● 第三回 ”政治家はバカにすべきもの”というマスコミの風潮への批判!

◎ 要旨(議員インターンの実態を記す)

 すでに、私は、朝日新聞政治部が記事対象とした「議員インターン」に対して無理解であることと、そのために「議員インターン」と「秘書インターン」を混同していることを指摘しました。さらに、そのためか、その朝日新聞記事が”政治家はバカである”という偏見をもたらしていることや、学生に対して政治へ不信感をつのらせることだと二度も書きました。

 朝日新聞政治部からは一度は返答がありましたが、その後はまったく返答が無く、完全無視の態度です。マスメディアの対応は、議員の発言や行動に疑問を感じたら、即座に弁明を求めるし、繰り返して釈明させるのですが、自分のことになると知らない顔をして済むという態度なのでしょう。このままではラチがあかないので、議員インターンの実態について、別の観点から説明したいと思います。

 そこで、今回は自分の考えや文章でなく、私が参加した「議員インターンシップ」を実施したグループ(I−CAS)の考えを紹介することにしました。つづけて、そのプログラムに参加した議員の体験記を紹介します。彼らが、学生を迎え入れてどのように対応しようとしたのか、ご本人の文章を通じて、閲覧者にはご判断を頂きたいと思います。全文は下段に紹介することにします。

 日野市議会議員の菅原なおし さんは、体験記の中で、<議員インターンに対して議員としての神髄部分を明らかにするわけにはいかない>ことを明らかにしています。その喩えとして、家族会議に他人を入れないことを挙げていますが、正直な記載です。彼の優れている点は、何でもガラス張りと言わず、議員の判断行為の中は、学生に対してインターン出来ないことがあることをオープンにしていることです。(下段に、ご本人の文章全文を掲載)

 豊島区議会議員 本橋弘隆 さんは、<「I−CAS」に力を貸すという気概を持て とした文章を書いています。議員サイドがインターンを事務作業のアルバイト替わりにしないこと気構えの必要性を説いています。また一方で、議員の仕事内容を理解しやすい環境作りを心がけるべきことや、リーダーを育て上げる意識の必要性を説いています。(下段に、ご本人の文章全文を掲載)

 両者に共通していることは、議員がインターンの存在に対して、意識を持って対応していると言うことでしょう。私にとっても、その見地は共通でした。国会議員のインターンシップ、あるいは選挙運動のために導入された議員インターンであれば、議員インターンの存在は、議員から見て無料ボランティアに過ぎない人物と映っているのかも知れないだろう。しかし、上記の地方議員の場合、議員インターンの受入は自分を再発見する場面であったでしょう。



◎ 見出し

  1 議員インターンとは、こんな議員と学生がつくるもの

  2 議員本人達の体験記を読む

  3 こんな形の議員インターンを望みたい

 


1 議員インターンとは、こんな議員と学生がつくるもの

 
 学生が自主的に作っている、議員インターンシップの実施グループである<I−CAS>の呼びかけに応じて、議員と学生とが、その議員インターンシップに参加しました。

 その<I−CAS>は、その呼びかけ文の中で、次のように述べています。

 <I−CAS>は、市民と政治をつなぐグループです。
 
 現在、市民にとって、政治は身近な存在だと言えるでしょうか。ここ数年、日本では政治不信とか、政治離れといった言葉がしばしば聞かれるようになり、各種選挙の投票率は低落傾向を示しており、中でもこれからの社会を引っ張って行く若者の政治離れが、深刻になっています。
 政治離れが進んでしまう理由の一つには、一般の市民が、政治というものの存在を身近に感じられないこと、そして、身近に感じられるような機会や「しかけ」がないことが挙げられます。
<I−CAS>は、市民と政治との間に立って、多くの市民が、政治というものが自分と関係のない別世界のものではなく、自分に関係のあるものだと捉え、また、自らも積極的に政治に参画していくことを通じて、政治を一部の利益集団や団体のものではなく、一人ひとりの市民が主人公となれるものにし、真の市民主権社会を実現することを目指しています。

