行政における情報テクノロジーの影響
と 政治家によるインターネットの活用と展望 I=CAS(議員インターンスタッフ) 望月清果
(吉田つとむの注: この文章は大変長い文章ですので、重たくなっています。この文章は、I=CAS(議員インターン組織)のスタッフである、望月清果さんが、学生として書いたものです。第4段落部分は、望月さんが、(議員インターンとそのスタッフ活動を通じて)吉田つとむを取材して作成した部分がかなり含まれています。そこで、吉田のHPの「インターン文集」に掲載することを了解いただきました。 本来は表やグラフがきちんと作成してあるのですが、吉田がHTML化した際に構成が崩れたもののあります。また、注記にはリンクがされていましたが、普通の構成に変更しました。望月さんには大変気の毒なのですが、この状態でHPに掲載することにしました。結果的に文中の記事の間違い部分があれば、それは吉田の責任によるものです) 目次
1、 はじめに − IT革命によってもたらされたもの −
2、 日本における市民活動の発展 − NPO法の制定過程を通して − 3、 行政の情報化の現状 4、 政治家によるインターネットの活用 (1)インターネットを活用している議員像 (2)ホームページ活用の目的 (3)ホームページ上の活動と従来の活動との違い (4)展望 5、まとめ 1、はじめに − IT革命によってもたらされたもの − 情報テクノロジーは、主に経済産業分野を中心として発展し、特にインターネットは、@大量の情報を瞬時に公開していること、A必要な情報をいつでも閲覧できること、B従来のメディアにはないインタラクティブな対話が可能なことが特徴である。その波は私たちの生活の中に浸透するとともに、行政においても押し寄せている。郵政省は、2005年までに全国に光ファイバーを張り巡らせ、通信サービスの大容量化に対応しようとする動きがみられる。また、「行政情報推進基本計画」(1997年からの5ヵ年計画)、「高度情報通信社会に向けた基本法策定」(1998年11月)を通じて、業務の効率化と手続きの簡素化、国民の利便性の向上を目指した電子化の推進に取り組んでいる。この情報テクノロジーの推進と、ちょうど時期を同じくして動きが活発化してきたのが市民活動である。市民活動はある一定のコミュニティで形成され、従来はその範囲内で活動していたが、情報テクノロジーを活用することで、広い範囲にネットワークを拡大することができるようになった。「95年に日本の大学院生がはじめた「核実験反対の電子メールによる署名活動」は、この問題に無関心な層にも問題を提起するなど広く注目され、インターネットの利用がNPO活動に有効である」 (注1) ことや、アメリカをはじめ多くの国々の活動において、このことが顕著である。市民活動は行政と深いかかわりをもっている。特に、一番身近である地方自治体との協力や政策に対する影響力は大きく、ネットワークの活用によって増大している。インターネットの普及で、市民から行政へ、行政から市民へ双方向の活発な議論が可能になり、新しい情報の流れが生まれた。この新しい情報の流れに対し、実際に行政の方向を決定する議員の動向にも注目していきたい。ここでは、市民活動、自治体の各面からその現状を整理し、さらに、政治家のインターネットの活用について考察していくものである。 2、 日本における市民活動の発展 − NPO法の制定過程を通して − インターネットは本来、軍事目的に開発されたものであるが、従来からボランティアや市民活動に積極的であったアメリカで、高度な技術をもった人々が市民活動に利用できないかと試みたことから、マスメディアと同様の影響力をもつまでになった。サンフランシスコでフリーライターをしている岡部氏は「情報が「民主主義の通貨」である以上、情報革命は、民主主義の変革以外の何ものでもありません。メディアの変革は社会の変革であって、多様な活力ある市民社会が育ってこそ、メディアは大きく変革します。情報改革を担うのは市民自身です。これを抜きにどのような技術を開発しても、何も変わることはありません」 (注2) と述べていることからも、市民活動の活発化が影響力をもつ前提になることは欠かすことができない。日本でもNPOという言葉が一般的になり始めたのは90年代からではあるが、市民活動によっては地方自治体で一定の成果を挙げていた。それらは議員立法として成立し、成果を出したものもある。その代表例であり、市民活動の活発化の契機にもなったNPO法を中心に、日本の市民活動をみていく。 