● 会派視察報告/北日本精機(株)本社を訪問

◎ 経過と概要 会派視察とこの訪問地

 平成12年度の自民党会派視察には、民間企業の工場視察を入れました。自治体の視察だけでなく、民間企業視察も取り入れたいと考えていたためです。そこで、インターネットを通じて、行政視察予定地の近くにある企業のウェブサイトを探していました。その中で、北日本精機(株)という、ベアリング製造の分野で先端的な会社を見つけましたので、その会社の視察を御願いした次第です。 

 北日本精機(株)の会社と業務内容自身については、北日本精機 のホームページを御覧下さい。

 本社工場の視察訪問時に、小林栄一社長から記念品を頂きました。「空撮・北海道」という写真集です。ほんのちょっぴりと会社のコマーシャルが入ったものでした。

 申込をして数日後に視察受入の許可がでました。私たちが実際に訪れてみると、小林栄一社長みずから、出迎えと案内を一手に引き受けていただきました。私たちを、工場の各セクションで明るく迎えていただいた従業員の皆さんと社長に、改めて感謝する次第です。

 北海道の一地域で、昭和44年に創業されて30年が過ぎていますが、社長が一代で築きあげられた立派な国際的な企業となっています。このベアリング業界というと、日本では世界的な規模の巨大企業が目立つ中で、中堅であっても世界に通用するものを作られていました。世界最小製品を作っているという自負心が、社長と社員全体に感じられる企業です。

 今回の視察に、民間企業の工場視察を取り入れたことは、大変意義あることだと考えています。

◎ 見出し

1 民間企業への訪問視察と、その目的

2 社員の顔と、社長の歓迎

3 技術力の時代

4 この企業を町田市は迎え入れることが出来るか

 

1 民間企業への訪問視察と、その目的

 自民党の会派視察で、民間企業を訪ねたのは二回目です。最初は、エコセメント(ごみ焼却灰をセメントの原料とする新しい方式)の実験プラントを持つ、太平洋セメント(株)の愛知県の工場を視察しました。ただし、この視察目的は、町田市を含む東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合が実施予定のエコセメント事業を、事前に視察しておこうという主旨でした。

 今回は純粋に、通常の行政機関を視察する代わりに、民間企業の現場を視察させていただこうという考えで、北日本精機株式会社本社工場の現地訪問を、視察計画に組み込んだものでした。

a) 役所ばかりをみてもつまらないから、会社を見てみよう。

 一般に議会の視察というと、他市の行政施設や、行政機構を現地を訪ねて、直に見るというものです。最近では、民生部門の高齢者施設、児童館(子供センター)、環境部門ではゴミ処理や処分施設、行政システム部門では、行政評価システム、情報システムを見るケース等があります。

 そのような役所を視察とは別に、企業の先端技術を見てみよう、最新のシステムの話を聞いてみよう、民間企業の企業活動を見てみよう等と考えた次第です。

 今回は北海道方面の行政機関を視察する予定が出されたので、関係する地域の企業をインターネットを通じて、探してみました。いくつか見る中で、北日本精機株式会社さんを見いだしました。北海道の小さな都市に本社を置き、技術力を持った立派な機械メーカーとの印象を受けました。

 さっそく、電話で「工場視察」の申し出を行い、数日後に視察OKのご連絡を頂きました。

b) 先端技術に触れる

 北日本精機株式会社は、昭和44年、北海道芦別市に設立されました。業種はベアリングの専門メーカーで、極小のもの、薄型のものを得意とされているそうです。私たちに身近な超小型製品としては、パソコンのハードディスクモーター用軸受け、フロッピーディスクモーター用軸受けなどがありました。あるいは薄型のものは、ビデオカメラのズーム機能用モーターの軸受けや、ロボット製品に使用されているとのことでした。他にも、身近な例では歯科用機械のモーター部分、電動工具モーター部分にも、このベアリングが使用されているようです。

 ただし、この分野は、国内メーカーが、世界的にも有数のメーカーとしてひしめき合っているため、大量生産品でない、注文品向けの少量生産に特化されているとのことでした。その専門分野で、世界最小の製品を供給する能力を有し、巨大メーカーを尻目に企業拡大を続けてきていました。

 そこに、この会社の活力があるように見受けました。

 ちなみに、芦別市は旭川市から1時間程度の都市で、元炭坑の町です。人口は2万2千人弱と、他の北海道の都市と同様に、人口減が著しいところです。芦別市にとって、北日本精機株式会社は単体の従業員数で二百七十名を越し、地元では有数の企業になっているようです。ちなみに、今回の視察は純粋な企業訪問であり、行政機関である芦別市役所には一切訪れていませんし、連絡も取りませんでした。

2 社員の顔と、社長の歓迎

 小林栄一社長は、一代でここまで会社を築き上げてこられました。海外との取引が多いということで、敷地内にゲストハウスを設けられていました。文化交流も兼ねているとのことでしたが、おそらく海外からの訪問者に快適に過ごしてもらおうという施設なのでしょうか。会社説明と、工場見学に時間をかけたせいか、このゲストハウスを見せていただこうという、話の余裕を得ませんでした。残念なことです。

