会派視察報告(個人) 京都市東山区・市長選電子投票選挙
(04/03/17) 

前書き

 京都市の市長選挙に関して、電子投票が行われた電子投票が行われた東山区を中心に、選挙の現地視察(2,004月2月7−19日)に、会派視察ですが、一人で出かけました。旅費などの公費負担があり、公式記録を提出しました。下記がその報告書の全文です。

 京都市東山区・市長選電子投票選挙とその現地視察(2,004年2月7-9日)
               自由民主党 吉田 つとむ

1. 視察月日 平成16年2月7日(土)−9日(月)
         ただし、9日は戻り日程。
2. 視察地  京都市東山区、他市内

調査事項 1. 2月7日(土) 市長選挙の運動選挙状況、期日前投票の実施状況
                   電子投票の準備状況
          2月8日(日) 電子投票・開票の実施状況
 
<目次>
1 視察対象の概要
2 京都市東山区の選挙状況
3 京都市東山区の期日前投票と、投票所の準備状況
4 京都市東山区の投票について
5 京都市東山区の開票とその結果について
6 総括

1 視察対象の概要

電子投票としては全国で9回目となるが、この期日前投票(不在者投票の開始日が、立候補受付の翌日からとなる)が実施される2回目の選挙でした。また、政令指定都市の選挙では、広島市(安芸区)以来の選挙で注目をされていました。広島の場合と同じく、東山区という一箇所の区で電子投票が実施されるため、その他の区と選挙結果でどのような相違点があるか、そのことに興味が集まるものでした。

 そのため、今回の選挙の視察では、投開票当日の視察以外にも、前日の「視察」が目立っていました。この点、青森県六戸町長選挙とは、大きく異なっている点です)また、選挙運動期間が、政令指定都市では14日間と一般市の倍の期間となっており、期日前投票の配分が極めて多くなっています。結果的に、期日前投票期間は、13日間となります。

 事前の案内で、期日前投票の締め切り状況が視察できるとは広報されなかったためか、2月7日午後8時前後の取材は思ったほどの人数ではありませんでした.そうした中で、東京都町田市選挙管理委員会職員の姿は、身ひいきもあってか、その撤収状況まで見学するものであり、どのような報告書が作成されるか、楽しみです。

 当初の予定では、この市長選挙における、「紙に書く投票」と、「電子投票選挙の比較」も検討していましたが、現地での状況で、私は、その点の取材視察をほとんど行なっていません。なお、その点に関しては、杏林大学総合政策学部の岩崎正洋助教授とそのゼミの皆さんによる、選挙の出口調査の資料が最も優れた資料です。

 また、選挙運動において、一般にある紙に書く方法と、電子投票の選挙では、東山区での選挙運動で、特別に目立った点は感じられませんでした。

2 京都市東山区の選挙状況

 今回、電子投票自体に関して、なにか問題点はなかったか、自分ではとくに気付いた点はありません。電子投票メーカーは、あくまで1名がその投票所に控えていただけでした。(これは、選挙を毎回観察していると判ることです)全て、市の職員と選挙の担当者(市民)が、有権者を誘導していました。以下は、投票所の設置で気付いたことです。内容は、以前にネット上に書いた記事を転載引用しています。そのほうは、よりリアルと考えました。

<目次>
投票所における投票者の導線 - 吉田 つとむ 02/08-17:19 No.3948
電子投票機器の配線について - 吉田 つとむ 02/08-17:31 No.3949
補注(投入メーカーの仕様) - 吉田 つとむ 02/09-16:44 No.3959
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タイトル:投票所における投票者の導線

 東山小学校における投票中に、投票者の行動で思いがけない事態が起きていました。

 それは、投票者が投票を済ませ、電子投票のカードを抜き取ったあとで、そのカードを「投票箱」に入れそうになることでした。

 その投票箱は、点字投票などを入れるものですが、配置された場所が、電子投票の投票機を使用した後で体を移動する目線の延長上にあったため、幾人もそうした行動をとりそうになりました。

 電子投票の発券カードは、何回も使い回しをするため、そこで「投票箱」に投入されたら、その後の投票ではカードの再使用ができなくなります。

 選挙の投票では、「受付」−「発券」−「投票」−「券の返却」が一連の行為であり、「券の返却」が行われる段階で、「投票箱」に投入されてしまうと、トンでもないことになります。

