福島県大玉村の電子投票選挙の開票と問題点(町田市議 吉田つとむ)
(03/08/15)作成 以下は、記事番記事を引用。
<記事の見だし>
大玉村の電子投票開票状況08/04-08:40 No.2817
投票所から開票所へ 08/04-23:31 No.2821
開票作業と結果の要約 08/05-00:19 No.2822
導入担当メーカーはNTT 08/05-09:08 No.2825
Re: 導入担当メーカーはNTT - 笹山登生 08/07-12:21 No.2835
電子投票メーカー間の競合 08/07-18:38 No.2840
電子投票のランプ - マーチ 08/10-02:51 No.2859
Re: 電子投票のランプ - 笹山登生 08/10-06:45 No.2860
信号灯の変遷と、その理由の推測 08/10-17:09 No.2862


大玉村の電子投票開票状況08/04-08:40 No.2817

 電子投票選挙の開票は、保健センターで行われました。

 従来に比べると、そのスペースが狭くて済むということで、この場所は選定されたとのことでした。

 開票場所は、その建物の2階が使用されました。その建物は規模が小さく、一般の住民見学者とわれわれは1回のスペースでモニター見学の方法でした。

 そうした一般の見学者に、開票に先立ち、その書記長の説明があり、会場が狭く、モニターを見る方法で見学を予定したとのことでした。

 実際に、その開票作業が始まると、映像と音声が別系統で流され、数値の発表の際など、かなりの場面で音声が聞き取れませんでした。その度合いが、あまりのひどかったので、私はその場で異議申し立てを行いました。これでは、せっかく来た視察者にひどいではないか、という主旨のものでした。

 何度かクレームをつけると、1階にいた担当者は、開票所の書記長にそのことを伝言している様子が、音声のない状態で伺えました。担当者が、1階のスピーカーを数回操作しましたが、最終的には不良の状態が続きました。

投票所から開票所へ 08/04-23:31 No.2821

 大玉村の電子投票では、午後6時に投票が締め切られました。もっとも、もう既に投票率は80%以上になっているようです。前回は約90%の投票率であったそうです。

 私は、その時間には開票所で待機しました。

 電子投票で使ったコンパクトフラッシュ(CF)を入れたケースと、不在者投票分の投票箱が、各投票所から次々と持ち込まれました。そこで、入り口付近に待機して、写真を取ることにしました。タイミングより、各地の選挙事務の皆さんが、それらを持ち込んで着ました。

 電子投票では、その投票データを「正」・「副」の2組を作るため、コンパクトフラッシュは2つの入れ物に入れて運ばれました。(CFの大きさに比べて、その入れ物の大きさが目立ちました)

 選挙の開票事務は、保健センターの2Fで行われたため、それらは全部が2Fに運ばれた。

 当初からの予定であったが、われわれは1Fの部屋で、TVカメラを通じたその開票を見守ることになった。

開票作業と結果の要約 08/05-00:19 No.2822

 以下の記事は、メールマガジンの記事をもとに、いくつかの点をにおいて、書き加えをしたものです。

大玉村の電子投票選挙の結果

 定数16名の福島県大玉村の電子投票選挙は、2,003年7月29日に始まり、8月3日に行われました。この選挙では、立候補者が17名で、1名のみが落選と言うある意味では厳しい選挙でした。
 
 もとより、そうした電子投票を用いた選挙運動がどのようなものであったか、そのことも確かめるべきでしたが、今回の選挙では、私が到着したのが投票日であったため、実際の選挙戦は見学できませんでした。あくまで、電子投票とその開票作業の状況のみでした。

 投票所に向かう途中で、数箇所の選挙事務所を見かけました。まだ、選挙戦の最中で、投票中にもかかわらず、その事務所の写真を収めさせていただきました。おそらく、こうした陣営は既に自分の勝利を確信されてのことでしょう。

 さて、その投票率ですが、大玉村民の政治意識は高く、前回では90%に近い人が投票したとのことでした。今回は電子投票の導入と言うことで、その投票率の高さが注目されていましたが、その低下を留めることができず、前回の89.49%から83.44%と大幅に投票率を下げた結果に終わりました。少なくとも、電子投票で投票率を上げるということには、つながらないことが明らかでした。

 当日は電子投票で行われましたが、それを除いた不在者投票は、従来通りの投票用紙に書き込むものでした。今回の開票では、それらが合算して発表されました。

 途中では、電子投票のCFの枚数が発表され、1台がフリーズしたため、全部で23台の投票機を用いたが、1台を入れ替えたため、全部で24台の投票記録を合計する必要があるとのことでした。

