2017.01.18 保守連合視察3日目 奈良市 報告

 保守連合会派の視察ですが、私が主要にかかわった部分の記述です。

(1)2017.01.18視察報告書 奈良市 着地型観光について

奈良市の行政機関関しての特徴は、観光経済部に観光戦略課と観光振興課の二つがあることでした。

 その観光戦略課の事業として設定されたのが、「珠光茶会」~茶の湯の華開く 奈良の都~ です。

 観光地・奈良市としては、その訪問者が少なくなる2月・6月の内、2月の行事として設定されました。

 

 観光地側が設定して観光客を呼び込むのが、「着地型観光」と称されるスタイルであり、奈良市はその一つとして、歴史に基づく基盤を基本に置く、珠光茶会を盛大に開催しています。

 開催には、珠光茶会実行委員会が組織され、実務委員会も構成されています。その実行委員会がうたう趣旨には、次のように記載されています。

 奈良には多くの優れた文化が息づいています。世界遺産「古都奈良の文化財」はもとより、いにしえより受け継がれる、日本の「源流」ともいえる社寺の伝統行事や伝統芸能、奈良墨や奈良晒などの伝統産業が有形、無形の文化遺産として存在しています。

 そうした中に、珠光により育まれた茶の湯があります。珠光は「わび茶」の精神による茶の湯を創始し、今日、日本の代表的な文化の一つである「茶道」の基礎をつくりました。このように、珠光により育まれた「茶」も、奈良を「源」とする大切な文化であり、この「茶」を通して、奈良の魅力を発信したいという思いを結集する場として、ここに「珠光茶会」を開催いたします。
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<課題について>

 予算と収支

  収入は、来訪者が購入するチケットが見込まれるが、元来ゆったりした環境で楽しむ茶の湯の機会のため、お茶会の参加チケットのみでイベント全体の支出を賄うことはできず、行政支出が半分となっていました。

  この「珠光茶会」の開催に関連して、同時開催される「大茶盛」(西大寺)や参加寺社の特別公開に期待が寄せられていました。着地型観光の将来としては、豊富な歴史資源を持つ奈良市としては成長が見込まれる方向ではないでしょうか。そのための行政予算の支出は必須と思えました。

  行政職員のマンパワー負担も大きく、規模を大きくした場合の人的資源に限りがあると思われます。

 東大寺に向かう途中、境内に看板に表示、シカが自然にいる。

受け入れ態勢(寺社と参加流派>

本来、観光地として閑散期の2月中をその開催期間とすることができるが、家元やその流派の参加期間には限りがあり、開催期間6日間ほどが限度と見なされている。

  この「珠光茶会」の参加流派は、当初、4流派であり、2回目以降、順次増大しており、今後とも、規模が大きくなる可能性もある。市内で行う茶会イベントに、協賛する寺社側の増大がカギになるのではないでしょうか。

 春日大社の珠光茶会の会場建物

 イベント参加者の居住エリア

  実行委員会がアンケートを取ると、7割が奈良市住民、他の大半が関西圏とのことでした。

  現在まで、このイベントが全国的知名度を持っているとは言えず、遠距離・宿泊を伴う訪問者を得ることが課題になっている。お茶=京都のイメージを超える発想で、奈良産である「大和茶」の普及、利休に先行した珠光の魅力を再創出することが基本であると思います。

  東京圏から、人を呼び込むことが肝要でしょう。

 <補記> リニア推進事業について

 他に、リニア推進課が設置されており、観光経済部の中で、観光に比重を置いた主張になっています。地元で動きができたのは、

昭和54年(1979年)4月

 中央新幹線建設促進奈良県期成同盟会設立

 (現リニア中央新幹線建設促進奈良県期成同盟会設立)

平成元年4月  同会で、「奈良市内に停車駅を設置する」旨決議、

平成元年12月、奈良県議会と奈良市議会で同じく決議

 以降、近隣自治体にも、奈良市に停車を求める決議

 以降、経済団体等において、大会などを開催

 

 現行の東海道新幹線のルートと異なり、名古屋から直進して奈良を通り、大阪を結ぶ路線で想定されている。リニア中央新幹線はJR東海が2027年に、東京(品川)~名古屋の開通を見込んで工事を進めているが、政府は名古屋~大阪の開通見込みを前倒しを求め、その区間の開通を2037年としている。

 奈良市は、その構想に沿った、奈良市の長期的な位置づけを見計らっている。

 市庁舎入り口には、リニア開通を記したスローガンの大きな横看板が設置

 20年先を見込んだ市政を展望し、独自の「リニア推進課」を設置していち早くスタートする意義がなされている。

 将来的に奈良市は、東海道新幹線の利用者でにぎわう京都とライバル関係が逆転する可能性を見込むからでしょう。

(2)2017.01.18視察報告書 奈良市 企業家支援、育成について

 奈良市観光経済部 商工労政課が実施するのが、奈良市 創業支援施策~温故知新の企業家が輝くまち奈良~ です。

 奈良市の特徴として、次の資料が提示されました。

県外就職率 29.9% 全国第一位(奈良県)

県外消費率 15.2% 全国第一位(奈良県)

県内宿泊室数 全国最下位(奈良県)

県内宿泊者数 全国46位(奈良県)

 現職の市長が、1期目の公約として奈良市の創業支援を掲げたとのことでした。その施策が実施されているわけです。

 ~温故知新の企業家が輝くまち奈良~ の内容では、平成24年度に創業支援を本格的にスタートさせています。

 温故知新の意味を読み解くと、UIターンの創業者を求めていると理解されます。奈良県は県外就職率が29.9%で全国第一位であることを意識し、その人材の地元帰りが期待されているものでしょう。

 施策として、温故を見るのは難しさを感じました。実際には、起業家支援施設「きらっ都・奈良」の推進が図られている段階でした。

 ビジネスカフェの運営でも、そのマニュフェストで提唱した市長の参加が強調されています。

 早晩、施策の成果の見える化が期待されます。それ無しで、創業支援した事業所が、地元に貢献する道は厳しさを見せるでしょう。
記: 保守連合