オーナー通信 第29号 「貸室等の解約時の原状回復について」
2001年10月
有限会社 臼井不動産 栗山隆太さん記事作成


拝啓 紅葉のみぎり ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて今回は最近問題になっている「貸室等の原状回復」についてご報告申し上げます。
「原状回復」。この言葉の意味はご承知の通り「元の状態に戻す」ということです。アパート・マンションの賃貸借においては「貸した時のままの状態で返す」ことに当たります。

 ひと昔前までは「借り手」はそれこそ「釘一本」或いは「画鋲の穴」ひとつにも神経を使って生活するのが当たり前とされてきました。しかし時は流れ、借り手の意識が「貸して頂いている」から「借りてあげてる」に変わり、解約時における考え方も大きく変化してきました。と同時に敷金を巡る訴訟が増え、今まで曖昧であった「経年変化」「通常使用」という言葉の概念がより具体的に、より明確に判決等で「線引き」されるようになってきたのです。(外国資本が日本の賃貸借市場に大きく流れ込んで来たことも原因のひとつと言えると思われます。)

 例えば裁判所の基本的な考え方は次の通りです。

(例1):壁紙クロスは6年で残存価値が10%になる。従って裁判では、賃貸借期間が6年を超えた場合、解約時のクロスの張替え費用の9割は無条件で家主側負担となってしまいます。

(例2):専門業者によるハウスクリーニングは認めない。借り手が通常の清掃(掃き掃除、拭き掃除、ゴミ出し、換気扇及びレンジ回りの油汚れの除去等)を実施している場合、次の入居者を確保するためのイメージアップとしか裁判所は判断しない、ということです。

 レンタカーをイメージして頂けると解かり易いのですが、ガソリンの消費とぶつけたり擦ったりした傷以外の「通常使用」(タイヤが減ったり、室内がタバコで汚れたり、走行距離が増えたりすること)は全て料金の内、という考え方です。

 当社では「退去時に行うハウスクリーニングは全て入居者負担」と契約書の特約条項で謳っておりますが、仮に裁判となると「借り手に不利な特約は全て無効」とされてしまいます。当社では入居者に対し契約時や解約時に内容を詳しく伝え、必要であれば明細書等を添付し説明しておりますので、幸い現在に至るまで敷金の清算トラブルで裁判に発展したことはございません。しかし、上記のような判例や原則論が新聞やTV等で広く公表され、借り手の法律知識が増え、内容に疑問をもたれ弁護士などに相談されれば、今後請求できなくなる事項が増える状況であることは間違いないと思われます。

 @家賃はいまだ弱含みだし、Aエアコン等を設置しなければならない上に、B解約時の原状回復の負担まで家主が負わなければならないのか? とお怒りの声が聞こえてきそうですが、残念なことに年々そのような傾向にあります。
 ユニクロが価格の安さと品質の良さで国内市場を席巻しロンドンへ出店する昨今です。不動産賃貸市場だけが古き良き時代の維持を許されることはあり得ません。"勝ち組"となるには変化を察知し、如何に対応していけるか? ここに懸かっております。            敬具