 今回の選挙では、これまでの大半の電子投票選挙で導入された、投票機ごとにデータを保存する方式でしたが、その記録の際には暗号化がされていたため、開票集計にあったっては、その暗号変換が事前に必要とのことでした。
なお、この方式(スタンドアローン)で、なぜ暗号化が必要かの説明があり
ませんでした。

 そうして、10分もすると、電子投票の記録は読み込めたという説明がなされました。そうした説明を受ける側では、それでは電子投票の結果を公表すればよいではないか、と思いました。

 不在者投票分の開票は、1台の開票台に広げられ、淡々と開票が進みました。大半の投票用紙は簡単に区分けされたようでしたが、少しの分のみが区分けに時間がかかったようでした。

 開票までに、1時間もかけずに全部の得票が確定できました。以下の数字が発表されました。

投票総数 5,538票
有効投票 5,507票
按分票    0票
無効票    0票
電子白票   6票(投票せずに終了するを選択)
持ち帰り   0票

こうして、順次得票が多い候補者から、順に氏名と得票数が発表されました。先にも書いたとおり、落選者は1名であったので、最後に発表された候補者がその落選者でした。最高位の得票者が485票、最下位当選者が213票、落選者は151票でした。開票では、淡々と進んだ光景が、われわれが見学した開票所の別室にモニターで映し出されました。一般の有権者、外部からの視察者は、会場が狭いとのことで、投票会場には入れませんでした。その別室には、映像のほか、スピーカーで音声が入ってきましたが、マイクが不良のようで、極めて聞き取りが悪い状況でした。せっかくの設定でしたが、われわれには、不十分な印象を残しました。

 上記のように、福島県大玉村の電子投票選挙は、無事終了しました。予定の時間は、不在者投票分の開票まで含めて、全部で1時間でしたが、その時間内で完全に終了しました。

 選挙の関係者は、まじめに答えようとする態度が明確でした。しかし、一般の見学者に開放して、広く見えるようにするのが、望ましいと考えました。こうして別の部屋で一般に見せるのであれば、固定カメラ以外に、もう1台カメラを回して、開票作業を行う姿をオープンにする手立ても必要と考えました。

導入担当メーカーはNTT 08/05-09:08 No.2825

 大玉村の電子投票システムを担当したのは、NTTでした。そのNTTが、この電子投票で契約するのは始めてのことです。

 これまでに、合計6箇所で電子投票が実施されました。岡山県新見市、広島県安芸区、福井県鯖江市の3箇所の電子投票を担当したのは、電子投票普及協業組合(政治広報センターグループ)という企業グループで、業界の草分け的なものです。
 次は、宮城県白石市で電子投票が行われ、東芝をその業務を担当思案した。その次は、岐阜県可児市で富士通・ムサシ連合軍がその業務を落札しました。

 電子投票が開始して、まだ1年足らずですが、この間の電子投票ではこれほどめまぐるしく、契約企業がその主導権をめぐって争いを続けています。おそらく、この先の規格統一を見込んでのことでしょう。

Re: 導入担当メーカーはNTT - 笹山登生 08/07-12:21 No.2835

URL :http://www.sasayama.or.jp/saboard/b_board.cgi

導入担当メーカーによっては、ホームページ上で、システム概要図を公開しているところもあれば、していないところもあります。
前回の可児市の場合は、幸か不幸か、http://www.musashinet.co.jp/department/election/system.html で、システム概要が公開されてありましたので、トラブルの原因がわかりやすかった面がありました。
今回の大玉村のシステムについては、以前公開されていたシステム概要に付いてのサイト http://www.ntt-at.co.jp/product/tohyo/index.html が、アクセスできなくなっています。
システム概要は、http://www.ipa.go.jp/security/kobo/11fy/report/isec-rd-010013.pdf  か、http://web.archive.org/web/20020611032043/http://www.ntt-at.co.jp/product/tohyo/index.html  か、
http://images.google.co.jp/images?q=tbn:d5xYX8Zj1aUC:www.ntt-at.co.jp/product/tohyo/img001.jpg
で判断するしかありません。
もちろん、このサイトでは、システム概要のいちいちに付いて、論評する場ではないとは思いますが、セキュリティの観点から有権者サイドが検証をするとなると、やはり、システム概要の公開は、担当メーカーとして、必須の社会的責任と思いますので、あえて指摘した次第です。
また、吉田さんが、別のところで書かれている緑色のランプから白色のランプへの変更ですが、想像すれば、色盲のかたのためのバリアフリー対策http://www.nig.ac.jp/labs/DevGen/shikimou/musha.html
http://g3400.nep.chubu.ac.jp/onsenkids/column/sikimou/sikimou.html
とも見て取れます。
そういえば、鯖江市の今回の電子投票は、「ユニバーサル・デザインによる電子投票導入」http://www.city.sabae.fukui.jp/kakuka/senkan/pdf/shiryou.pdf
をうたっていたようですしね。