 さらにつづけて、<I−CAS>の由来を次のように述べています。

 <I−CAS(アイカス)>とは、Intermediary for Citizen And Statesperson の略で、直訳すると、「市民と政治家のための仲介者」という意味になります。市民と政治との間にI−CASが位置し、両者を媒介する役割を果たすことで、市民と政治とをつないでいこうという思いから名づけられました。

 また、議員インターンシップについては、次のように述べています。

 インターンシップで、市民と政治をつないでいきます。

 一般的に、「インターンシップとは、学生がその在学中もしくは卒業直後に、自分の専攻や将来のキャリアに関連した就業体験を一定期間、指導をともなって行う教育プログラムである」などと定義されます。
 日本でも、インターンシップの制度を取り入れている企業やNPOは少なくありませんが、このインターンシップの制度を、企業のみならず、政治の世界でも行ってみようという趣旨で始まったのが議員インターンシップです。
 日本における議員インターンシップの取り組みは1998年から始まり、以降、複数の団体が、地方議会議員、国会議員に対して学生を送り出しています。
 政治の世界は、他の職業などと比較しても閉鎖的で、一般の人が政治家という職業に触れる機会はほとんどなく、政治を身近な存在として感じることは困難なのが現状です。
 議員インターンシップは、将来政治家や秘書などという形で政治の世界に関わろうという意思を持っている学生のみならず、政治に対して何らかの興味関心を抱く学生を対象とすることで、多くの人が実際の政治というものがどのようなものであるのかを知り、政治をより身近な存在にするという効果が期待できます。
 I−CASは、このインターンシップという「しかけ」を通じ、多くの人に生の政治の現場に触れてもらうことで、市民と政治をつないでいきたいと思っています。

 上記の文章でわかるように、私たち議員は、インターンに来る学生をお手軽な無料ボランティアと考えているのでなく、議員たるものの思考と、行動を学生に見てもらおうとしているわけです。一方の学生は、議員を通じて、政治(議会と議員活動、それに対応した行政)を見ていこうとするものです。選挙運動のアルバイトに来ているはずがありません。

 

2 議員本人達の体験記を読む

 I−CASの議員インターンシップに、私と同じく議員と参加していた、日野市議会議員の菅原なおし氏と豊島区議会議員の本橋弘隆氏の体験記を全文引用する。このレポートは、I−CASの報告書に掲載されていたものですが、今回の議員インターンシップに参加した議員のレポートから、私の好みで紹介することにしました。

 彼らのところでインターンに入っていた学生の体験記は、他の議員や学生の体験記や資料などと一緒に見ることが出来ます。直接 I−CASのホームページ(試作版) に掲載されていますので、そちらをご覧頂きたい。



    <体験記 菅原なおし さん(日野市議会議員)>の文章を引用

 私のもとでは、12月中に2回ほど顔合わせと称したミーティングをし、4月の半ばまでの実質3ヶ月の研修を提供した。おそらく、一番長い研修期間だと思う。
今回の学生は、最初から最後まで、本当にさわやかな印象で、こちらも、楽しくお付き合いをさせていただいた。
 受け入れは、今回で2回目となったが、改めて振り返って見ると、「彼らにはどんな事が提供できたのか」という疑問が残る。
 インターンの理想の形は様々あるのだろうが、一般的には、「事務所があって、責任のある仕事が提供される」というものであろう。一種の社会人体験に似たものかも知れない。また、議員のインターンなので、地元の支持者との交流もあって然るべきだと思うが、今回は、そんな機会を提供できなかった。
 とにかく、政策の勉強だけで、研修期間が終了してしまったのかも知れない。ちょっと反省しているが、それが、私の活動姿勢なのだから仕方がないとも思う。
 今にして、改めて感じるのは、「施策の本当に大切な部分は、インターンに見せられない」という事だ。最終的な賛否の決断には、様々な政治判断があり、そのギリギリの政治判断の場をインターンに提供することは出来ないのだ。
 関係各機関との相談や、深夜の電話相談などの場に、インターンを居合わせることは出来ない。それは、「密室政治」と言われようと、なんと言われようと、本当に重要な政治判断には部外者を入れられないのだ。家族会議に関係者以外を入れないのと同じと理解してほしい。
 判断した後には、学生に対して、議員の全てを見せるつもりでいるが、この政治判断の過程がある限り、限界があることを知った。
 ネガティブな話になってしまったが、分かって欲しいのは、「簡単な世界ではない」ということだ。それだけ分かってもらい、その上で、これからの政治を考えていただければと思う。
 最後になるが、今回のインターンが終わることをとても寂しく思っている。これは、家族も同じ思いらしく、「寂しくなるね」と言っていた。貴重な時間を共有してくれた岩本さんと佐藤君に感謝している。ありがとうございました。



