宮城県白石市電子投票開票結果の取材記事
(03/06/10)
電子投票の現地取材の見出し

 白石市の電子投票 開票スタート
 電子投票分の開票55分
 もたついた開票の発表
 メディアは好意的な評価
 トラブルの表記のばらつき
 開票作業の遅れと説明
 追記 宴の声と帰京の会話
 トラブルの記事の結果

白石市の電子投票 開票スタート

 2,003年4月27日に行われた、日本で番目の電子投票は宮城県白石市で実施されましたが、開票は市公民館において行われました。

 事前に観覧者には受付があり、メディア以外の約60名ほどの書き込みがありました。(地元の観覧者を除く)

不在者投票の分は手書きの投票用紙に書かれており、当日それぞれの投票所分の投票箱に分散されて会場に持ち込まれました。
 
 電子投票分のものは、データを記録したコンパクトフラッシュが、専用の箱に収められて持ちこまれました。

 選挙の開票は、午後の9時にその宣言があり、スタートしました。

電子投票分の開票55分

 電子投票分は、まず箱からコンパクトフラッシュが全て取り出され、封印が取り除かれます。

 それを2台の読み取り機パソコンで集計しました。それだけの作業のため、開票の結果発表は30分程度と思われました。実際に、開票結果を示すパネルには、第1回目の発表が9時30分とされていました。

 しかし、開票結果の発表は、9時55分のことでした。場内で観覧する人たちは、電子投票の専門家ばかりで、この電子投票は3度目の人物がほとんどです。開票の発表が遅くなると、ブーイングがおきそうな感じがしました。

 不在者投票分の開票は、その全ての結果が出るのに約2時間かかり、なんとか電子投票の面目を保ちました。もちろん、電子投票の開票の所要人数は少なくて済みますが、その得票数が全体の1割に過ぎない手書きの不在者投票分の開票には大人数の人出が必要でした。

 電子投票の開票が終了したところで、記者はその説明を求めて、会場の前の方で選挙管理委員会の担当者に聞き取りを始めました。

 公民館の2階には、地元の有権者の傍聴者が開票結果を知るため、200人くらいが詰め掛けていました。開票の祭には、若干の声はしましたが、皆さんがおとなしく、その結果が出るのを待ち続けました。

 電子投票分の開票で大方の当選者が決まり、ある程度のところで大半の陣営の人たちは帰っていきました。

 TVカメラは、10時過ぎに大半が撤収されました。

 私は、その間、場内を移動し、その会場の雰囲気を観察して回りました。他に、次の方に、開票の状況説明をしていました。<東京大学先端科学技術研究センター バリアフリープロジェクト 特任助手の村田拓司 氏・・・・村田氏は全盲です。説明を正確に記憶されます>

もたついた開票の発表

 本来は、30分ほどで開票結果が発表される電子投票の発表がなぜ遅れたか、記者には行われましたが、一般傍聴者や、われわれのような外来の見学者には、まったくその説明がありませんでした。

 不在者投票分の手書き投票の開票結果が確定し、そのうち、一般の傍聴者は一人も見当たらなくなりました。次に、外来の見学者が引き上げ、全ての記者も立ち去りました。

 途中で、私は、記者に説明をしているところを、自分のも聞かせてほしいと職員の人に頼みましたが、そのまま待機してくださいと言われ、その会場内で最後まで待っていました。

 開票立会人も引き上げ、最終的には、開票作業の職員を集めて、開票作業の終了が宣告されていました。職員はほとんどいなくなり、機材の搬出も始まり、その大半が搬出されました。メーカーの社員も車に機材などを詰め込み、続々と引き上げていきました。

 やむなく、私は、ホテルに引き上げることにしました。

 おかげで、開票作業の最終段階を見ることができました。トラックへの積み込み作業まで、じっと見学していました。

メディアは好意的な評価

 翌日の新聞では、地元紙と全国紙の地元版では、東北地方で始めての電子投票ということで、それぞれに記事となりました。主用には、それを評価する記事が掲載されました。
 
 見出しを収集しました。
河北新報
白石市 電子投票 開票時間 大幅短縮 トラブル3件も影響なし

朝日新聞
電子投票開票に1時間 白石市議選 選管「おおむね成功」

毎日新聞
白石市議選 電子投票、ほぼ順調 1台故障など 細かいトラブル5件

読売新聞
電子投票 開票大幅に短縮 白石「ATM並み」有権者に好評
 (同第二社会面記事:電子投票55分 宮城・白石市議選)

産経新聞
電子投票に好感触 東北初の導入「書く手間省ける」

日本経済新聞
<関係記事は見当たらず>

トラブルの表記のばらつき

 白石市の電子投票の実施に好意的なメディア記事でしたが、そのトラブル表記では、さまざまの内容が現れました。私には疑問もありますので、このその主要な点をまとめました。

河北新報
 三ヶ所の投票所で投票機三台が作動しなくなるトラブルが発生したが、投票結果には影響なく、電子投票分の開票は予定より十分遅れの55分で終了。(中略)
 トラブルは、三件とも有権者が投票カードを投票機に逆さ向きに挿入したのが原因。それぞれ予備機を活用して対応した。(攻略)