 我々が工場に到着すると、作業服姿の小林社長さんが、玄関まで出迎えていただきました。社長の応対自体が、予定には無いことなので全員ビックリした次第です。視察団全員が応接室に通され、社長自身から会社説明を受けました。自分が築き上げた会社への自信と、想像力にみなぎっているようでした。しかも、我々議員と違って、自分を慎ましくするのでなく、社長に立派な暮らしをする、豊かな暮らしをするという、考えが根底にあるようです。その結果、まわりに潤いを与えることにつながる気がしました。社長の年収は、1億を遙かに越えているそうですし、それをこつこつ貯めるという事でなく、必要なことに使ってしまうと言う印象を受けました。

 後に述べるように、工場は先端的な機械が数多く並んでいますが、そこで働く人たちの顔つきが、大変穏やかに見えました。我々が話しかける前に、機械の前に位置した社員の皆さんが、それぞれに「こんにちは」と、私たちに声を度々かけられました。町田市の市役所では、視察者にそのように挨拶する光景は、めったに見られないことです。この工場で働く皆さんの、爪の垢でも飲ませることが必要なのかもしれません。

 昨年の夏、友人の議員と一緒に訪問した、富山県黒部市のYKK本社工場(世界最大のファスナーメーカーであると同時に、その製造装置の最大メーカーでもあります)で感じたことですが、工場に働く社員の挨拶もきちんとしたものでした。

 一昨年に、個人で訪れたシャボン玉せっけん株式会社(本社:北九州市若松区)の本社工場でもそうでした。おそらく、それらの工場には、大勢の視察団が訪れるのでしょう。働く人にとっては、自分が働く姿を見られることが誇りなのでしょう。われわれ議員にとって、傍聴席から質問を見られることと似たことでしょう。 

3 技術力の時代

 (言っては悪いですが、)北海道の片田舎の地で、世界の最先端技術品を作るという事業は立派なものです。本社工場は、5万5千ヘーベーと言う広大な敷地に恵まれ、工場面積も1万390ヘーベーの広さを有していました。このほかにも、栗山工場(従業員18名)や、従業員数が数十名の関連会社がいくつかあります。

 特徴的なことは、中国への進出です。100%の自社資本で、自由業因数では芦別工場を上回る工場を1993年に設立しています。(社長の説明と、パンフレットを併用して記載)その工場の稼働がうまくいっていることが、この北日本精機株式会社の経営を安定させているように見受けました。(以後は、自分が見ての印象では無いので、割愛します)

 この芦別工場は、同じ工場敷地内で数棟に分かれています。鋼材メーカーの名前が入った線材を並べた棟がまずあり、それを研削、熱処理、洗浄、研磨する順の過程で、棟をたち並べてベアリング製造が行われます。それぞれの行程に先端機械が配置され、微細な加工過程を経ています。パンフレットにもあるように、ベアリングの中にあるボール製品は、他の工場で作っているようでした。

 いくつかの製造ラインのところで、検査工程を目にしました。ある行程では、金属製の小皿に出来上がった小さなベアリングを載せ、人間の目で不良品を選別しているところを見かけました。大変、印象的なことでした。いずれ自動化されるということでしたが、検査する従業員のまなざしが活き活きしていました。これだけの眼力を持っていれば、一つの行程が自動化されても、また「人の目」による検査工程が新たに生まれることでしょう。さらに、また新たらしい優れた製品が誕生する過程で、「人の目」の役割が生まれてくることと思います。

 もちろん、私は技術的なことは専門ではありませんが、今回の視察で感じたことは、そこに配置された先端的な機械の自動化よりも、細かい検査工程で器用に手先を動かす従業員の皆さんの姿でした。

4 この企業を町田市は迎え入れることが出来るか

 町田市は言うまでもなく、サラリーマンのベットタウンです。しかし、最近では職住接近という考えから、あるいは地元にも企業を配置したいと考えから、企業を見直す動きも出ています。小規模ですが、多摩ニュータウンの一角に工場団地を作りました。相模原市と町田市とで、業務核都市にも指定されました。

 そうした中で、町田市がこの北日本精機(株)を、企業誘致できるのだろうかと考えました。残念ながら、否でしょう。町田市で、この会社の製品を作るとしたら、コストがあわないでしょう。おそらく、この会社が求める賃金ベースと、町田市界隈でのものとは大きな違いがあるでしょう。この種のものをそのままそっくり、持ってくることは不可能です。ただし、部門によって、業務によって、企業誘致を図ることは不可能ではありません。

 他の自治体に視察に出向く時はいつも、「この事業を町田市に活かせないか」と自問しています。今回の企業視察を起点に、「その企業自身を、町田市に迎えることは出来ないか」、あるいは「新しい起業は、どのような分野が可能なのか」と、事業家の方々とは異なった視点から、考えを巡らすことにしたいと思います。

 

◎ (12/08/12) g41208121 「会派視察報告/北日本精機(株)本社を訪問」の記事は、この行で終わります。