   <「I−CAS」に力を貸すという気概を持て
                 豊島区議会議員 本橋弘隆 さん>の文章を引用

 同じような試みは、私が大学時代にもあったと記憶している。しかし、それは成功しなかった。それはなぜなのだろうか。それはひとえに、受け入れ側に問題があったと私は確信している。
 そもそも選挙をかかえている議員はいつも忙しい。事務作業等を自分はしている暇はない。猫の手も足も借りたいというのが実情だ。そこで、安直な人材供給源があれば、それにすがり、アルバイトとして扱うという構図が生まれがちであり、実際はそうなるのが常である。
 これでは、学生にとり悲劇だ。自分は政治の現場を政治家というホモーポリティクスと行動をともにすることで、生の政治を肌で、体感しようとしているのにだ。
 思うに、受け入れ側は、学生は単なる短期的な人材補充ではない事をまず認識することからはじめるべきだ。そして、学生がどうしたら政治を理解してくれるのかの状況作りに工夫をこらす事、そして、できたらどうしたら次のリーダーになってもらえるかを常に考え学生と接することが必要だと考える。
 もちろん、"君は政治に向いてないよ"と言える勇気も受け入れ側には必要である。向いてない者がこの世界に飛び込んだ時の悲劇は、誰よりも我々が良く知っているのだから・・・。




3 こんな形の議員インターンを望みたい

 <I−CAS>の議員インターンシップに参加した議員と、学生のそれぞれがアンケートと体験記を提出しました。内容は、報告書にまとめられていますので、参加者が相対としてどのようにこの議員インターンシップを受け止めたかが理解できます。この企画が終了した時点で、報告会が行われましたが、その報告会には学生だけでなく、議員にも参加呼びかけがあり、私たちも参加しました。それぞれに不満もあったでしょうが、この議員インターンシップをこれで止めたいと思った議員はほとんどいなかったでしょう。次に、学生を受け入れる機会があれば、「こんな風にやったら、もっと議員の実情を学生にわかってもらえる」という意識が生まれていると思います。

 インターンを受け入れた議員だけでなく、他の議員や自治体の職員さらに議員の後援者にもインターンの存在が理解されだすと、学生が勉強できる環境が整ってくるはずです。私は、三回目のインターンを受け入れる予定です。さらに、平成12年1がつから3月のインターンの一人には、「政策インターンスタッフ」という名称で、卒業時点まで協力していただくことにしました。その成果をご期待ください。

 この文章は、議員インターンについての朝日新聞の記事を問題としたものであり、国会議員の方で、自分のところの議員インターンは、「無料のアルバイト替わりではない」と言われる方があれば、ご反論頂きたい。ただし、それ以前に朝日新聞の議員インターン記事をお読みいただいた上でのことにしていただきたい。

 以上、「議員インターンの実情と、議員からみた「議員インターンシップ」を紹介しました。この記事をもって、朝日新聞政治部との「議員インターン」記事の批判と致します。

a21207101  <第三回 ”政治家はバカにすべきもの”というマスコミの風潮への批判!の記事は、この行で終わりです>

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