1980年代半ば頃から、生活地域における福祉、教育、街づくり、環境、人権等の改善、発展を目標としたボランティア活動、市民活動が、多様な分野、活動方法により市民の関心を高め、市民グループ内でのネットワーク化、組織化、関連グループ同士の交流が現在も更なる広がりを見せている。1989年11月には市民活動を支援するため、日本ネットワーカーズ会議(JNC)が発足し、第一回フォーラム「ネットワーキングが開く新しい世界」を開催した。1991年には郵政省が国際ボランティア貯金を開始し、厚生白書がボランティア活動、市民活動を取り上げ、文部省も生涯学習ボランティア活動総合推進事業を開始するなど国においてもその推進を促している。国際的には同年12月、世界150カ国以上から862人のNGO代表者が参加し、環境問題に対する初の「世界NGO会議」を開催し、国際規模の協力体制が構築された。(注3) そして、このような市民活動が一気に注目を集めたのが1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災である。全国から大勢のボランティアが駆けつけ、世界各国からの救援団体も協力し、被害者と復興の支援に活躍したことは印象に残っているだろう。震災を契機に「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」が立役者となり、1998年3月19日、第142回通常国会において「特定非営利活動促進法(NPO法)」が成立、同年12月1日より施行されたことは、市民活動が社会的影響力を持つ時代になったことを意味する。震災以降、非営利団体、NPOという言葉が一般化し、新聞紙面のNPO記事件数、市民活動という言葉の登場件数が年々急増していることはその関心度の高さを示している。(注4) また、災害時に行政との連携に必要な仕組みを企業マスコミ44社に質問した結果、44.8%がパソコン通信やインターネットで情報を行政から流すと答えている。(注5)その後、ボランティアによるインターネットの役割が注目されている。(注6) NPO法の特徴として最初に挙げられるのは、これが議員立法として成立したことである。市民立法機構共同事務局スタッフである広瀬稔也氏は、議員立法が1997年の臓器移植法で注目を浴びた第140通常国会に、45法案が議員立法として提出されたことを挙げ、「87年から96年までの10年間に衆議院に提出された議員立法件数26件に比べて、議員立法が飛躍的に増えたが、市民活動の広がりもその背景にある」と、この変化が日本の市民社会が新しい段階に入ったことを証明するものだとしている。 (注7) 続けて、広瀬氏は「ほぼ20年間の長きにわたる活動を続けてきた市民立法の草分け的存在が、市民活動を成熟させていくための基盤である情報公開法」と位置付け、99年5月、第143通常国会において成立した情報公開法は、今後の市民社会にとって大きな意義をもつものと述べている。 (注8) 日本で最初に情報公開条例が制定されたのは、1982年に山形県金山町においてであり、ここから全国の地方自治体に広がっていったが、国レベルでは、1988年に個人情報の保護を目的とした個人情報保護法を制定しただけであった。 (注9) 現在では99年5月、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が成立し、施行を待っている状態である。これらのNPO法制定までの動きは多くがメールで行われ、効率よく議員と情報を交換できたことが、短期間での法律制定を可能にしたといえる。NPO法を造る際、最もインターネットが生かされたのは、アメリカとの協力においてであった。日本では一部の市民団体が、日本でインターネットが普及する以前からアメリカでホームページを開設していたことから、関連のネットワークを通じて、生きた情報を得ることができた。現在でもこのような団体はNGOとして活動している。NPOとボランティアの関係は「ボランティアは組織としてのNPOがあってはじめて、社会的な力になる。NPOが育たないで、ボランティアだけが育つと、ボランティアは行政の下請けやお手伝い、個人的な働きに終わってしまう」 (注10) と表すことができる。NPO法は制定されたが、このNPOが正常に機能するにはあまりに多くの問題がある。補助金、インターネットの環境整備、使用料の値下げ、スタッフの雇用など、日本の従来のシステムを根底から覆す必要さえあると言われている。このように、インターネットが市民活動に活用され、より円滑で直接に相手方に伝達され、その影響力自体が強くなっているのである。 3、行政の情報化の現状 1994年の『通信白書』ではこの年をマルチメディア元年と命名し、テレビ放送各局は2000年9月よりデジタル放送を開始し、郵政省は光ファイバー・ケーブル、B−ISDNを全国に張り巡らす計画である。