● 視 察 報 告

   ◇YKKの最新鋭黒部工場を見学

◎ 全体の要旨

 自主的な有志議員で、平成11年8月上旬、富山県下(魚津市議会・小矢部市議会・山田村情報化センター)に視察に出向きました。参加者に、YKK出身の鈴木きよと氏(江東区議会議員)がおられましたので、視察初日の9日に黒部市にある、YKK黒部工場を視察見学させていただくことになりました。YKKは世界各地に60カ所の工場・拠点を持ち、この黒部工場は、その基幹となる工場だと言うことであります。 ここから写真版にリンク出来ます

 この工場には、約3千人の社員の方が働かれており、ファスナー工場、ファスナー製造機(工作機)工場、アルミ建材製造工場の3工場が、広大な同一の敷地に配置されていました。工事内の移動には電気自動車が使われ、工場の中までそのまま出入りいたしました。工場における冒頭の説明では、黒部市内に複数の工場があり、全体として黒部作業所と称されているとのことでありました。また、ご案内いただいた道のり、それぞれに見えた工場の事業内容をご説明頂きました。

 まず、YKKと言えば、ファスナーのメーカーだと誰でも思い当たります。業界では世界シェアーの6割を占め、もちろん世界No.1の企業ですが、なぜ世界一になれたのか、それは現在の経営環境下でも維持されているのか、と言うことについて考えることは、自治体にとっても有意義だと思います。

 この会社の特徴は、創業者の克明なノートに、全てが凝縮されている。そう言っても過言ではありません。企業の会計や製品開発から、事業全体の構想まで、ありとあらゆる事柄が、ノートに克明に綴られています。記録からすると、創業者の吉田忠雄氏は、決して専門的な上級教育を受けられていませんが、天才的な能力でもって、豊かな構想が様々に書きつづられているのです。

 このノートから、世界トップの製品が生み出され、事業化され、ユーザーを獲得していくという過程が、リアルに見いだされます。次に、信頼できる人物を次々と取り込み、企業の中核を作っている過程も見逃せません。とかく「ワンマン」と言われ、まわりにイエスマンしかいないようでは、ここまでの企業に育たなかったことでしょう。経営に関して、経営陣のそれぞれが、自分の守備範囲を持つ、分業化の推進が企業成長の秘密だったのではないでしょうか。

(要旨はこの行で終わりますが、出来ましたら全編を読んでいただくか、創業者の伝記をどこかで見ていただきたい)

◆ 本文の構成

  1、 ◎ 視察の経過とメンバー

  2、 ◎ 民間企業を訊ねた成果

        ○ 創業者の努力と創造性

           事業の創業

           飛躍の契機

           事業の伸展

        ○ 社員の、会社と地域への思い入れ

  3、 ◎ 自治体への課題

◎ 視察の経過とメンバー

 要旨の述べましたように、今回の視察にYKK黒部工場の視察が出来るようになった経緯は、鈴木きよと氏(江東区議会議員)の手配によるものです。また、「東京ねっとわーく」参加議員の研究意識が、議会や行政という範囲に留まらず、先進的な民間企業の営みにも関心を抱いているためでもあります。

 今回、そのYKK黒部工場の現地視察した参加者は、天目石要一郎(武蔵村山)市議、榎本雄一(江東)区議、鈴木きよと(江東)区議、及び吉田勉の4名でありました。

 この視察においては、同社の本社社員の方、黒部関係の役員を初めとする大勢の皆様のお世話になり、心からのからのおもてなしを受けたことを、合わせて記載いたしまします。

 

◎ 民間企業を訊ねた成果

○ 創業者の努力と創造性

 まず、ファスナーと言うと、YKKの発明品では無いかと思われていますが、決して発明品でなく、昔の手作り品の時代からあるものでした。そのことが判ったのは、黒部工場内にある、「吉田忠雄記念室」(YKKの創業者)を訪れたことによります。

そこには、創業者の思想、足跡、人となりが、それぞれの部屋に分かれて説明・資料展示されていました。私は、YKKの発展過程を次のようにとらえました。

事業の創業

 郷里、及び上京してからの、青年期の経営習熟過程。特に貿易商を志して、投手から輸出入業務に携わる。ファスナーを扱う契機となり、その後独立して会社創立し、兄弟を含む同族的な結合の経営を行う。当初より、海外への輸出を手がける。敗戦による事業の解散と、郷里での事業の再興。

