● 住民投票(条例)の是非について(一般質問)

◎ (全体の要旨)なぜ、住民投票を一般質問のテーマに設定したか

 今年は、住民投票の実施に関して、大変大きな話題がありました。徳島市において、吉野川の可動堰建設の是非に関する住民投票があり、圧倒的な多数でその建設を否定する考えが支持されました。得票数が有権者の過半数に達しなければならないと言う極めて厳しい条例でありましたが、それをもクリアーしての成立でした。地方自治体において住民意識の変化であり、行政と議会と住民の関係を見直す結果につながると考えました。

 もう一つの考えは、地方分権の拡大に伴う事柄です。市町村などの地方自治体に対する国や都道府県の権限が「地方分権」の考えによって、町田市などの自治体では、行政の仕事分野と取扱量が増大し、議会で審議する事項も合わせて大きくなってきます。従来より議員数が少なくなることを考えると、議会が従来通りのことをやることは困難となり、議会の機能を簡素化することが必要となります。その方法として、全部議会で行っていたことを、住民投票などの住民自治で行う方法を取り入れるとの観点が生まれてくるでしょう。

 もちろんのこと今すぐに、町田市で住民投票が実施されることは考えられませんが、その条例を用意しておくことはそれなりの意味をもっていると考えます。たとえば、町田市が政令指定都市を目指すとすれば、となりの多摩市や八王子市などと一緒になるのか、神奈川県の相模原市と一緒になるのかの判断を必要とします。市長が議会に提案するか、議会が決議をして、さらに条例化を進めるかの方法が一般的に考えられます。しかし、そのようなテーマこそ、住民投票を実施するべきでは対象ではないかと考えています。なぜならば、町田の住民は、「多摩地域の住民」として生活をしていますが、一方で、隣の相模原市と政財的・文化的一体感を持っているからでもあります。

 本議会の一般質問でこの課題を取り上げたのは、インターン学生が興味を示してくれた内容でもあったからです。インターンの村上さんが、その一般質問を行うための元原稿を作成してくれました。村上さんは、その原稿作成のため、市立図書館の図書とインターネットを利用して、資料を収集・整理してくれました。村上さんは、図書館で借りた図書の文中に、旧堺地区(町田市は5箇町村の合併で出来た都市で、そのうちの一つが堺村)で起きた学校開設に伴う住民投票の例を発見してくれました。

 私の一般質問は、その基本としたものは村上さんの書いてくれた原稿です。実際には、自分なりの言葉に代えた上で、ノー原稿の質問としました。せっかくですので、下段の中で村上さんの元原稿を参考添付として紹介します。





◎ 見出し

  1 町田市に住民投票条例は必要か?

  2 議員にとって、マイナスでは無いか?

  3 過去の例を挙げる

  4 地方分権は、住民自治を進める

  5 将来的な予想

  6 参考添付 村上さんの原稿 (住民投票についての質問―下書き)

 


1 町田市に住民投票条例は必要か?

 現在、徳島県吉野川第十可動堰化の問題を受け、各地で住民投票の是非について様々な意見を耳にします。住民投票は、住民が一定の事項について直接投票で決定を行う制度です。住民がこの制度を推進する理由は、議員任せではなく、自分たちの意思をストレートに反映させたいという意思の現れです。住民全体の意思を直接確認できるという点で優れた方法ですが、一方、首長や議会が本来果たすべき責任の回避や議会の立場がなくなってしまう恐れがあるという批判も出ています。町田市でも、いつ住民投票条例が必要とされるか分かりません。本当に、住民投票は有効なのか、住民投票条例は必要なのか、この議論はこれからの大きな課題となるでしょう。

 条例成立の可能性は? 市長に住民投票の是非について意見を求めました。市民参加を求めるなら、局部的な住民の意見である住民投票よりも公聴会などで住民の意思を調査し、市長、市議が決定をすべきだというのが市長の意見です。 市長にとって住民投票は、市民の意見を反映する方法として有効な手段だとは考えていないようです。町田市で、条例成立の可能性は、今のところなさそうです。 (傍聴席で聞いていた、インターン 村上さんの文章を使用)


    
2 議員にとって、マイナスでは無いか?

 「住民投票」と聞いて、一番に拒否反応を示すのは議員でしょう。ある意味では自分の権限が奪われるのではないか、議員の存在が脅かされるのではないか、等々の疑問を議員が抱くのは当然です。国の憲法改正にしても国民投票を前提にしているわけですから、地方自治体の根幹に関わることを住民が直接に決めることは、なんら議会や議員の存立とは別の事柄だと思います。

 選挙に際して、地方議員を選出する要素は様々であり、ある時は全てを託したと考えられるし、別の面では、住民に関して重大な影響を与えることなどは、住民自身で決めたいとする考えが起きても何に不思議でないことです。私自身、なんでも住民投票でやればよいと考えるのでなく、議会と住民とはそのような緊張感を持つものだと理解しています。