電子投票メーカー間の競合 08/07-18:38 No.2840

 笹山さん 各社のシステムの紹介リンクで提示していただき、ありがとうございました。

 日本の電子投票選挙は、まだ始まったばかりで、将来的に国政まで進展するのか、それとも地方にとどまるのか不明です。そうした中で、とにかく「実績つくり=自社の電子投票実施自治体数を増やす」のが、メーカーの当面の目標でしょう。

 まずは、自治体に電子投票式選挙の導入を持ちかけ、自社方式の仕様書を基準とさせる。自治体にとっても、メーカーのおんぶに抱っこ式であっても、電子投票選挙の実施で、先進自治体のイメージつくりを狙うというところが今日の状況ではないでしょうか。

 「操作が困難な電子投票機械を入れて、そのメーカー担当者が投票所に常駐しないと選挙が実施できない」と言うようなことでは、選挙の公正さを一から問うことになります。

 電子投票であれば、その公正さを保つのは、全てメーカー頼りで心細い次第です。そのために、電子投票と言ってもオンライン方式の選挙でなく、オフラインで選挙が実施されました。

 今回は、電子投票における暗号処理の安全性が、メーカー側からPRされています。笹山さんがご提示いただいたメーカーに資料では、投票所から開票所に投票結果をオンラインで送信することを目標にしているようです。

 こうしたメーカー間の抗争を見ていると、そのいく末については、まったく予想がつきません。

電子投票のランプ - マーチ 08/10-02:51 No.2859

> また、吉田さんが、別のところで書かれている緑色のランプから
> 白色のランプへの変更ですが、想像すれば、色盲のかたのための
> バリアフリー対策

ここでいうランプとは、電子投票装置に取り付けられている
信号灯のことを指しているのではないでしょうか?

信号灯は電子投票装置の後方に取り付けられ、ポール状に上方に伸び、
先端部でカラーで状態表示するものです。

信号灯は投票者に状態に示す目的のためにあるのではなく、
投票管理者や事務担当者、投票立会人に状態を示すために
設けられるものです。

Re: 電子投票のランプ - 笹山登生 08/10-06:45 No.2860

http://www.sasayama.or.jp/saboard/b_board.cgi

>>信号灯は投票者に状態に示す目的のためにあるのではなく、
投票管理者や事務担当者、投票立会人に状態を示すために
設けられるものです。>>

マーチさん。ご説明ありがとうございました。

なるほど、電子投票装置の後方取り付けということで、管理者のための指示・確認灯というわけですね。
http://www.bcm.co.jp/site/security/security1-3.pdf
を見ますと、このランプの意義は、「有権者一人一票」という原則を守らせるために、ICカードを挿入して、投票操作を行わずに有権者が立ち去った場合を、立会人などが観察出来るようにとの意味があるとの事ですね。

ランプの意義はわかりましたが、では、なぜ、緑ランプから白ランプへ、なんでしょうかね。

立会人は、不特定多数なんですから、これに対するバリアフリーがあってもおかしくはないんですが。

このような議論をする場合、システム概要が示されないと、なかなか、わからない点が多いということが良くわかりました。

その意味でも、メーカーさんの情報開示をお願いしたいものです。

アメリカでは、こんなhttp://www.hotwired.co.jp/news/news/Culture/story/20030228204.html 
訴訟問題もあったようですしね。

信号灯の変遷と、その理由の推測 08/10-17:09 No.2862

 こんにちは 笹山さん
 
 マーチさんの久しぶりの登場発言で、電子投票機に設置したものは、信号灯であることが明快になりました。毎度のことですが、マーチさんに御礼申しあげます。

 各地の電子投票機で、その信号灯の色が変化したのは、最初に電子投票システムが開発された時点で、その色を指定するような法制定(施行規則)がなかったと考えます。

 それぞれの実施自治体で、導入する時点の仕様にそのことが盛り込まれた可能性があります。

 なぜなら、同じメーカーのものでも色が変わっていた(はず)ためにそのように考えました。

 自治体で、電子投票を導入する際に、メーカーと事前に協議することがあります。その際、そのメーカー側からすると、できるだけ自社の仕様に近いものを「発注仕様」に織り込むことがあります。

 十分に確認したわけではありませんが、上記のように思いました。
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<吉田注: 笹山さん、マーチさん後両名の記事を含めさせていただきました。