講座T「三位一体改革と分権の展望」報告(田中 亜希子)
第9回清蹊セミナー 講座T

(講師:佐賀県知事 古川康 氏) (まとめ:早稲田大学鵬志会 田中 亜希子さん)

講座T「三位一体改革と分権の展望」

<要約>
講座Tでは佐賀県知事古川康氏を迎えて「三位一体改革と分権の展望」という題で講義をしていただいた。まず三位一体改革においての古川知事のお考えは、何が何でも地方が全てやるというものではなく地方がやるべき部分と国がやるべき部分を明確に分けるというものだ。例えば自然災害については地方が対応できるが、テロやスパイ等の事態が地方で発生した場合、地方は治権をもっておらず対応できないためそういったことは国が一元してやっていった方が良いといったように、「国と地方の役割分担」を積極的におっしゃっていた。また住民への行政サービスに対する説明が、納税者である住民にではなく予算をもってくる国に対してのみ行われ、これから三位一体改革を進めていく上で説明責任を住民へシフトしていくことが最も大事たともおっしゃっていた。
道州制については、現在の都道府県制では東京への一極集中で"一都栄えて万村枯る"という状況になっているのではないかと強く危惧されていた。現在佐賀県にある某有名企業の工場は収益を大量に産みだしているにも関わらずその法人税は全て本社のある東京に納められているといったように付加価値を地方で生産しているにも関わらず地方へのメリットが発生していないと問題視されていた。こういったように東京に集中するのであれば道州制になった場合、他の州への配分をきちんとやるべきだと主張されていた。
最後に地方に今何が求められているかという点では"地域の誇りを取り戻すこと"が大切だとおっしゃっていた。

<感想>
近年三位一体改革という言葉が多く取り上げられ国民の間でもかなり浸透し、実現に向けて多くの議論がなされているが、その中身については何か難しい話という風に感じている人も少なくないだろう。今回の古川知事のお話は、現在の地方においての行政サービスの問題点や国と地方の関わりについての矛盾点など大変分かりやすく率直に語っていた。
問題点としては例えば保育所においての摂取カロリーのお話は今の国と地方の関係を如実に表していると感じた。霞ヶ関の官僚が単に基準として作った保育所における児童の摂取カロリー目標値を、県は"絶対的に守らなければならない値"として、そのカロリーに達していない保育所があれば指導を行ったというものだ。この基準を作った人の意図を超え物事が進んでいるという矛盾が発生し、今の行政サービスが私たちの遠いところで決められていると深く感じた。また現在の補助金要綱で学校の空き教室は教育目的以外で使うためには建築されて10年以上経たないと使えないというように住民にとって不便な点が多々あり、地域にニーズに対応しきれていない国の制度を疑問に思った。これから三位一体改革が進められていくうえで、住民のためになるよう進めていってほしいと思うとともに、私たち住民も傍観者となるのではなく参加していくことが大事なのではないかと強く感じた。

文責:田中 亜希子