会派視察報告(個人) 神奈川県海老名市(市長・市議)選電子投票選挙
(04/03/17) 

前書き

 神奈川県海老名市・市長・市議選電子投票選挙に関して、数回にわたって、選挙の現地視察(2,003月11月8−9日)に、会派視察ですが、一人で出かけました。旅費などの公費負担があり、公式記録を提出しました。下記がその報告書の全文です。

神奈川県海老名市(市長・市議)電子投票選挙とその現地視察(2,003年11月8-9日)
         
      自由民主党 吉田 つとむ

1. 視察月日 平成15年11月8日(土)−9日(日)
2. 視察地   神奈川県海老名市

調査事項 1. 11月8日(土) 市長・市議選挙の運動選挙状況、電子投票の準備状況
         11月9日(日) 電子投票・開票の実施状況
 
<目次>
1 視察対象の概要
2 神奈川県海老名市の選挙状況
3 神奈川県海老名市の選挙運動状況と、投票所の準備状況
4 神奈川県海老名市選挙の投票について
5 神奈川県海老名市選挙の開票とその結果について
6 総括

1 視察対象の概要

海老名市で電子投票

 2003年(平成15年)11月9日、この日は神奈川県海老名市では市長・市議選が予定されていました。関東圏では始めての電子投票であり、また、その電子投票方式がクライアント・サーバー方式(複数の投票機のデータを1台のサーバーに集約して、記録する方式)であり、その投開票の結果に注目をしていました。

また、新しい課題で、衆議院選挙、最高裁裁判官の国民審査も同日におこなわれることになりました。その市長・市議選は、電子投票方式で行われますが、同時に行なわれた衆議院選挙では、手書き方式の投票となりました。これも、選挙従事者にとっては、大きな負担となるものと思われました。

 なお、今回の電子投票では、町田市の近隣の自治体で行われるので、準備状況から視察の方法でなく、一般見学の方法もとりました。特に、衆議院選挙の手書き方式と対比した特長を見学しました。

さらに、この選挙の投開票作業には、多くの問題があることが後日に判明してきました。投開票作業の最中に、電子投票機の内部を操作したこと、開票作業を複数回行ったことなどです。電子投票システムでは、あってはならないことを行なっていたことが後日に判明し、その信頼性を損なってしまいました。有権者から、異議申し立てを受ける経緯になりました。

2 神奈川県海老名市の選挙状況

海老名市の電子投票デモ見学

 海老名市の電子投票デモを見学する予定をたてました。これは、電子投票に先立ち、市役所やその出先に電子投票のデモ機を置いて、事前に住民の皆さんにトレーニングをしてもらおうと言う趣旨です。

 他の自治体でも同じような体制を取ってきましたので、数ヶ所のデモ機が置かれます。最も、空くまで「デモ」であるため、実際の立候補者名でなく、架空の人物や歴史上の人物などがその候補者名になっています。

 衆議院選挙は不在者投票で行う

 海老名市長・市議選の電子投票選挙を本格的に現地で見学しようとすると、自分自身が地元の衆議院選挙の当日投票は行えません。事前に、不在者投票を済ませました。

 この不在者投票というのは、昭和58年の参議院選挙の際、自分自身が比例代表選挙名簿の候補者であり、その全国遊説を行って最終日に地元に帰れない日程になっていたとき以来です。そのときは、住まいが福岡市中央区にあり、全国遊説中で福岡に寄ったときに、不在者投票をした記憶があります。私にとって、不在者投票は実に22年ぶりのことでした。今日では、その不在者投票の手続きが、ずっと容易になりました。

3 神奈川県海老名市の選挙運動状況と、投票所の準備状況

 選挙運動では、それほど電子投票に対する個別PRは行なわれていませんでした。選挙の方法に関しては、それは選挙管理委員会の領域と言う考え方からか、選挙の陣営からは、さほど問題とされていませんでした。後になって思えば、その是非がもう少しとわれるべきではなかったでしょうか。選挙の開票作業、及びその後の状況を考えると、その導入により、検討する課題があったように思いました。