しかし、産業部門での情報通信テクノロジーの整備に比べ、公共団体の整備は大変遅れおり、特に地方自治体では顕著であると言われる。国の中央省庁における行政情報化は1994年12月25日に閣議決定された「行政情報化推進計画」により1995年度から5カ年計画で推進されたことから、25省庁の本省庁内部部局では48094台のパソコンが整備され、職員1.06人に1台の普及となっている。自治体においては表1の通りで、地方自治体全体では遅れていることが統計ではあきらかであるが、統計には現れないところでインターネットの特性を使い、成果をあげている自治体もある。秋田県大潟村を例にあげると、その特徴は、1、村のホームページが地域の情報を総合的に発信していること。2、村がプロバイダー的な機能を果たしていること。3、イントラネットの布石ということである。(注11) 2は、村がプロバイダー的な役割を担うことで、アクセスポイントが遠い位置にあるという弱点を克服し、低料金でインターネットができるようにし、村民との対話をもとうとする試みである。3は、広大な土地で少ない人口であることから、将来的に全村民に電子メールアドレスを公布し、村内にイントラネットを築き、村役場に出向かずに住民票などをとることや、電子会議室、村の掲示板としての役割が期待できる。これらはポルダーネットと呼ばれ、大潟村では国のIT基盤が整う以前の1996年7月より運用を開始している。かつて武蔵村山市での福祉サービスの向上が全国に広がっていった福祉異動と同様に、ある地方自治体の活動がいくつかの自治体でも行われ、そののち国において取り上げられ、全国に広がっていったのである。最初にまとまった形で自治体がホームページを出したのは、兵庫県神戸市であり、1994年10月のことである。「これが2ヵ月半後の大震災時に、いち早く情報を出し入れすることに役立ったといえる。日ごろ使っていたからこそ、混乱の中でも震災情報にスムーズに切り替え活用できたといえる」 (注12) と当時の神戸市企画調整調査課長、木村義秀氏は述べている。 各自治体によってインターネットに対する考え方や活用の仕方に違いはあるだろうが、ホームページを作成すればいいというわけではない。その内容が問題であり、行政が主体となって行う活動についてほとんど書かれていないものが多く、たとえネット上での行政サービスや議会について公開されていても、その利用、アクセス件数が他の情報に比べて極端に少ない。(表U参照)アクセス件数が少ないものでも、その重要性から公開すべきもの、議会での決定や教育、福祉、防災などは生活に関わるものであり、関心を持っている人も多いはずである。アクセス件数はあくまでもアクセスの回数であって、アクセスした人数ではない。多くの人が1回ずつ訪れるのと、それより少ない人であっても何回も訪れるのでは、後者の方がより良いホームページといえるだろう。確かに、行政とそのまちの観光、産業は結びついているものであり、それを前面に出すことは不可欠のことであるし、インターネットの使用目的として趣味や旅行の検索する人が最も多いことから、アクセス件数も多く、各自治体にとって、そして、住民にとっても大切なことである。ホームページは、容量の大きい画像などでなく、文書であればかなりの量を載せることができることから、公開すべき内容のものはできるだけ公開することが必要であり、それが市民に対する行政の義務でもある。その公開すべき内容については、政治家のホームページと同様の問題であり、次の政治家によるインターネットの活用の章で述べていきたい。 表T 都道府県、市、特別区におけるパソコンの導入状況
![]() 自治体の規模 パソコン1台 インターネットに接続できる
あたりの職員数 パソコン1台あたりの職員数 ![]() 都道府県 2.1人 73人 人口30万人以上の市、特別区 8.7人 549人 人口10〜30万人の市 8.5人 386人 人口5〜10万人の市 6.6人 266人 人口5万人未満の市 8.3人 166人 平均 7.4人 276人 ![]() (『全予測 日本 2000』三菱総合研究所著 ダイヤモンド社)
表U 地方公共団体がホームページから発信する情報とアクセス件数
