清渓セミナー、講座V「教育委員会制度改革」須山靖子

講座V「教育委員会制度改革」須山靖子さんのまとめ

 清渓セミナー2日目、西尾理弘氏(出雲市長)と清水聖義氏(太田市長)を講師にお迎えして、講座V「教育委員会制度改革」が行われました。
まず両氏は、教育の政治的中立性を確保するという教育委員会の立場について、「世界的な冷戦構造の解消により、その論拠が失われつつある」と指摘されました。そして、予算編成権や条例制定権がないために独立した行政委員会としての施策展開が行えないことや、それらの権限を有している知事や市長が教育行政に直接関与できないことなど、教育委員会制度下での問題点にも言及されました。

 このような現状に対し、「自治体の責任者たる知事や市長が試問委員会や視学官等に支えられながら、直接教育行政に参画するような形に変革していく必要がある」という「総合戦略としての教育行政」を提言されました。また、モデルケースとして出雲市の取り組みを例に挙げ、生涯学習部門を教育委員会から市長部局に移動し、分権型教育の推進に励んでいる様子を報告されました。

 私は大学で社会教育学を専門にしていることもあり、今回のご講演は大変興味深く拝聴しておりました。なかでも特に興味深かったのは、週5日制にともなう土曜日の有効利用についてです。太田市では実際に、スポーツ・芸術・学習など様々な分野に関する講座を、土曜日を利用して開設しているということでした。学校の授業でも家庭でも教えられないことを、休日を利用して子供達に伝えていくという試みは、まさに社会教育(生涯教育)の根本であり、画期的なことだと思います。ただ、講座開設に伴う財政的な問題など、解決しなければならない点はまだまだあります。改善すべきところは改善し、子供達により幅広い選択肢が提供できるようになれば良いと思いました。

文責:須山靖子