(この時期より、社長は克明なメモを作成する習慣があり、綿密な販売計画、先端的な生産技術構想を常にノートに期しており、その蓄積が飛躍の契機につながった考える)

飛躍の契機

 戦後すぐからの、販売員の全国派遣。材料からの一貫生産の構想。海外からチェーン・マシンを輸入し、工場の起工。チェーン・マシンを国内メーカーに大量発注。

 (海外メーカーのチェーン・マシンを見て、即座に輸入を決意し、実行力と、続いて、国内メーカーにそのチェーン・マシンの大量発注を決断力がともに優れていた。また、説明から得たことではなく、資料を見かけての思いつきであることを断った上でのことですが、富山県と言えば「置き薬」のメッカであり、全国を股に掛けた営業活動をする販売員に資質が十分に備わっており、富山県を本拠とした、YKKの全国展開に向いていたのではないだろうか。企業が全国に展開する過程において、富山の企業(販売員)は、自社の知名度の低くとも、それを克服する能力に長けているのではなかろうか−閲覧者の見解を問う)      

事業の伸展

 ファスナー製造機の工機の自社生産。海外への大胆な進出と、製品の現地生産。完全自動生産による、世界均一な生産方式の徹底。

 (社史を見ると、毎月のように新製品を出し、毎月のように世界各地に進出する記録がなされている。全世界に事業が普及したとき、会社の目標をなにに据えていくのかが問われる。創業時より、会社の役員会に部長職が臨席していた、という経営方式が無くなり、並の会社となっていくのか、それとも、自社で部品の金型から起こしていく経営方針が、社員の高い意識を支え続けるのか、興味深い内容です)

○ 社員の、会社と地域への思い入れ

 誰が見ても、黒部市はYKKの企業城下町でしょう。創業者の発想の中に、優れたアイデアを実現させるための、使途を制限されない自己資金としての「貯蓄」が説かれます。企業の姿で目にすることは、金融機関から借りられるだけの資金を集め、精一杯に事業展開をすると言う事例です。以下も推測の文章ですが、トヨタ自動車の「無借金経営哲学」も、その思想とするところは同じではないでしょうか。−−−(思うに、政治家は時間が財産ではないでしょうか。「様々の行事への顔出して、格好を付けること」に忙しく跳びまわるのではなく、自分が必要とされる人々と、事柄のために、時間の余裕を持つ−−−私は、1ローカル議員として、このような政治家をめざしたいと思います)

 YKK社員は、安心できる財産としての自宅を持ち、世界にファスナー製造機を送り出して世界の豊かさに貢献する、という使命感で働いておられるのだろう。ちなみに富山県は、持ち家比率が日本一であったはずである。  

◎ 自治体への課題

 トップ企業と言われる企業の、工場や作業所を訪れると、会社の規模の大小を問わず、社員の意識の高さが身に付きます。私たちが見学の際、一般社員の方々と行き会う時に、きっちりとした挨拶を受けるものであります。ほとんど例外がありません。もちろん、それらの社員は、名高い学校を出て、数々の資格を取得し、専門的な知識と技術を兼ね備えているケースが多い、ということもあるでしょう。しかし、そう言ったことと、お客を気持ちよく向かい入れるということに、直接の関係が無いことは自明のことであります。やはり、トップ企業の社風が、そのようにさせるものなのでしょう。しかし、大きな企業でも、崩壊に向かう会社ではこうはいきません。

 果たして、わが町田市の職員の皆さんは、来客をどのように迎えているのでしょうか。私が言う、「トップ企業」と同じような対応なのか、それとも、なんの意識もないのでしょうか。別のファイルの山田村の視察記と合わせて、職員の皆さんに考えていただきたいものであります。町田市の悪い点は、自分たちの市政の水準として、決して高いレベルでない、と気がついていないことです。「三多摩地域27市の水準の中で、平均以上であるか、無いか」−−−これが、町田市の判断基準であります。少なくとも、町田市の水準で考えるならば、「人口、30万人の都市」が比較の目安になっていいはずであります。

(この行で、 ◇YKKの最新鋭黒部工場を見学は終わります)