4、政治家によるインターネットの活用 情報化社会といわれる中、政治の世界だけは重要な情報の媒体であるメディアには否定的な側面もあるようである。テレビにおいては、1993年、第40回総選挙でのテレビ朝日報道局長の発言に対して、10月25日衆議院政治改革特別委員会で証人尋問が行われたことの影響から、1996年の第41回衆議院選挙において、メディア自体が自主規制をしたことにより、国民の政治的無関心を助長させる結果を招いたともいえよう。 (注13) 日本的政治に対するメディアの影響についての研究が活発化する中、政治リーダーもメディア動向に関心をむけなければならないが、それによって国民の有用な情報源であるメディアを法または間接的圧力で妨げては政治離れの改善は望めない。 国会議員を対象に「国内の政治経済情報を入手する際にどのような手段が有効であるか」を問う調査では、新聞(85.3%)、テレビ(45.8%)、雑誌(26.3%)、国立国会図書館サービス(23.7%)、研究者・学者(22.1%)、政党スタッフ(20.2%)、ジャーナリスト(12.8%)、秘書(12.2%)、各種データベース(8.3%)、同僚政治家(7.1%)という結果が示された。同様の質問を選挙民に対して行った結果は、テレビ(93.4%)、新聞(87.8%)、ラジオ(4.3%)、雑誌(3・6%)、友人(1.6%)、その他(1.6%)、後援会誌・タウン誌(1.1%)、衛星放送(0.7%)、回覧版(0.2%)、CATV(0.1%)、パソコン(0.0%)である。(注14) これは、1992年のパソコンがほとんど普及しはじめた頃の調査であるが、前述のようにインターネットを政治の情報を入手するために使うという人は現在でも少ない。岩井教授はこの二つの調査から「通信テクノロジーから、選挙民も政治リーダーも、政治情報に関してはほとんど恩恵を受けていないといってよいだろう」と述べ、さらに「新しい情報通信テクノロジーは、一貫して無政治的に取り扱われてきたのである」と結び、そのことに対する危機意識を促している。 2章、3章で見てきたように、市民活動にインターネットを利用することは、活動を広げていくためにも日常的に活動をしていくためにもごく自然なことであり、また、自治体によるインターネットの活用の試みも市民活動とリンクするかたちで多く行われ、住民参加型の自治体運営をめざし、今後さらに充実させていく計画や考えを持っている自治体がほとんどといえる。自治体が情報ネットワークを充実させていくことで、広く民意を吸い上げることが可能になるのである。地方政治では、行政の長と議員がそれぞれ有権者から直接選ばれるため、民意は長を中心とした自治体職員側と議員との二つの違った道筋から自治体に吸い上げられ、相互のチェック・アンド・バランスから身近な政治が形作られていることになっている。しかし、その現状は、自治体職員という大きな行政組織を握っている首長が、民意のくみ上げや行政のあり方の見直しなどにコンサルティング会社の新しい技術を活用する自治体が急速に増えており、従来の民意のパイプ役となる議員の役割が形骸化してきているといえ。 (注15) 民間のコンサルティング会社の専門的ノウハウと技術がない議員側は、たとえその計画に反対の民意を受けとっても、正確なデータや調査結果を示されるとそれに賛成せざるを得ない。また、前述した行政の情報化においても、そのほとんどが首長側へ民意を反映させるものとして活用されているものであり、議員一人一人の政治に対する役割を見直す必要がある。 近年のIT革命により、インターネットが日常生活の様々なところで使われるようになり、このような社会状況に沿ったかたちでホームページを持つ議員も急速に増えてきた。しかし、その内容は選挙の時だけ作ってそのままというものから、頻繁に更新してこの議員が何をやってきたか明確に分かるものまでその差は大きい。このことから、公約や政策、意見をしっかり持った政治家が必要であり、その公約を達成したのか、達成の努力をしているのかいないのかしっかりと選挙民に報告する政治家が必要との考えから、政治家のホームページの点数評価を行っているのが、『開け電網政治の時代』というホームページである。点数評価の対象とする政治家は、国会議員、地方議員に限らずすべての政治家を対象とし、点数評価の基準は、更新度、政策面、活動内容、実績、その他の5項目がホームページ上に載っているかいないかをそれぞれ20点満点で採点し、合計100点満点で採点している。(その具体的な評価基準は以下を参照)評価の対象となっている議員は未調査、調査中の議員を含めて400名以上であり、評価済みの議員は約100名である。この評価基準はあくまでもこれらの事項が記載されているかということ主要な基準としており、ホームページのデザイン、芸術性については重要視されておらず、力作等については別途紹介されていることに注意したい。 資料1、『開け電網政治の時代』の政治家のホームページ評価基準 (http://www.yk.rim.or.jp/~sousou/politic/より引用)