 次のテーマでは、記述をよりリアルに表現するため、当時の記事を引用転載いたしました。
「電子投票準備見学と、取材の確保(町田市議 吉田つとむ)(03/11/15)」、と題した記事がそれに相当しています。(ただし、語句を1箇所訂正しました)

 電子投票準備見学と、取材の確保(町田市議 吉田つとむ)
 (03/11/15) 
電子投票選挙の準備が進む - 11/08-21:53
スリッパと退場命令 - 11/13-01:26
その日の見学者とTVカメラ - 11/15-00:00
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  電子投票選挙の準備が進む

 明日は神奈川県海老名市で市長・市議選挙があり、関東地区で最初の電子投票方式で行われます。もちろん、衆議院議員選挙も同時に行われますが、そちらは記名式の投票方式です。

 今日は、その海老名市では、電子投票選挙のための準備が進められていました。毎度のことで、今回もその見学に出かけましたが、現地でハプニングが起きました。

 この続きは、明日以降になりますが、次の記事で「スリッパと退場命令」のタイトルとして書き進めます。

  スリッパと退場命令

 この記事は、インターン生のレポートの回答と言う形式で、その趣旨を書き出しました。

 初めて、親切な海老名市選挙管理委員会職員に出会いました。(他の部署の職員で、応援に出てきている職員の人かも知れない)
 その海老名中学校の体育館では、投票所設置の開設準備をしており、私建ちが外から眺めていると、体育館の中で幾人もの人が見学をしているし、ビデオカメラまで回っているではないですか!

 私は自分の仕事と目的(町田市議会議員ということと、視察に来たこと)を話すと、親切にもスリッパを井尻さんの分を含めて、2人分を用意してくれました。しばらく、準備状況を見ていました。予習が足りず、ここの投票機が、スタンドアローン方式(単体機)でなく、サーバー・クライアント方式だということが、その日は十分に把握できないうちに、退去されることになりました。職員の人の電話を通じて、事務責任者直々に、「退去」を命じられました。

  その日の見学者とTVカメラ

 その日の海老名市立海老名中学校の体育館は、選挙の投票所設置で大変忙しかったのか、それともおおよその準備が進み、その準備をしておった方々は、ゆったりしていたのか、私はその投票所の開設準備をしている会場に、了解をして入ったわけです。決して、押し入ったり、こっそり入りこんだわけではないのです。

 選管事務局長さん お分かりでしょうか.

 その日は、総務省関係らしき人達と、この電子入札を落札した、NTTの関係者等が大勢入場しており、NTTの関係者は、TVカメラで.その設置状況を、すぐそばで撮影していました、私は、それを遠くから眺めていたに過ぎません。

 これだけの試みと、自信を持つのであれば、取材者にもその投票準備をしっかりと見せるべきでした.面倒を嫌って、取材を受け付けなかったのが、後々の問題を引き起こす事柄につながりました。(注:HPにアップする段階で、この段落に、語尾を整理)

4 神奈川県海老名市選挙の投票について

 以下の記事は、HP掲示板に書いた記事を転載引用しました。実際の投票状況を具体的に説明した内容と考えて、その方法をとりました。

海老名市の取材者への対応 - 11/13-20:11
投票台のあり方とプライバシー - 11/13-20:31
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海老名市の取材者への対応

 神奈川県海老名市では、11月9日に、電子投票方式の市長・市議選がありました。当日は、衆議院選挙、最高裁の国民審査も同じに行われ、住民と選挙管理委員会にとっては、多忙な1日でした。

 そのためか、電子投票選挙においてはいくつかのトラブルがあり、その開票では、選挙結果がなかなか発表されない、発表された確定数字が、後で一部訂正されるという事態までおきました。

 もちろん、私にとっては、他の問題に対する疑念のほうが、より強固にあります。別途、記述。

 ところで、この海老名市の電子投票視察では、他にトラブルがありました。それは、選挙当日のことですが、投票光景を撮影していた、視察取材者のビデオカメラを中止するように求められ、その撮影を取りやめる事態に至ったとのことでした。

