2003年統一地方選挙、選挙違反が無いようにする
(03/05/20) 

 今回の統一地方選挙では、選挙違反の事例が続いています。今回の特徴の中で、未成年の使用に関する違反認識の甘さや、運動員への報酬支払い行為の問題で、「これは、選挙違反の事例に入らないのではないか」と、いう初歩的な知識の希薄さを表わす問いかけが関係者から出ています。ここで、じっくりと選挙戦を見つめて、その問題点を捉え返していきたいと考えました。

見だし

未成年の選挙運動は禁止
未成年の選挙運動は禁止 2
無届出選挙運動員に報酬で逮捕
公職選挙法の精神
4千円の供応で逮捕の意味
後輩議員にHP掲示板で書きこみ

未成年の選挙運動は禁止

 未成年に選挙運動をさせたとして、大学関係者が逮捕されたと言う、ニュースがでています。(読売新聞4月22日夕刊第2社会面記事)<2003年>

 その記事では、「学生に選挙運動をさせた疑いで逮捕 統一地方選挙の千葉県議選」と言うタイトルがついています。

 学生が選挙運動をやるのが、なぜ選挙違反か?と言う疑問で読み進めましたが、記事では未成年の学生が混じっていたことを知りながら、バイトとして雇い、戸別訪問やビラ配布をしていたと言うものです。逮捕理由は、買収・未成年使用の公職選挙法違反の疑いとも記載されています。

 この記事の見出しは、適切ではありません。なぜなら、本来は「未成年に選挙運動させた疑いで逮捕 統一地方選挙千葉県議選」とするべきものです。そうしないと、大学生が選挙運動をやると、選挙違反であるかのような錯覚を生むからです。

 一般の選挙運動では、未成年(高校生)が混じっていることはまれにあり、公選法で禁止されていても、そのこと自体が問題になるケースは極めて珍しいことだと思います。

 やはり、そこで(法的に)問われているのは、「報酬を支払った」=「買収」ということにあるようです。選挙運動の陣営では、選挙を手伝ってもらって、何も支払わないでは申し訳ない、と言う考えかも知れませんが、選挙運動員に報酬の支払いを認めているのは、先のウグイス嬢=車上運動員と、届け出た選挙運動事務員、及び選挙カーのドライバーのみとなっています。

 いや、もっと、本質的な点は、公選法で本来禁止されている個別訪問(選挙のための個別訪問の禁止)とビラ配布行為(国会議員選挙以外には、個人のビラは認められていない)が、有給の選挙運動員が動員されたことが問題とされたのだろうと考えます。

 ここでの反省
1 選挙運動には、未成年を用いない
   未成年の使用は、選挙運動の領域で無く、労務作業の範囲とする。選挙運動に学生が参加する場合、学生の年齢を確認しないといけないことです。

2 選挙では買収の罪が最も重い
   選挙はボランティアが原則。選挙運動員に(小額でも)報酬を支払う行為は、選挙運動違反に問われる可能性が高い分野でしょう。この問題は、反面から見ると、お金が無い人も同じ条件で選挙運動をさせると言う、公平性の観点から考えらているはずです。

3 違法な文書配布や個別訪問は禁止
   なぜ、文書配布が禁止されているか、これはわれわれが国会に、地方選挙にも有権者に配布する「ビラの作成」を認めるように意見書を提出中のことに相当します。地元の伊藤公介代議士にも話しているのですが、まだ国会で議論されていないようです。

 選挙の個別訪問が禁止されるのは、それによって買収の可能性が考えられたためですが、個別訪問をする側が、お金をもらうことは当初には想定されていないことでしょう。

未成年の選挙運動は禁止 2

 この未青年の選挙運動が禁止されている問題では、特に若い候補者の間で、しっかりとらえられていないようです。
 
 どうも、この世代の方々は、「自分たちは正しいことをやっているのから、それをだれがしようと大きなお世話だ」という見地に立っているようです。
 問題がおきた時など、候補者サイドはどのようにして責任を持つのでしょうか? 私には、大いに疑問です。