政治家がホームページに記載すべきものは何か(評価基準) 評価事項1 評価:更新度 評価基準 頻度と更新内容の読み応え。 20点。 評価事項2 政策 評価基準: (20点満点) 1)政治家としての基本理念,理想および政策を記載する。 記載されていて当然の事だが,実は書いていない人もかなりいる。 2)当面の政治課題に対する自分なりの政策。 「安心できる暮らし」といったスローガンだけではだめで、現状の問題点の説明、実現までの課題と実現までの計画、など深く考えていることがわかる記述を望みます。 ビジネス起案書に相当。それが無いと「ではあなたに任せます。」と言えない。
新人は政治実績がないので、その分、この政策の記述が大事。 評価事項3 活動内容 政策達成につながる、課題解決のための政治活動報告。 政治理念や自分なりの政策に基づいて政治家がいつ、どこでどのような行動を起こしたか。誰に何を発言したか。普段の政治活動は何か。政策の実現の計画に沿った行動なのか。成果はあがったのか。 ビジネス報告書のようなもの。「今日は出張でした。はい、終わり。」「会議で質問しました。答えを聞きました。それで終わり」なんて報告では疑われます。答えを聞いたらそれで納得なのか、もっと追求する気はないのか。追求のために今後何をするのか、といった突っ込みが欲しい。 評価基準: (20点満点) 政策を実現するためにどのような行動をするのか書いてあれば5点。 記述の明解度によって+5から15点。
評価事項4 実績 評価基準: (20点満点) 過去の政治成果の実績、達成した公約など。この説明がないと、その人に投票した選挙民としては選挙の甲斐がない。成果を確認することで実現能力がわかる。 ”19xx年 XX大臣に就任”といった経歴ではなく、その時に実施した政策は何か、どんな成果があったのか、ということです。
その他 評価基準: (20点満点) 特に優れた点、率先的情報公開等、内容によって+0から20点。柔軟に評価する。 総計 100点満点 (1) インターネットを活用している議員像 ![]() 平均年齢:50.76歳、 平均当選回数:3.68回、 男女比:男性22人 女性3人、 (平成13年1月1日現在)
では、実際どのような政治家がインターネットを活用しているのだろう。以下に『開け電脳政治の時代』の得点評価50点以上の25人をもとにした統計結果は次のようである。 年齢・当選回数:一般的にインターネットを利用している年齢層は10代〜30代が多く、年齢が高くなるにつれて利用率は低くなっている傾向にある。全政治家の平均年齢はおよそ55歳ということを考えると、インターネットを活用している議員の年齢層とそれほど変わらず、絶対数の多い40代〜60代の議員の中で、パソコンに興味がある、周囲にパソコンに詳しいアドバイザーがいるなどのきっかけから、自分の活動を公開していこうとする議員が少なからずいることがわかる。実際にホームページを議員自身が作成しているかどうかは分からないが、少なくとも関心があり、自分の考え、政策をしっかり持っている議員でなければインターネットを活用できないし、ホームページも充実しない。事実、この点数評価において一位の90点である吉田市議も現在52歳であり、平成9年からホームページを知り合いのサポートを受けて作り始め、平成11年1月に『開け電網政治の時代』の管理者より更新がされていないなどのクレームを受け、今ではすべて自分自身でホームページの作成を行い、日々さらなる改良を重ねている。この50代〜60代の年齢層においてはパソコンは苦手という固定観念を持っている人も多く、その活用の差は大きい。しかし、パソコンに興味があるから、知識を持っているからといって充実した内容のホームページができるわけではなく、ある程度実績があり、書く内容も豊富で、政治家として長年培ってきた経験や、バックナンバーの積み重ねでより充実ものを公開していくリーダー的存在の議員がもっと増えることによって、全体的なレベルがあがると考えられる。よって、若い年齢層の活用はもちろん、超高齢化社会を向かえるにあたって中・高齢者層の今後の動向が重要である。 所属議会:全国には3200もの自治体があり、市だけでも670存在するが、この結果では国会議員が約半数を占めている。国会議員のホームページには、その知名度や影響力から多くの人が訪れ、瞬時になんらかの反応や効果を得ることができる。一方、地方議会議員のホームページは初期の段階では特に見る人が限られ、反応も長期間継続的に更新していかなければ得ることは難しいと考えるかもしれない。地方分権の時代に、その地域の住民に対する情報公開という意味でも大切であるが、自治体と自治体の交流の場として活用していく必要があるし、インターネットはそれを円滑に行うことのできる手段である。