 海老名市では、視察が行われるとことは、海老名中学校の1ッ個所のみでした.その中学校で、有権者から、「プライバシー上、TVカメラの撮影は認められない」との申し出があり、視察者が行っていたTVカメラの撮影を中止する事態になったそうです。

 しかし、関係者とその住民の人との考えの違いは、もともとTVカメラの撮影があるという表示がないので、その撮影中止を求めたとのことでした。

 であるならば、投票所入り口にその趣旨の文面を掲示しておき、どうしてもそのTVカメラ撮影を拒否した人は、その旨を入場する際に告げるように改善すれば良いことです。

 選挙管理委員会の方針が一貫しなかったことが、そうした事態を生み出したと思います。

投票台のあり方とプライバシー

 この神奈川県海老名市の電子投票では、その投票機を置く台の幅が大きくなっていました。投票機本体と、別に操作ボタンが余裕を持って置かれるため、その投票台の幅を広げたものと思います。

 その結果、投票者にとって、後ろの立会人や選管職員から、自分の手の操作が覗き見ることが出きる、と考えられたようです。

 そのはなしはもっともな話で、私もこの投票台を見て、投票者が投票する際に、脇から手の動きから推測できるな、と思いました。

 すなわち、電子投票機を置く台の幅は、あまり広げるべきではなく、最低限でも、後ろから手の動きが見えない幅とすべきです。

 また、福島県大玉村では、投票台を並べた後方には、スクリーン状のつい立を置いていたと記憶します。ここは、視察者の公開場所が、投票台とは側面に相当する方向に設置されていました。投票者に出きるだけ影響を与えないように努力をされていました。

 この福島県大玉村は、自治体の選挙に対する考えが、しっかりした自治体だと思いましたが、一方で、この海老名市はどうであろうか、上記のように考えました。

 投票者のプライバシーが、きっちりと保証されないといけない、と言うことは、基本中のきほんですが、それでは、撮影の合意をどのように得るか、これもきちんと対応すれば、協力者はどこかに出てくるでしょう。

5 神奈川県海老名市選挙の開票とその結果について

海老名市電子投票の問題点(集計編)(03/11/10(Mon) 23:27:19 作成)

 衆議院議員選挙の影に隠れ、日本で7番目の電子投票が行われていたことはほとんどニュースになっていません。しかし、開票の現地では、大きな問題を残して、開票作業が行われました。その一つは、開票結果の中間発表が大幅に遅れたということです。
 元来、電子投票の特徴として、その開票集計結果の速さが先ずあげられますが、この神奈川県海老名市では開票作業(午後9時40分)の後、ようやく午後11時の段階でした。その間に、開票作業の遅れは一切発表がありませんでした。メディアと選管とは、なにかもめている風でしたが、その説明も場内にはありませんでした。
 選管の発表データを見て、大きな疑問点は市議会議員選挙で、「電磁記録による投票の持ちかえりと思われる」とされる票の概念です。電子投票の特徴は、投票行為の終了後に投票カードを回収することによって、この「投票用紙の持ちかえり」ということを発生させないことが、その方式です。
 なのに、このよう大量の不明票に相当する投票を発生させた理由は、説明がつかないのではないでしょうか。

 私は、その時点で(午後11時30分頃)現地の開票会場を引き上げました。なお、その開票作業はさらに遅れ、それ以上の問題点が起きたとの情報もあります。現在、ささやかながら、その問題点を収拾しています。
 今回は、電子投票機は、NTT製の製品が使用されました。クライアント・サーバー方式(複数の投票端末機の投票結果を1台に集約する)とのことでした。
電子投票の集計結果の発表について(03/11/12(Wed) 16:29:16 作成)
(注:HP掲示板の記事で、個人宛の回答であるため、その氏名などの部分を削除しています)

 投票の方法ですが、「海老名市では、地方選挙では電子投票、国政ではマニュアル投票と、並行して二つのシステム」が行われました。電子投票選挙で行われていた市長・市議選の選挙結果の方が、国政選挙の方が後になるという無様な結果となりました.
 さて、一般に電子投票における中間発表と言うのは、手書き式の不在者投票分が一部開票しているか、その分がまったく開票されていないということを表わします。そのため、今までの例では開票開始後、30分ー1時間程で発表されています。今回は、その発表自体が開票開始後、約1時間20分後の行われというほどの遅れでした.