 上記のトラブルの関係見出し部分は、「トラブル3件も影響なし」とされる。

朝日新聞
 一部で投票カードを逆さに挿入するなどのミスがあったものの、投票段階で大きなトラブルはなく、有権者の評判もおおむね良かった。

 朝日新聞は、見出しではその評価を記していないのが特徴です。
現に、選管「おおむね成功」と表記しました。

毎日新聞
 白石第二小の投票所(有権者4、494人)で電子投票機1台が故障するなど、細かいトラブル5件が起きた。しかし、集計に影響はなく、電子投票は55分で終了。(中略)
 市選管によると、午前11時26分ごろ有権者が投票カードを投票機に差して投票しようとしたところ、画面に「障害が発生しました」と表示が出た。市選管は、この投票機の使用を打ち切り、記録媒体を封印。有権者は他に7台ある投票機で投票を済ませた。
 封印した記録媒体は、開票で投票記録が正常に残っていることが確認された。市選管はトラブルが出た投票機を回収し、メーカーとともに詳しい原因を調べている。
 このほか3投票所で、有権者が投票カードを逆さ向きに無理に挿入して投票機が壊れ、いずれも予備機に替えた。(後略)

 この見出し部分は、「1台故障など 細かいトラブル5件」としていますが、もっとも詳しいメディア記事となっています。

読売新聞
 白石市選管によると、投票カードを、逆さまに投票機に押し込み作動停止するなどのトラブルがあったが、選挙に支障はなかったという。(後略)

 見出しには、トラブルの記述がなく、上記の表現となったものでろう。

産経新聞
 心配された機械のトラブルでは、有権者が投票カードを逆向きに差し込んだうえ、強引に機械に押し込んだため、「機械に入れた投票カードが返却されない」などの問題が五件起きた。だが、いずれもデータを保存したうえで、代替機を設置するなどして、大きな混乱にはならなかった。(後略)

 見出しには、トラブル表記はありませんでしたので、こうした記事となったのでしょう。

日本経済新聞
<関係記事は見当たらず>

 以上の表現が、各新聞記事で、トラブルに関係する記事でした。ご覧のように、トラブルの記事に関しては、毎日新聞が一番詳しい内容となっています。

開票作業の遅れと説明

 白石市議選の選挙結果の開票に関して、電子投票分の開票がなぜ55分もかかったか、そのことの説明が不十分です。

 各紙が書いた問題は、開票時間がかかりすぎたこととは関係ありません。

 なぜなら、上記のトラブルは、開票が始まる以前に分かっていることであり、選挙の立会人にも開票作業の前に説明があったはずです。なぜなら、電子投票において、投票機の作動が不都合が生じたことはもっとも重要な情報で、最初にそのことを詳しく説明されているはずです。

 ところが、今回選挙の開票では、コンパクトフラッシュの読み取りが既に終了しているはずなのに、その集計結果がなかなか発表されませんでした。そのことは、開票の会場にいる他のメーカーの人物や、私のように何度かその電子投票選挙の開票作業を見たものには、不自然な状況でした。

 2階席には、地元の有権者の人もいますし、こうして大勢の関係者が、その電子投票の開票結果の成り行きを注目していました。そのことを白石市選挙管理委員会の人々や、この電子投票機メーカーの人たちは十分承知して、今回の電子投票選挙に取り組みをしたはずです。

 そうであるならば、そこにいた全ての人にその状況説明をするべきではなかったでしょうか。厳しい言い方ですが、議員の立場で考えると、1票の行方も大切ですし、その投票・開票作業に関して、全幅の信頼をよせられるプロセスが必須と考えました。

追記 宴の声と帰京の会話

 電子投票のトラブルと言うと、投票機の故障がそのトラブルと考えられますが、実際には、その投票と開票のプロセスで疑問が発生した際、そのことを即座に説明できないこともトラブルと考えます。

 なぜなら、電子投票の場合、その個別投票結果を1件ごとに明示することは、非常に困難です。なぜなら、即そのことが選挙の秘密投票を阻害する重大な結果につながる可能性があるためです。

 さて、白石市の電子投票の開票作業は終了しました。会場で、その開票作業が遅れた理由を聞くべく、ひたすら待っていました。しかし、だれも私の話しかける人もなく、最後の片付け作業が進展しました。

 会場内に残る居残る雰囲気もなく、その中央公民館の入り口で説明を待ち続けました。それもかなわぬ雰囲気で、やむなく、予約したホテルに戻りました。

 ホテル1Fのレストラン(宴会場)らしきところからは、大騒ぎをする声が扉越しに聞こえてきました。大きな仕事を済ませた、という感じを受ける雰囲気でした。

 私が云々することではないでしょう。ただただ、疲れてホテルの一室で休みました。

 翌日は、前出の「東京大学先端科学技術研究センター バリアフリープロジェクト 特任助手の村田拓司 氏」とその一行の皆さんと、帰りの新幹線でご一緒できたことがなによりの良い思い出でした。

トラブルの記事の結果

 毎日新聞の記事では、トラブル機を選挙管理委員会とメーカーで調査すると書いてあります。

 その結果を注目しています。選挙管理委員会とメーカーとで、その調査結果を責任を持って説明されることでしょう。