地方議会議員こそ、その自治体をより良い方向に変えていくために、ホームページによってお互いの政策や考えを公開し合い、インターネットの双方向性を生かして議論することが可能であり、充分にその効果は期待できる。 (2) ホームページ活用の目的 次に、政治家はどういう目的でホームページを作成しているのだろうか。それは人それぞれであるが、大きく分けて2つの目的があると考える。ひとつは、全面的な選挙対策であり、ある程度その内容に制限があるものの選挙期間中にその内容を更新しなければ認められることから、選挙前にホームページを作ることで広く注目を集め、メーリングリスト等を活用する目的である。このタイプでは、当選という目標が第一に考えられており、ホームページを持つということが目的であり、即席で内容も薄く、当選後の更新は多くが期待できず、ホームページというより広域広告、ポスターの延長といった観があるが、選挙という目的をクリアした後、2つ目のタイプに移行する場合も少なくない。もうひとつは、自己主張・自己開示型であり、その人自身の政治活動を継続的に記載していくものである。政策についてはもちろんであるが、議会においてそれぞれ議案について賛成したか反対したか、その結果可決されたか否決されたかを一連の表にまとめたり、自分の給料やその使い道などが公開されている。これは、国民に対して自分の行ってきたことを報告する目的であり、本来、近代法においては政治家の当然の義務とされる内容のものである。しかし、このタイプも終局的には選挙対策としての機能は持ち合わせているといえる。 (3) ホームページ上の活動と従来の活動との違い 政治活動はさまざまあるが、市民に直接、自分の考えや政策を伝える従来の手段として、街頭演説、チラシの配布が挙げられる。街頭演説は瞬間的なものであり、その人の人柄や雰囲気はある程度記憶に残るが、どういった政策をどのくらい具体的に考えているのかといった実際の政治活動と直接結びつくようなことは頭にほとんど残らない。チラシは政策や最近の議員活動などの情報がわかるが、書く内容に制限があり、いままでどのような活動をしてきたかということと、現在の活動との比較した見方ができないことや、配る地域も限られること、3,4ヶ月に1回のペースで配られるため記事の内容と現状にタイムラグが生じることなど、市民に伝えることが制限されてしまうのである。これらの問題を解消するのがホームページであり、記事内容の即時性、保存性、内容量の豊富なこと、誰でもいつどこででも見ることができ、何か意見があれば双方向性により議論をすることも可能になる。よって、従来の活動では、市民が実際に政治家がどのような活動を行っているか知るには、街頭演説を聞きに行ったり、チラシを毎回保存しておいて比較検討したり、議事録を丁寧に見たり、その議員と直接話をするという大変労力を要する作業だったのである。それが、ホームページの登場によって、その議員の活動が一目瞭然であり、何か疑問や意見があればメールや、掲示板を利用し回答を得ることもできる。インターネットの最大の特徴である双方向性を活用することができた実例として、前述の吉田市議のホームページでは、市民から図書館の休日が多すぎることや犬の糞問題について意見・提案がされ、議員がそのことに分かりやすく説明し回答したこと。民間の大型マンション建設反対の意見については、議員はすべての質問に答え、議会で決まった結果も報告している。しかし、このような市民と議員との双方向性の利用頻度は実際にはまだ少ない。コンピュータ・コミュニケーションの多くが以前から面識のある人との交流に使用されることから、面識のない、しかも政治家に対して意見を述べたりすることは少々抵抗があり、一般的にもコンピュータ・コミュニケーションが「発信者の革命」ではありながら、発信時の「書き込みにくさ」が必ずしも「克服」されていないことも事実である。(注16)統計的に見て、市民からの意見としてくるものは少数意見が多いと吉田市議は指摘しており、マジョリティの意見で決定される政治に対して、マイノリティの主張の場になっていることが興味深いことである。インターネットにより双方向性が実現し、市民と政治家の距離はなくなったはずであるが、まだ身近な存在とは言いがたく、両者の意識改革も必要である。 (4)展望 私たち有権者は、選挙で投票する際、それぞれの候補者の政策について理解し、比較検討して投票することは少ない。国政選挙と地方議会議員選挙では、多少その状況が違う面もあるが、やはり、一人一人の候補者の政策をひとつひとつ理解して投票している有権者は少ないだろう。