選挙、町議補欠選挙が同じ日に実施される予定でしたが、町長選挙の立候補者が現職候補 吉田豊氏1名であったたに無投票当選になり、選挙は町議補欠選挙のみとなりました。両方の選挙が一緒に行われていたら、1台の電子投票機で連続して町長選挙、町議補欠選挙が実施でき、その利便性が効果を発揮していたでしょう。こうした利点は2回投票(選挙区選挙と、比例区選挙)が前提になっている国政選挙(衆議院選挙、参議院選挙)でこそ、実施されるべきものでしょう。
 
 
無投票当選の吉田豊町長は、整理中の電子投票機ケースの前で記念撮影。


 インターネット選挙投票について

 インターネット選挙をやる時代がいずれ来るかもしれませんし、日本の場合は在外投票で先行してやる可能性がありますが、スタンドアローン方式の電子投票すらなかなか容認しない思考の中で、その導入は困難ではないでしょうか。もとより、突然合理性を排除して、施策導入を実施する可能性を国政が行うことはありうることではあります。

記:町田市議会議員 吉田つとむ 保守連合