住所変更証明書等に関するデータの保存期間とその発効について
(03/10/2) 本会議一般質問(2003年9月分)
 
<前書き>

 この文章は、11期インターン生の川戸裕美子さんが作成してくれたものです。川戸さんは、私が収集した資料で先ず質問の原稿を作成しました。私は、その原稿の趣旨にそって質問を行いましたが、毎回のこととして原稿を持たないで壇上にたっています。川戸さんは、傍聴席でメモを取り、以下の記事をまとめました。

こうしたスタイルまで、インターン生がまとめることはまれですが、充実したインターンシップを実施する上で、試みとしました。いずれにして、この文書を含めてその責任は、吉田つとむが負うものです。

<見だし>
<質問の目的>
<質問要旨>
<答弁内容>
<評価>
<参照: 質問原稿第一原稿>

<質問の目的>

「住所変更証明書」という、市民課で発行される書類があります。これは“土地区画整理”や“住居表示”などにより、住所の変更がなされた際、その住所の変更事実を証明するものです。実際には次のような場合に、住所変更証明書の発行が必要となります。

住所の変更が行われた後でも、土地登記簿上の住所を書き換えず、旧住所で登記されたままのものがあります。このような土地につき相続や土地売買を行う場合、現在の住所との関連を証明しなければなりません。

しかし、市の窓口でこの証明書を発行してもらえなかったという市民の声を聞き、なぜ証明書を発行することができなかったのか、その理由と事実関係について質問を行いました。

<質問要旨>

 上記のとおり、「住所変更証明書」を市民課の窓口で発行不可とされる市民がおり、なぜ発効できないのかという理由と、この証明書が発効されないことによって市民が不利益を受けることがないか、その事実関係を問いました。

<答弁内容>

「住所変更証明書」のデータの保存期間は住民基本台帳法で5年間と定められており、住所を変更して5年を経過したものに関しては、そのデータ自体が廃棄されてしまうために証明書を発行することができない、ということでした。

住所の関連性を証明する手段としては、住民票・前の住所の住民票除票・戸籍附票もありますが、数回住所を変更したり他の自治体に転居した場合等に、どうしても住所の連続性を証明することが困難な場合があります。

このような場合でも、代替策として“不在住証明書”および“不在籍証明書”の発行をすることによって、土地の贈与や売買の手続きを進めることができます。

また、住所の連続性が不明確なために生じる市民の不利益としては、登録免許税の課税等があります。これは登記名義人の変更登記を行う際、不動産の個数に応じて掛けられる税です。

<再質問要旨>

不在住証明書は、元々“人が住んでいなかった”という証明であり、“住んでいた”事実を証明したいという意思に反するものであると考えられます。そこで、事実と“矛盾”する証明書の発行を代替策としている現況について、果たして妥当と言えるのか、市の見解を問いました。

世田谷区においては、住所変更証明書のデータ保存期間である“5年間”が経過した後も証明書の発行を行っています。これも踏まえて、町田市の対応をどう考えるかその見解を求めました。

また、住所変更証明書の発行がされなかった後、市民に対してこれに関する説明を十分に行う等、窓口の対応を充実させるよう主張しました。

<答弁内容>

 不在住証明については、根拠であるデータが存在しないため仕方がない、という国の解釈論上このような対応をせざるを得ない、ということでした。

 世田谷区の状況については現在把握していないので、今後調査を行ったうえで、検討を進めていくということです。

 窓口の対応については、市民の方々が気持ちよく利用できるよう、サービスの向上に努めていきたい、とのことでした。

<評価>

 今回の「住所変更証明書」に関する質問は、土地の登記変更を行うなど、ごく一部の市民に限って関係する質問でありました。また、これに対する現在の市の対応は、法律に準じたものであり、“不在住証明書”という一見矛盾した手続きをとっていても、制度上は“正しい”と解釈せざるを得ません。しかし一部で不利益を被っている市民の存在する以上、これを見過ごすわけにはいきません。

 再質問の中では世田谷区の状況を紹介し、これを踏まえた市の見解を問いました。これについては、市が詳しい状況を把握していなかったために、内容に踏み込んだ答弁を聞くことはできませんでした。世田谷区では、データ保存期間経過後も自治体が独自にデータを保管しているものと考えられます。今後は市の調査を待った上で、世田谷区のようなサービス実施の検討を見守ることになります。

<参照: 質問原稿第一原稿> 

 以下は、インターン生の川戸裕美子さんが書いた、一般質問の原稿第1稿です。とりあえず、掲示板にアップしたものを、以下に転載しました。

 これはあくまで質問の予定原稿であり、私自身が今から、その内容を確認するものです。質問の分量としては、かなりの分量があります。また、川戸さん自身も、その内容をもう少し検討したいと言っている段階のものです。

ーーー以下、質問原稿第1稿ですーーーーーーーーーーーーー
町田市議会定例会 (一般質問)