特に、地方議会議員選挙では、私たちの生活に最も近い自治体の代表者を決める選挙であるにもかかわらず、候補者についての情報を得て投票する有権者はほとんどいない。しかし、有権者に対して今までの活動や政策を、好きな時に好きな場所でみることのできるインターネット上で公開することは有権者の立場に立てば本来当然のことであり、アクセスする人は少なからず存在する限り、それは選挙の時期だけやればいい話ではない。インターネットに活動内容を記載するからには、日ごろからきちんと活動をしなければならず、4年間の任期中に一度も議会で発言をしていない、地域での活動していないとすぐに分かってしまう。現状では、インターネット上で公開することが必ずしも選挙の結果に結びつくとまでは言えず、活動内容を文章化するとなると時間のかかる作業にはなるが、こうした動きが急増していること、ネット上での有権者とのやりとりもすこしずつではあるが増えていることから、ホームページを作成し、継続的に更新していくことは充分価値のあることである。また、これまで政治家同士の議論は、党や地域ごとの勉強会や自主的に交流会を開いたりすることで行ってきたが、すでにネット上で議論も行われており、より広範囲で正確な議論をするためには各自のホームページが重要な役割をする。実際、ホームページを持っている議員は、自分のページをよりよいものにするために工夫をしている議員と交流を持ったり、他の自治体で行っていることをネット上でいち早くキャッチし、自分の自治体に提案したりしているのである。活動や政策、考えが文章化されることで、文章で確認しながら議論ができるため専門的で難しい内容であっても、正確で記憶に残る議論をすることができる。 このように、各政治家のホームページが充実し活用されることは、より透明で質の高い議論のできる自治体を作っていくために、有権者にとっても、自治体の将来を決定する重要な役割を担う政治家にとって有益である。 5、まとめ 市民活動、自治体、政治家の3つの面からインターネットの影響をみてきたが、この3点はいずれもそれぞれ相互に関連し合い結びついており、どこか一つがうまく機能しなくなるとバランスがくずれ、私たちの多くは不満や不安を抱えながら生活をしなければならない。これらを結びつける画期的なアイテムがインターネットであり、そのことは前述してきた通りである。しかし、個人でも団体でも同様に、様々な方向から影響力を与えることができるインターネットというアイテムはあくまでも道具であり、この3つを軸としたバランスを保つためにインターネットの持つ特徴の活用法とその内容を検討しなければならない。3機関がそれぞれ、公開すべき内容を一次的で正確に公開し、相互に対話のできる環境をつくることで、3点を軸とした丈夫で信頼のできる市民生活の土台が構築されると考える。 (注1)『情報化白書2000』日本情報処理開発協会、p42 (注2)『インターネット市民革命』岡部一明、D−E (注3)『日本のNPO2000』中村陽一、日本NPOセンター p.258−268 (注4) 「‘NPO’ということば」長谷川公一、前掲書 p.19図表1参照 (注5) 「「市民活動」の登場と展開」中村陽一、前掲書 p.32図表1参照 『平成11年版 通信白書 特集インターネット』郵政省、ぎょうせい、p.150 23社が回答、以下ホットライン(25%)、テレヘリ映像の共有(20%)、高所カメラ映像の等の共有(10%)、その他(0.2%)となっている (注6)『震災とインターネット』田中克巳、参照 (注7)「市民立法の動き」広瀬稔也、前掲書、p.24−25 (注8) 前掲書、p.26 (注9)『はじめて学ぶマスコミ論』藤江俊彦、1996年、p.212 (注10)『市民参加のデザイン』世古一穂、ぎょうせい、p.19−p.20 (注11) 村松 茂「マルティメディアを用いた情報発信」、『マルティメディアが地域を変える』p.35−p.42 (注12) 原 耕造「インターネット先進事例」前掲書、p.78、79 (注13) 『日本のメディアと社会心理』佐藤毅、1995年、p.195−203 『日本の選挙』福岡政行、2000年、p.15 (注14) 谷藤悦史「情報社会と政治過程の変容」前掲論文 pp.49−58 「国会議員情報化調査」、1992年1月、調査対象者=全国会議員、回収率=40.8% 「政治情報と政治行動に関する調査」、1992年7月、調査対象者=首都圏の20歳以上の男女1200名、回収率=69.5% (いずれの調査も、文部省科学研究費重点領域研究「情報化社会と人間」の一環として谷藤教授が行ったもの) (注15)『政治家よ』朝日新聞社 pp.119−127 (注16)『電子ネットワーキングの社会心理』池田謙一著 誠信出版 pp.71−81 |