 つまり、住民投票の制度は条例として整備するが、実際には行政や議会が健全に機能することにより、投票が実施されることはめったに無い。というスタイルが、私の考える地方自治のあり方です。

 

3 過去の例を挙げる

 今回の一般質問では、「町田市にとっては、住民投票などまったく関係ないことだ」という考えを払拭する、あるいはゆるやかに考えてもらうため、町田地域で住民投票が実施された例を照会しました。旧五ヶ町村が合併して出来たのが町田市ですが、合併以前の時期に、相原・小山地区(旧堺村)で学校建設問題を巡り、住民投票が行われた戦後の事例を紹介しました。

 戦後の時期新制中学の設立に当たって、村に一ヶ所の中学校を建設するという方針が出されました。村内では、いずれの地区に建設するのか、あるいは向こうの地区に出来るのなら、こちらの地区にも是非学校が必要であるという考えから、実力行使も伴った強固な反対運動があり、村長の辞職や議員の辞職なども伴う大事件の記録を見いだしました。一般質問の資料収集段階で、図書館の資料から偶然に再発見したものですが、議会の質問では一部のみを照会するにとどめました。

4 地方分権は、住民自治を進める

 さて、「国からの地方分権がいよいよスタートする段階になりました」と、言われています。現に、条例の制定案、改正案が数多く出されてきました。この地方分権の考えからすると、現状のものは単なるスタートであり、国や都道府県でやっていたことを末端の自治体で行うことがもっともっと多くなってくるはずです。

 とすると、議会で取り扱う内容や種類が多くなることは必然であり、議会の対応はどうすべきかという課題が差し迫ってきます。私の考えでは、議員のあり方というものは、専門的な知識を持って判断されるべき事項が増え、なにからなにまで議会と議員が行うということは、なじまなくなってくると考えます。

 つまり、いくつかの価値判断に際して、住民の直接意志を問う形態が地方分権の考えに相応しく、住民参加をより強くするものだと考えます。

 

5 将来的な予想 (以外と、この課題は早く来る−市庁舎移転建て替え問題)

 ただし、上記の考えは、吉田つとむの個人的な考えであり、市長や他の議員の多数が考えるものではありません。通常の感覚では、市長が物事を提案し、議会がその是非を判断する。「この考えで、なんら問題無し」とされて来ましたし、今後もその見解が短期的には主流でしょう。

 ただし、町田市にとって、この都市をもっともっと成長させること、豊かに成っていこうとすると、政令指定都市化の是非等の課題に至ると考えています。そのような状況下、住民意志を問う状況に遭遇する可能性を考え、住民投票条例の必要性を問いました。いつでも、政治は住民の批判に応えうる体制を備えるべきです。

 政令指定都市化の是非を問う必要性 ある意味では、新市庁舎の建設問題は、@町田市は単独の市政を維持していくのか、Aあるいは近隣市域と政令指定都市も考えるかによって、大きく見解がわかれるはずであります。現実には、そのような問いかけが無いままに、その計画が進んでいますが、どこかでその意見が噴出する可能性があります。広域の住民の意思を見極める必要があるのではないでしょうか。

 

6 参考添付 村上さんの原稿 (住民投票についての質問―下書き)

    (インターンの村上さんが、吉田つとむの一般質問用に書いた文章−−よく、書いてくれました)

 まず初めに、住民投票について市長のお考えをお伺いしたいと思います。


 今年の1月23日、国の大型公共事業に対する全国初の住民投票となった吉野川第十堰可動堰化の賛否を問う徳島市の住民投票が行われました。それを受けて、各地で住民投票の是非について様々な意見を耳にします。住民投票は、住民が一定の事項について直接投票で決定を行う制度だと認識しています。ある問題について、民意と議員の判断のねじれが生じてしまい、その結果、重大な案件の決定に際しては、議員任せではなく、自分たちの意思をストレートに反映させたいという住民の意思の現れだと考えています。しかし、住民投票に対して、特定の事業について住民全体の意思を直接確認できるという点で優れた地域決定の方法であるが、一方、首長や議会が本来果たすべき責任の回避や議会の 形骸化につながる恐れがあるという批判もあります。


 過去に、寺田市長は「議員があまりにも市民参加を言うと、議会の立場は一体どうなるのか。」また、「市民参加というのはある部分を担っていくものだ。全体を担うのは、これは議会である。」と発言しました。この言葉の意味は、住民投票に対して賛成ということでしょうか。それとも、反対ということでしょうか。また、寺田市長は、市民の声を反映する方法として、住民投票は有効な手段と考えていらっしゃいますか。


 さらに、住民投票が、この町田市で行われるとしたら、どのような問題が生じると思いますか。住民投票が将来、町田市でも必要とされる時のことを考えて、ぜひ寺田市長のご意見をお聞きしたいと思います。
 これで、住民投票についての質問は終わりにしたいと思います。


(12/04/20) a21203201 <「住民投票(条例)の是非について(一般質問)」の記事は、この行で終わります>
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