 先の引用記事ですが、この学生はどのような処分を受けるのでしょうか。ここでは記事がありませんが、一切のお咎めがないということは無いはずです。

 責任ある世代は、将来がある人たちのことを大事にする必要があります。こうしたことでも、責任世代の候補者は、心を配っていることをインターネットを通じて、うかがえます。

無届出選挙運動員に報酬で逮捕

 直近の統一地方選挙で候補者とその選挙運動員が逮捕された事件がありました。今回のその事件は東京都内のことであり、しかも若手の議員(候補者)が起こした事件としての特徴があります。

 もちろん、まだ逮捕されたばかりであり、詳細が明かになるのは先のことでしょう。ただし、ニュースなどから判断されることは、次のようなものです。

 まず、一般に選挙運動員の中で報酬を払うことができる対象は極限られたもので、「選挙運動事務員」と選挙カーの「車上運動員・・・つまり、ウグイス嬢」に限られています。通常の選挙運動員の場合は、ボランティアで選挙運動を手伝ってもらう関係であり、その行為に関して報酬が払えないことは誰しも知っているはずです。

 良く問題になるのは、候補者や選挙の出納責任者が、選挙運動員に対して、票の取り纏めを依頼して、その報酬としてお金を支払った、ということが買収行為として問題になります。しかし、若手の議員(候補者)の場合は、そうした買収行為は考えにくく、、「選挙運動事務員」と「ウグイス嬢」以外の応援者に、報酬を支払ったとして、問題になっています。

 今回の場合がどれに相当するか、正確にはわかりませんが、こうした運動員は、ノボリ旗を立てた自転車にのって選挙運動をやっているケースが多くアなっているのではないでしょうか。

 私の懸念が外れておれば幸いです。

公職選挙法の精神

 車上運動員(宣伝カーに乗り込み、マイクを使って候補者氏名や、その政策を連呼する人)のことです。一般には女性が行うことが多く、例えてウグイス嬢と呼ばれています。しかし、これは男性がやってよいことです。

 また、こうした車上運動員は、ボランティアの人が応援弁士がやっても良く、その報酬を払わない例はたくさんあります。例えば、議員が応援するときなどは、当然、応援する側が「陣中見まい」を渡すべきものであり、まちがっても「報酬」を受け取る側ではありません。

 上の段に書いたように、問題となるのは、ノボリ旗を立てた自転車部隊の参加者に報酬を支払ったことです。これを見とめると、無数の有給運動員が登場することにあり、選挙の公平性を欠くという立場に立つのが、公職選挙法の精神であろうと考えています。


4千円の供応で逮捕の意味

 まったく別の事件ではありますが、支持者に4千円の供応をしたとして、候補者が逮捕されたとニュースがありました。

 「4千円」と言う数字が気になるところですが、そのニュース記事を読み進むと、参加者の各一人ひとりに「千円」を出してもらい、主催者は全員に「5千円」の飲食費を消費すると言うやり方です。

 こうした例が、なんと東京都の周辺地区でありました。昔は、候補者側が全額出していたのでしょうが、それではまずいと言うことで、参加者に一定の負担を依頼するとしたようです。

 ある意味では巧妙なやり方で、投票依頼という供応接待をしているわけで、今回、逮捕に至ったのでしょう。

 こうした飲食をやるなら、全部会費制度を導入する。居酒屋さんに、「一人頭でいくら」というスタイルの会費制懇親会をやるべきでしょう.あるいは、茶菓子程度のスタイルで、会合を主催すれば良いことです。なにせ、公選法では選挙の報告会も。御礼に相当すると言う解釈を持っているようです。

後輩議員にHP掲示板で書きこみ

 以下は、この問題に関して、後輩の山口拓世田谷区議のHP掲示板に書きこみした私の見解です。

選挙を行うものとして立場について 1

 さっそくですが、ここで問題とされている、今回の選挙違反についての見解を述べさせていただきます。ご承知の方もありましょうが、私は山口拓議員の先輩(元都議会議員 阿部俊之事務所の先輩)です。そのこともあって、今も変わりなく、(苦楽も含めて)付き合いをし合っている関係です。