 この東山小学校では、この「投票箱」の位置を少しずらすことにしました。
(注: この問題は、単に導線を再点検することでも解消できるでしょう。 ただし、電子投票が一般化した場合、現在の投票箱は果たしてどのように取り扱うべきか、再検討の余地があります。
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タイトル:電子投票機器の配線について

 電子投票では電子機器を使うわけであり、途中で電源が切れることは一切避ける立場です。

 投票機は数十分間、電流が切れても、バッテリーの電力で作動できるとのことでした。

 しかし、投票所内の電子機器の配置合わせて、コードを準備していますので、先のメディアの皆さんのように、場内を歩き回る際に、発券機などのコードを足に絡ませる可能性が考えられるところです。

 余計なお世話かもしれませんが、気になったところです。
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タイトル:補注(投入メーカーの仕様)

 投票機は数十分もの間、電流が切れてもバッテリーの電力で作動できるとしたのは、この京都市長選挙などに投入されている、電子投票普及協業組合(EVS)の仕様の場合のことでした。

 全ての電子投票機が、長時間の停電に対応しているわけではありません。

3 京都市東山区の期日前投票と、投票所の準備状況

 さて、京都選挙管理委員会の話によると、前回の初日の不在者投票数は1,672人と言うことであり、今回は1,172人と言うことでした。その前回の開始日が日曜で、今回は(1日減るため)月曜日となった分、その投票人数が減っている可能性もあるとのことです。さらに1日、不在者投票期間が減少していることが、この先どのような影響を与えているでしょうか。

 なお、期日前投票制度における2日間の投票人数を見てみると、下京区では前回192人で、今回は121人となっており、かなりの人数で投票者の減少がみられます。他方、電子投票を行っている東山区では、前回で132人ですが、今回は152人に増えているとのことでした。

 他の区域でも、一般に投票数が減少しているようであり、東山区の増加が目立っています。この投票人数の推移がどのような方法に向かうか、大変興味があります。(この記事部分は、視察に行く前に、インターネット上の書き込んだ記事をほとんど転載利用しています。内容が重複するものもありますが、リアルな感じを残すためのものです)

 以下は期日前投票の取材視察を、当日にネットに書き込んだ記事を転載したものです。ここでは、そのまま引用転載しました。日時も含めて、そのままです。町田市の選挙管理委員会職員の人が、2名視察に来ていました。そうした中で、もっとも几帳面に取材をしていました。
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本日は京都の電子投票視察- 吉田 つとむ 02/07-19:38 No.3940

 本日は京都市長選挙の電子投票視察に来ています。一度、期日前投票の実施状況を見学しましたが、その際、たまたま町田市選挙管理委員会職員の視察者と同一時間に到着しました。当方は政治家ですので、目ざとく先に声をかけました。

 この電子投票は、京都市全域で行われるのでなく、東山区と言うところのみが電子投票方式で行われるものです。今回は視察団が大勢おられるようで、すでに百数十名の申し込みがあるとのことです。

 本日は、期日前投票(不在者投票)の最後の日にあたりますので、私は再度、その締め切り状況の視察にこれから向かいます。

 さて、この時間の視察者はどれくらいそろっているのでしょうか。
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期日前投票が終了 - 吉田 つとむ 02/07-21:46 No.3941

 期日前投票が終了しました。
 電子投票を行っている京都市東山区区役所の選挙管理委員会では、午後8時に期日前投票を締め切りましたが、その5分くらい前の時間にかけこみで投票にこられた人が最後の投票者でした。

 この締め切り時間に、外部から見学に訪れた視察者はきわめて少なかったのですが、町田市職員は2名とも最後まで、その締め切り状況を見学していました。(この事とも、明記しておきます)

 こうして直接訪問すると、「投票者は何名だったか。前回との比較はどか」などなどを聞きたいのですが、片付け作業中には、口を挟みにくいのが実情です。
 
 ともあれ、期日前投票の投票データはケースに収められて、収納場所に鍵をかけてしまわれました。先の投票所は狭い会議室であったことから、収納作業を実際に見たのは最後の最後の段階でした。

 この期日前投票は、順調に進んでようでした。メーカーの人たちによる電子投票機材の片付けも終了し、最後は投票者と有権者の名簿チェックが行われて、明日の投票日に備えます。この作業は、応接室風の部屋で行われていたはずですが、私たちはその状況を遠くからうかがっていました。