 また、今回の集計は、3-4台の電子投票端末機のデータを、1台のサーバーに保存するという、サーバー・クライアント方式で行われました。投票所の投票過程では、それほど多くの問題は生じなかったようです。(翌日の新聞記事を閲覧した結果。トラブル数は、全ての投票所で10件台)それが、集計過程に問題があったかどうか、それは一切不明です.なにせ、開票所で選挙関係者が大勢見ているのに、なぜ、開票結果の発表がなぜ遅れたか、そうした理由を一切説明せずに、その行為を続けました.そうなると、電子投票の集計結果になんらかの問題が発生したことは間違いありません。(一部、字句の整理をしています)

6 総括

投票所開設準備の非公開について

 今回の神奈川県海老名市の市長・市議選の準備作業(衆議院選挙も同時に行なった)は、一般に公開しないで行なわれました。関東圏では始めての電子投票であり、また、その電子投票方式がクライアント・サーバー方式(複数の投票機のデータを1台のサーバーに集約して、記録する方式)であり、その投開票の結果に注目をしていました。当然、その準備状況にも関心を寄せるのは当たり前のことでした。

いったん入場させたものを排除までして行なった投票準備でしたが、その結果に問題が起きれば、「非公開」とした措置までも疑いの対象とされます。他の例では、こうしたことはあってほしくない事件でした。

投票所の公開時間の設定の非合理性

この神奈川県海老名市の選挙では、視察者への公開時間が制限されました。投票は午前7時より、午後8時まで行なわれるもので、公開に時間制限を設ける意味がないはずでした。視察者は、その管理者に従うのみですので、それ以外の時間を無用に過ごすことになり、これまた選挙業務の結果が悪く、視察者に不評の輪をかける事態を招きました。


また、当たらしい課題で、衆議院選挙、最高裁裁判官の国民審査も同日におこなわれることになりました。その市長・市議選は、電子投票方式で行われますが、同時に行なわれた衆議院選挙では、手書き方式の投票となりました。これも、選挙従事者にとっては、大きな負担となるものと思われました。

複数選挙の同時実行と業務の多忙さ

なお、今回の電子投票では、町田市の近隣の自治体で行われるので、準備状況から視察の方法でなく、一般見学の方法もとりました。特に、衆議院選挙の手書き方式と対比した特長を見学しました。

誰しも、手書きの衆議院選挙の開票が遅くなり、電子投票の開票が早く終わると考えました。ところが、電子投票の開票が遅くなり、その説明も行なわない事態が続きました。

明らかに、開票の途中経過を説明するべきでした。それが出来なかったのは、投開票作業の最中に、電子投票機の内部を操作したこと、開票作業を複数回行ったことなどがあったからでした。電子投票システムでは、あってはならないことを行なっていたことが後日に判明し、その信頼性を損なってしまいました。有権者から、異議申し立てを受ける経緯になりました。

 確かに、手書き式の投票である衆議院選挙と、電子投票で行われた市長・市議選が同時に行われ、その収拾が大変であったことは自明のことです。しかし、それはずっと以前からわかっていたことです。そのための人員と費用と時間をかけた国政・地方の同時の選挙です。その結果で、住民の将来がかかっているわけですが、その自覚に欠けていたと言われても、排除できない多くの問題点を残した選挙となりました。

 さらに、電子投票式の投票システム自体への不審を生み、その信頼回復に莫大なエネルギーをかけさせる事例となりました。