会派視察報告(個人) 青森県六戸町・町長選電子投票選挙
(04/03/17) 

前書き

 青森県六戸町の町長選挙に関して、電子投票選挙の現地視察(2,004月1月17−19日)に、会派視察ですが、一人で出かけたものです。旅費などの公費負担があり、公式記録を提出しました。下記がその報告書の全文です。

 青森県六戸町町長選挙の電子投票とその現地視察(2,004年1月17-19日)
               自由民主党 吉田 つとむ

1. 視察月日 平成16年1月17日(土)−19日(月)
         ただし、19日は戻り日程。
2. 視察地  青森県六戸町
調査事項 1. 1月17日(土) 町長選挙の運動選挙状況、期日前投票の実施状況
                   電子投票の準備状況
          1月18日(日) 電子投票・開票の実施状況
 
<目次>
1 視察対象の概要
2 青森県六戸町長選挙の状況
3 青森県六戸町長選挙の期日前投票と、投票所の準備状況
4 青森県六戸町長選挙の投票について
5 青森県六戸町長選挙の開票とその結果について
6 総括

1 視察対象の概要

 日本で8番目の電子投票選挙が、青森県六戸町で実施されました。
青森県六戸町選挙管理員会HP
http://www.town.rokunohe.aomori.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC02000&Cc=7D239D10BC2&DM=&Tp=&IM=
 電子投票の案内がのっています。また、わかりやすいムービーで、投票のし方が掲載されています。

 なお、この選挙から、投票期日前の電子投票が実施されることになりました。それによって、不在者投票も電子投票で行うことが可能となり、選挙結果がよりスピーディーになります。

 なお、この六戸町で使用する投票機のタイプは、スタンド・アローン式(単体で記録する方式)の投票機が用いられることになっています。岡山県新見市、広島市安芸区、宮城県白石市、福井県鯖江市、及び福島県大玉村の合計5自治体で、スタンド・アローン式の投票機が使用されています。

 この間、岐阜県可児市と神奈川県海老名市の電子投票で使用された、クライアント・サーバー方式(複数の投表機の投票データ−を、ハブを通じてサーバーに集約する方式)は使用されません。 

 今回の電子投票視察では、電子投票の範囲が期日前投票(旧来の不在者投票――これを、当日投票と同じ扱いとし、その間に有権者が死亡しても有効投票とカウントする)にも及ぶ、初めての選挙となりました。投票データの管理に関して、より一層慎重さが求められる状況になりました。


2 青森県六戸町長選挙の状況

この町長選挙では、現職の吉田豊候補と、元職の苫米地繁雄候補が激しい選挙戦を演じました。現実には、この六戸町はこの選挙を最後に、周辺自治体との合併を控えた広域の自治体に変わっていくことになっています。

この報告書の性格上、この選挙候補者自体の評価は控えたいと思いますが、期日前投票制度が実施された時期に、電子投票選挙が行なわれ、その威力が最も発揮される機会となりました。(選挙の投票は、候補者受付が完了した翌日からとなり、その受付が従来と比べはるかに容易になりました。また、投票者が選挙の以前に死亡しても、その投票は有効とする方法に変更し、電子投票を期日前に行なうことが容易になりました。その機会をとらえて、この六戸町長選挙では電子投票を導入したものです。しかし、選挙の背景では、電子投票の実施自体もこの選挙の(影の)争点になっているとのことでした。このことは、選挙の関係者からお聞きしたものです。

 この間の選挙では、すでに選挙運動期間中に、約1割の有権者が投票しています。現実には、様々の選挙運動を見て投票するのでなく、それ以前に投票するべき、候補者を決めていると言うのが現実の姿と考えられます。

3 青森県六戸町長選挙の期日前投票と、投票所の準備状況

 町長選挙の運動期間は5日間となっているため、週の火曜日に始まり、期日前投票は水曜日から始まったとのことでした。役場内の2階の一室に、当日に投票できない有権者のための投票所が設置されていました。投票の受付から、投票台、立会人、投票管理者が狭い部屋で、丁寧な期日前投票の業務を行なっていました。

 この投票所には、午後の時間と午後8時の投票締め切り時間の2度にわたって訪問して、視察を重ねました。投票者は、この電子投票にほとんど抵抗感がなく、投票を済ませていましたが、これまでの模擬電子投票の成果が現れているようでした。