 住所変更証明書等に関するデータの保存期間とその発行について

1(1) 具体的問題点
 市による「町名地番整理」により、住所表示の変更をすることがあります。私は現在、成瀬というところに住んでいるのですが、成瀬では昭和61年にこの地番整理が行われ、この時住所が「成瀬の800番地37」から「成瀬が丘の1丁目14番地12」というように変更されました。ここで実際にどのような問題がおきているのかについてお話します。住所変更が行われた数年後、以前の住所が今はこのように変更されました、というような変更の証明書を市で発行してもらおうとしたが「その証明書は発行できない」と言われたそうです。この証明書は市民課で発行してもらえるものですが、市民課の説明によれば、「住所を変更して5年を経過したものに関しては、そのデータ自体が廃棄されてしまうために証明を出すことができない、」からとのことでした。結局その方は正式なかたちでの証明書を受け取ることができずに帰って行ったわけです。その後、私は改めて市民課のほうに詳しいお話を伺いに行きました。なぜ5年でデータが廃棄されるのかについては「住民基本台帳法」でここのように規定されており、市の職員としてもこの法律の規定どおりに職務を執行しているとのことでした。とりあえずは私が把握する一連の事実を述べただけなので不備な点もあると思いますから、そのへんを踏まえて現状はどのようになっているのかということをお聞きします。

 (2)不利益の内容
 では、この住所変更証明書が発行されないために、実際にどういう場面でどのような不利益が生じてくるでしょうか。大半は土地の相続や売買によって、その土地の登記名義人が変更されるような場合に不利益が生じることがあります。詳細について触れる前に、少し前置きをします。住所変更がなされた場合、住民自身が変更の手続きをするものと市役所や法務局が職権でその変更の書き換えを行うものとがあります。例えば、住民基本台帳や戸籍簿等は市役所が書き換えます。これに対して、土地登記簿や建物登記簿は、表題の所在欄に関しては法務局が職権によって新しい地番に書き換えますが、所有名義人などの所有者の住所に関しては本人の申請があるまでは変更されません。もしこの時に所有名義人の住所変更を本人が行っていなければ、登記申請の際の住所と登記されている住所が異なったままになり、住所の連続性を証明する必要があります。
 最も簡単な場合は住民票及び前の住所の住民票除票で間に合うことなのですが、住所変更や他の市町村へ転居した場合には従前の住民票の除票がとれないことがあります。これについては、住所変更証明書と同様にその保存期間が5年間とされているためです。
 では、住所の連続性を証明する書類が発行されない場合にその土地の売買や相続はできないのかということになりますが、現実的にこれは可能です。これを可能にする手段はいくつかあるので、手続き上不利益が生じるものに関してのみ述べたいと思います。まず登記名義人の変更において、土地の住所の連続性を証明できない時でも、登記所では他の関連書類から判断した上で前後関係はある程度不明確のまま登記の手続きが進行されます。登記所は住所移転と登記簿の記載の前後関係について調査を行う義務はないので、そのまま登記が進められます。このように、売買や贈与などの所有権を移転する場合などで、登記簿上の住所と現在の住所が異なっている時は「登記名義人変更登記」を行います。この際、登記名義人の登録免許税が発生するのです。
 登録免許税については「登録免許税法」に規定されており、基本的に登録免許税は、市が個別に実施する「住居表示実施」や「名称地番変更」がなされた場合には、登録免許税は免除されます。しかし、このように住所の連続性が不明確な場合においては、課税の対象となってしまうのです。登録免許税は原則として不動産の個数×1000円となっており、この部分が市民の負担としてかかっています。

2 他の自治体での対応
 世田谷区では、住居表示を実施した後5年を経過したものであっても、その住所変更の証明書を市民に発行しています。実際に、昭和30年台に実施された住居表示の証明を今年平成15年に発行しているという事実も、聞いています。

3 町田市の改善策
 今まで住民の実利益での負担についてみてきましたが、これは住所変更の証明書を市で発行できれば解消されるものです。変更証明書の発行によって、土地の売買や贈与の際には、手続きをスムーズに行うことができますし、何よりも住民の負担や利益上の損が生じるということはありません。また、公の証明書がない場合の登録名義人の変更登記は、書類上から登記官の判断が下されたといっても、100パーセント信頼して行うことが出来ないような時もあり、絶対にトラブルが発生しないとも言いかねないでしょう。市ではこの5年という期間を経過した以降でもその変更の証明書が出せるようにするべきだと思います。過去のデータを正確に保存し、必要に応じて取り出せるシステムを講じるべきではないでしょうか。

参考資料
住民票のコンピュータ化
 町田市では、平成元年度から住民票のデータをコンピュータで取り扱うこととになりました。この年の11月27日、コンピュータの導入によって住民票は一斉に“改製”され、 新たに作りかえられています。改製が行われた住民票には、現在の新しい住所のみが住所欄に記載され、以前の古い住所は表示されません。このため、途中地番整理などが行われていたとしてもこの間の住所については抜け落ちてしまっているため、改製後の住民票からは判断できないということになります。ちなみにこの間の住所に関するデータは保存期間である5年間は存在しますから、平成6年の11月27日まではそのデータが保存されていたという計算になります。
(以上) 
 2,003年9月6日、数値を1節部分の入れ替え(吉田)