 さて、ここでは、「手塚よしお衆議院議員」の見解が引用されていますので、私はその「発言の考え」自体関する見解を述べたいと思います。

 この引用された「手塚衆議院議員の主張」の中では、直接の触れてない分野の問題で、その背景に選挙の収支報告の支出記載の問題があるはずです。

 選挙では、人件費を支出する選挙運動員と労務者(時代錯誤の表現ですが、公選法ではこのように記載しています)の氏名を文書で届け出ることを求めています。関係者はご存知でしょうが、選挙の立候補届け出用紙の配布と会わせて、この種の用紙が含まれています。選挙運動員で、選挙運動費用を支出できる相手は、選挙運動の事務員と車上運動員に限られており、その氏名を届け出た場合に限って、その人件費の支出が認められています。

 私が思うに、今回の事件では、アルバイト代を支払った人が、その届出する氏名の中の入っていなかったのではないでしょうか。その提出書類に、支出する氏名が無かったとすれば、公職選挙運動では、そうした相手に金銭の支出をすることを認めていない訳です。

選挙を行うものとして立場について 2

 引用された「手塚衆議院議員」の見解では、選挙カーの運転手にそのアルバイト代の支出を認めているとされていますが、これは選挙カーの運転手が、「選挙運動員」か「労務者」かの定義は別として、その届出が義務付けられた人物に当たります。届出が無ければ、選挙カーの運転手であっても、アルバイト代を支出できません。

 次に、選挙のポスター貼りですが、これは一般に、無報酬の運動員が行なってくれているのが現状です。私の解釈では、地方議員の選挙運動で、これを有給でやる陣営は、とても選挙運動をやる力量がないものと考えましょう。人手が無ければ、自分で貼れば良いわけです。あるいは、大きな選挙では「業者委託」をしている陣営もあるかも知れません。それにしても、選挙運動の支出費用に、その相手先の氏名(名称)があるかどうか、それが問題となるでしょう。ましてや、法定ポスターの貼りこみを「有給の労務作業」と解釈するのであれば、選挙費用の収支報告で「支出」が発生しているはずです。その記載がどのようになっているか、その点も問われる事態が想定されます。
 
 さらに、今回のケースでは、自転車による選挙運動の事項が含まれています。選挙運動では、運動員が隊列を持ってする行進する行動を認めてていなかったはずです。いわゆる「ももたろー」が、「隊列」をもって行われるとすれば、おのずとその規模の加減も、当事者であれば自粛の範囲が理解できようというものです。さらに、ここで問題とされるのは、自転車で同行した運動員を有給の車上運動員をみなすのかどうか、この解釈になります。そうした有給運動員の届出が出されているかどうか。そのことに関しての見解が書かれていません。一般には、届け出た有給の車上運動員が、たまたま歩行遊説をすることがあります。それ以外の同行者は、候補者の追っかけをしている(=当然、無給)をしている、というのが無理のない解釈ではないでしょうか。

選挙を行うものとして立場について 3

 さらに、引用された文での手塚衆議院議員の解釈は、「今回は自転車で一緒に回ってくれた学生に対しての報酬」との記載があります。しかし、私が解釈する公職選挙法の精神は、善意の協力であっても、それは明白な選挙運動行為であり、そのことに選挙運動費用を支出できない、とするものです。
 
 この公職選挙法の基本にあるものは、「選挙には出きるだけお金をかけないこと」、「無給の運動員が主体で選挙を行うこと」という精神です。その精神に基づいて、こうした運動員自体の人数に間しても、提供する食事代や茶菓子類の数量や金額の上限を設定して、厳しい制限を加えています。

 これは公選法の考え方が、金権政治を排する、政治家が幅広い住民に支持をされた中で誕生する、いわゆる「ボランティア選挙」という原則に作られているからです。

 改めて言うまでもなく、我々先輩後輩の間では、このように「ボランティア選挙」をやって来ました。それでもなおかつ、こうした事例をみづからの問題ととらえて、さらに精進して行かねばいけないと思っています。書きこみが長くなりましたが、この記事はこれで終了です。

 では、山口拓さん。議会でのご活躍を期待しています。