 午後8時きっかりに、期日前投票の投票受付が終了し、直ちに、電子投票機から電子記録媒体(コンパクトフラッシュ)の取出しが始まりました。まずは、電子投票機の鍵を開け、正副2枚の電子記録媒体(コンパクトフラッシュ)の取り出し、テープでそれを封印し、割り印が押されました。この光景は、電子投票らしからぬ工程ですが、移送中に、誰かがそのデータを読み取ることを排除したものです。実際には、その電子記録媒体(コンパクトフラッシュ)は、翌日の日曜日まで、別の場所に保管されました。私は、この光景を保管措置の直前まで見学していました。

 この六戸役場は、選挙の投票場所にも使用されていました。1Fロビーに投票場所が設置されましたが、役場の職員(投票管理者)の指示で、電子投票システムメーカーの社員がそれを搬入、設置を行なっていきました。その1台1台が、に、立会いにもとづき、起動実験が行なわれました。そのうちの1台は調子が悪かった様子でしたが、うまく起動できないでいました。メーカーでは瞬時に他の予備機種を使用したいと申し出ました。

 その取替え作業を含めて、約1時間で終了しました。なお、その電子投票機の電源は翌日まで入れたままにしておくとのことでした。理由は、冬場のため、機械の氷結を避けるとのことでした。

 実際の選挙の投票ができるためのソフトは、投票当日の朝にセットアップされます。(従来の選挙で、投票用紙は投票管理者やその職務代理者が、鍵のかかった保管用具に保管し、当日セットされている状況と似ています)

4 青森県六戸町長選挙の投票について

 選挙の投票を、視察指定場所の大曲小学校で見学しました。六戸町の中心部からは最も離れた地域の投票所でした。幸い、投票日は天候に恵まれ、選挙日和の1日でした。

 投票所の投票経過は、すべて順調であり、関係者もほっと胸をなでおろしているところでした。この選挙の前に、岐阜県可児市や神奈川県海老名市の電子投票でトラブルが起き、この電子投票を懸念する声もありましたが、そうした心配を一掃するかのような、投票状況でした。やはり、スタンド・アローン式(単体)式の投票機の安定性が証明されたようでした。

 午後8時に投票の締め切りが行なわれ、いずれの投票所でもトラブルがなく、その電子記録媒体(コンパクトフラッシュ)が、開票所に続々と持ちこまれました。

 全部で10箇所の投票所が設置され、そのすべてが電子投票で行なわれました。
 
5 青森県六戸町長選挙の開票とその結果について

電子投票分の開票では、記録媒体読込は4分弱で済み、11分後には集計が完了しまいた。また、今回は期日前投票分の大半が電子投票で行なわれたため、特に時間がかかる手書きの投票分が少なくなっていました。そうした結果、開票宣言後23分で選挙結果が確定しました。

 この町長選挙では、現職の吉田豊候補が4002票の支持を得て、元職の苫米地 繁雄候補の3191票を抑えて、当選を果たしました。 なお、この選挙の投票者数は、計 7193票であり、81.37%の高投票率でした。ただし、この地域としては、特別に高い投票率とは言えない結果です。
ちなみにその内容は、有権者数は8,917人、投票者数7,256人、棄権者数1,661人で、投票率は81.37%の結果でした。

6 総括

 期日前投票に電子投票が実施できるようになった最初の選挙となった、青森県六戸町の町長選挙の投開票作業は、実にスムーズに進展しました。

 投票が順調であったその大きな要因は、そのシステムの安定性が定評あるスタンド・アローン方式(単体の投票機に投票したデータが記録される)のものであったためでしょう。その意味では、受注者がこの電子投票では最も定評があるところであったことも少なからぬ影響があったものと考えます。

 また、この電子投票に際して、事前の電子模擬投票を衆議院議員選挙で平行して行なっていたことも、全体の流れをスムーズにさせた影響があったと思います。上記のように、投票率が81.37%と非常に高率の得票結果を示しています。電子投票の導入に、特に障害がなかったことの反映でしょう。

 今回、不在者投票が緩和され、期日前投票に切り替わりました。立候補翌日から、投票の受付となり、従来のように「封」をしないで投票用紙を投票箱に入れる方式に変わり、電子投票では選挙期間中のものが、そっくり通常の投票方式とまったく異なった方式に変わりました。そのデータは、最終日まで積み重ね、最後に投票日分の投票データ記録分と一緒に「読み取り機」にかけられ、投票結果が一瞬にして出ることになりました。

 選挙の開票では、電子投票に切り替えた作業部分が単調に進んでおり、この電子投票の普及になんの障害もないと考えられます。果たして、そうした合理性ばかりを追求するべきものか、はたまた電子投票であっても、国民(住民)がその代表者を選ぶ際に、どのような要素を追求するか、まだまだ解明する必要があります。

 しかし、ひとたび順調に進展した、電子投票の歩みはとどまるところを知らないはずと考えます。