 その部屋があき、その作業も総て終了した模様でしたが、9時近くになっていました。このタイミングで、我々は総て引き上げました。

 明日は、午前7時から投票が行われます。すでに、投票所の設置準備は完了している模様でした。東山区役所もその投票所の一つになっています。

<目次>
本日は京都の電子投票 投稿者:吉田 つとむ 投稿日:2004/02/07(Sat) 19:37 No.3901
期日前投票が終了 吉田 つとむ - 2004/02/07(Sat) 21:44 No.3902
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本日は京都の電子投票 投稿者:吉田 つとむ 投稿日:2004/02/07(Sat) 19:37 No.3901

 本日は京都市長選挙の電子投票視察に来ています。一度、期日前投票の実施状況を見学しましたが、その際、たまたま町田市選挙管理委員会職員の視察者と同一時間に到着しました。当方は政治家ですので、目ざとく先に声をかけました。

 この電子投票は、京都市全域で行われるのでなく、東山区と言うところのみが電子投票方式で行われるものです。今回は視察団が大勢おられるようで、すでに百数十名の申し込みがあるとのことです。

 本日は、期日前投票(不在者投票)の最後の日にあたりますので、私は再度、その締め切り状況の視察にこれから向かいます。

 さて、この時間の視察者はどれくらいそろっているのでしょうか。
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期日前投票が終了 吉田 つとむ - 2004/02/07(Sat) 21:44 No.3902

 期日前投票が終了しました。
 電子投票を行っている京都市東山区区役所の選挙管理委員会では、午後8時に期日前投票を締め切りましたが、その5分くらい前の時間にかけこみで投票にこられた人が最後の投票者でした。

 この締め切り時間に、外部から見学に訪れた視察者はきわめて少なかったのですが、町田市職員は2名とも最後まで、その締め切り状況を見学していました。(この事とも、明記しておきます)

 こうして直接訪問すると、「投票者は何名だったか。前回との比較はどか」などなどを聞きたいのですが、片付け作業中には、口を挟みにくいのが実情です。
 
 ともあれ、期日前投票の投票データはケースに収められて、収納場所に鍵をかけてしまわれました。先の投票所は狭い会議室であったことから、収納作業を実際に見たのは最後の最後の段階でした。

 この期日前投票は、順調に進んでようでした。メーカーの人たちによる電子投票機材の片付けも終了し、最後は投票者と有権者の名簿チェックが行われて、明日の投票日に備えます。この作業は、応接室風の部屋で行われていたはずですが、私たちはその状況を遠くからうかがっていました。

 その部屋があき、その作業も総て終了した模様でしたが、9時近くになっていました。このタイミングで、我々は総て引き上げました。

 明日は、午前7時から投票が行われます。すでに、投票所の設置準備は完了している模様でした。東山区役所もその投票所の一つになっています。

4 京都市東山区の投票について

今回の京都市長選挙の投票で、電子投票を行った東山区の投票率は、全区中で第1位をしめました。今回、電子投票の取材で視察に来た意味があったと考えます。前回の投票数では、中位の順位であったものが、トップの得票率になった意義はきわめて大きいと考えます。因みに、結果は次の通りです。
行政区     有権者数   投票者数  投票率   前回投票率
京都市全体  1,134,620   437,689   38.58    45.90
東山区       35,667    15,520   43.51    45.63

 ご覧のように、東山区の前回投票率は全区平均並でしたが、今回は全体の投票率が大きく低下するなかで、平均を5%も上回り、全区でトップの投票率を達成しました。

5 京都市東山区の開票とその結果について

 今回の市長選挙では、現職の桝本頼兼氏が、多数の政党・団体の推薦を受け、当選しました。その結果は、次の通りです。

全区合計東山区
桝本頼兼
231822
8962
広原盛明
174847
5465
新井信介
25090
899

 この東山区の選挙結果に関して、
 選挙管理委員会の発表は、次のようでした。

          計
 8847     115   8962 
  884      15     899
  5425      40   5465
         15156     170   15326

電子投票 紙の投票合計
ますもと頼兼
8847
115
8962
新井  信介
884
15
5465
広原もりあき
5425
40
899
無効票
投票総数
15156
176
15332

<開票結果の発表時間に関する考察>
選挙結果の発表責任と権限 - 吉田 つとむ 02/11-12:26 No.3971

 今回、京都市長選挙の東山区の開票において、その発表が遅くなったのは、次のように行ったいた方法が問題です。

 東山区で開票作業をして、そこで確認作業をするのでなく、その結果を市の選挙管理委員会にFAXで送信しい、その内容確認をしていたためです。

 京都市は政令指定都市であり、東山区のようなそれぞれの区には、各選挙管理員会があり、そこで結果の確認と発表を行うのが通例のはずです。

 電子投票の開票作業が終了した時点までは、マイクを通じてその経過を詳細に案内していました。

 不在者投票部分の紙の投票用紙の開票作業以降、まったくその進行状況に関する場内発表がなく、開票作業の人員が場内で立ったままの状況でした。(仁王立ち状態と表現した人がありました)その間にまったくなんの説明もなく、場内は「電子投票に間違いがあったのではないか」、と言う心配がただよっていました。

