電子投票の出口調査を現地行った体験からの感想(相良 雄太)
(04/02/14)
作:杏林大学社会科学部4年 相良 雄太

<吉田つとむの前書き>
 下記の記事は、2002年6月に始めて日本で電子投票が度入されて以来、2004年京都市東山区まで、合計9回の電子投票でその出口調査を実施してきた杏林大学社会科学部(現在の2年生より、総合政策学部と名称変更)の学生である、相良 雄太さん(4年生)が書いてくれた文章です。
 相良 雄太さんは、その杏林大学の学生として、唯一人、9ヶ所全部で電子投票の出口調査を実行してきた学生です。

 この電子投票の現地を、その時期に訪問することは、自分で言うのもはばかられますが、並大抵のことではありません。まず、実施時期とその場所が全国各地に点在し、それらを訪問してまわるだけでも大変なことです。大学の試験期と重なったこともありますが、かれはこの作業を黙々と支えてきました。

 相良さんは、そのゼミの担当者である岩崎正洋助教授の指導で、毎回数人の学生が「電子投票に関する出口調査」を丹念にしつづけ、その中心人物として、今日に至っています。その結果、今回で大学を卒業することになり、新しい世界に向かっていきます。

 この相良雄太さんは、これまでの9回の電子投票選挙に毎回訪れたメンバー、4名の中の貴重な1人です。(電子投票普及協業組合の方が1名、杏林大学の岩崎正洋助教授、相良雄太さん、それに吉田つとむの4名です)

 今回、その卒業記念の意味で、表記の感想を寄せていただきました。私のHPの中の「議員インターン・文集」に特別掲載いたしました。

<本文>
 今回の京都府東山区での電子投票の実施は、我が国で9例目であった。北は青森から西は広島まで、全国各地で実施され、電子投票もかなり浸透しつつあると思われる。

 日本で初めての岡山県新見市では、話題先行的な面が強く、数多くの報道陣が印象的であった。しかし、そのような傾向も段々と薄れ、東山区においても電子投票制度の本質に目が向けられていたように思われる。

 これまでの9地域の調査活動を通じて、有権者の「生の声」を聞いてきたが、先ず言えることは、想像以上に多くの有権者が投票の電子化を好意的に捉えていることである。そもそも全有権者ではなく、実際に投票所に足を運んだ人々の意見であるから、頷けるものだといえるかもしれない。しかしながら、事前の調査でも好意的であったこと、有権者の中には、「電子投票では欠点がなく、質問項目の全てが利点である」と回答する人も、しばしば見られたことを踏まえると、概ね賛同していると言っても過言ではない。

 ここで、留意すべき点を挙げると、電子投票肯定派の中にも何らかの条件付の意見を持った人がいたことである。具体的に例を挙げると、40〜50歳代の回答者が「私達はいいが、このままでは高齢者にとって難しいのではないか」とか、「今後、着実に普及していけばいい」といったような内容であった。
 さらに、同様の回答でも、個人的見解と、社会全体を考えた上での回答をしていた2つのタイプがあったことも見逃してはならない。この2つでは若干解釈が異なるため、鵜呑みにしてはいけないと感じた。

 次に、行政の対応の重要性を各地で感じた。事前の啓発活動が盛んに行われ、操作説明をしっかり行った地域では、他地域よりも、有権者の感触も良かった。しかし、その反面、どの地域においても財政面などの説明はあまりなされていなかった、もしくは伝わっていなかったようであり、「人件費は削減されるのか」、「機械はいくらするのか」などと、逆に私達が質問を受けるケースもあった。

 電子投票の実施にあたっては、行政の対応が非常に重要であり、説明責任、透明性が今後一層求めらていくのだろう。

 次に、9地域において、有権者から必ずと言っていいほど指摘される問題点に触れておく。それは、「投票器の間のつい立が低過ぎる」、「候補者が少ないと手の動きで支持者がばれてしまう」、「選挙職員が多すぎて見られてしまう」といったような、プライバシーに関わるものであった。このようなものは、電子化したが故に発生した課題であり、今後の改善が必要であろう。

 簡単に、これまでの電子投票の調査で感じたことをふり返ってみたが、正直なところ、有権者には着実に受け入れらつつあると感じる。だが、どの地域においても自書式投票にこだわりを持つ少数派がいたことも忘れてはならないし、まだまだ克服すべき課題も山積しているように思われる。

関係写真は、2004年2月15日にアップ