 最期に投票結果が発表された時にも、結果発表が遅れた説明がまったくありませんでした。もともと、この京都市では、区の選挙間委員会の業務に、「選挙の開票結果数値確認」の権限を持たせていない可能性もあります。そうであれば、そのことの方がより不自然です。

 上記のように、開票の結果発表が遅くなった理由は、公式には今もって説明されていないのではないでしょうか。

 なぜなら、今回の問題は、選挙の投開票結果をだれが確認するか、「区」なのか、「市」なのか、と言う電子投票自体の問題ではない次元の内容でした。

 こうして、今回の問題を、インターネット情報として情報発信していますので、それぞれの関係者が受け止めてくれるでしょう。

 全国から100名以上の選挙関係者が視察見学していましたが、ほとんどの人は、その「遅れ」を疑問に思って岐路につぃたでしょう。

 そうしたなかで、いくつかの自治体の選挙管理委員会職員の人達が、この吉田つとむHP(電子投票記事)を見ています。そうした選挙管理委員会職員はなにも語らずとも、今回の問題点は承知してくれるはずです。

6 総括

電子投票と一般選挙の有権者における比較

 また、選挙運動において、一般にある紙に書く方法と、電子投票の選挙では、東山区での選挙運動で、特別に目立った点は感じられませんでした。もっとも、この点では、限られた日程での視察では、細かい東山区の選挙運動の実態を知りうる点まで到達しうることが困難であることが最大の理由です。実際には、「電子投票制度」に限った広報宣伝が行なわれていたことを、全否定する根拠の情報は収集していません。

 電子投票の視察では、その投票自体に対する視察を実施する時間帯は、かなりの時間を割いています。もちろん、そのトラブルや失敗例に関心を寄せて取材をしますが、投票者の電子投票に関する出口調査、メディアの取材などを、まじかに見聞きするケースがあります。

「電子投票はやりにくくないか」、「操作がわかりにくくないか」などと、メディアが聞きたてるが、大半の有権者は「簡単だった」と答えています。一般の生活で、モニター場面に接することや、キー類をタッチ操作する機会が、極端に多くなったことが最大の理由だと考えます。

電子投票選挙、期日前投票の取り扱いについて

 電子投票としては、全国で9例目となるものでした。しかし、岐阜県可児市や神奈川県海老名市と相次いで、電子投票の運用で、機械がストップしたり、その投票機の取り扱いに不手際があり、有権者に対して、投開票結果に不審を招く事例がおき、選挙の異議申し立てまで起きていました。

 そうした中での電子投票選挙でしたが、青森県六戸町長選挙、今回の京都市長選挙(東山区のみ)と、投開票で順調な結果が出ました。特に、期日前の投票期間が長かったため、その間の電子投票機の運用が一部に懸念する声がありましたが、その導入システム機種と受注業者が実績か、大半では心配が起きていませんでした。

 ただ、記事前投票の全期間に、メーカー担当者がこの記事前投票所に、張り続けていないといけないとなると、この電子投票の全国的・全体的な普及は困難です。投票管理者・職務代理者の範囲で、通常の運用で出来ないといけない課題と考えます。

電子投票の投票所の導線について

 電子投票の実施が9件となり、毎回取材しているため、視察項目にも余裕が出てきました。今回は、投票所における投票順路、電子投票のための配線の具合にも、目線を配ってみました。

 内容は、上記の記事の通りです。

選挙結果の発表について

 電子投票の信頼性に関しては、京都の導入機種がスタンド・アローン方式(単体式)のもので、電子投票選挙でトラブルを起こしているクライアント・サーバー方式(複数の投票期のデータを1個のサーバーに送り込む)ものとの相違を見せました。

 電子投票の運用では、まったくトラブル情報がなく、しかも結果のデータもきちんと一致しており、電子投票の結果の正確性、速報性が証左されました。ただし、京都市では結果発表の制度に問題が見受けられました。(具体的には、上記の個別記事をご覧ください)

 2004年には、電子投票が参議院選挙にも適用される見込みですので、将来に向けた期待が持てます。