大潟村農家の塩害と黒瀬さんの戦い
(04/09/20)

 今年の台風は、東北・北海道まで大きな被害をもたらしました。そうした中で、秋田県八郎潟干拓地の大潟村では、台風の風によって、米作地に多大な「塩害」が起きています。
 その中で、たくましくも明るく米作を続ける黒瀬農舎の黒瀬正さんのHPから、現地の状況を推測しました。これには、おなじみの笹山登生さんのレスがありました。

<目次>
★ - 八郎潟の米作塩害ニュース - 吉田つとむ 09/03-00:43 No.4856
奥さんが村長に再選 - 吉田つとむ 09/15-00:39 No.4904
「かぜ台風」による特異な被害、.. - 吉田つとむ 09/15-00:58 No.4906
一般農政非依存型が裏目に - 笹山登生 09/15-08:27 No.4907
村八分が適用されるか - 吉田つとむ 09/15-14:36 No.4908
大潟村に対する秋田県内農家の屈.. - 笹山登生 09/15-21:54 No.4910
恩讐のかなた - 吉田つとむ 09/15-23:26 No.4912
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★ - 八郎潟の米作塩害ニュース - 吉田つとむ 09/03-00:43 No.4856

 今回の台風は、東北地方にまでその被害が及びました。ニュースによると、八郎潟の干拓地農家の米作に対して、台風による海水が農地に降り注いだことで、重大な塩害が起きているそうです。

 その被害状況は、3割・4割とのひどさとニュースで報道しています。

 以前に、私の後援会の「新春の集い」で講演していただいた、黒瀬農舎の黒瀬正さんは、どうなさっているでしょうか。気になります。

 そのHPを見ると、見事に田植えがなされた時期のものが、トップページに紹介されています。
http://www.kurose.com/

 さらに、中を読み込むと、提携米通信2004年 8月号

酷暑お見舞い申し上げます。[

 今までにない酷暑が各地を襲っています。 また、全国各地で局地的な豪雨が降り、被害続出が報道されています。 
 皆さんのお家は大丈夫でしょうか。お見舞い申し上げます。数年の定期購入会員で、もしも被害に遭われた方には、必要なお米は支援します。遠慮なくお申し出下さいね。
 私たちの所は、幸い大雨は来ずに、助かりました。ご心配下さった皆さんに、ご報告と御礼を申し上げる次第です。

 台風襲来の記事は、9月号になるのでしょうが、・・・。心配です。
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奥さんが村長に再選 - 吉田つとむ 09/15-00:39 No.4904

 この間、黒瀬農舎の提携米通信が途絶えていましたが、ようやく9月号がアップされていました。

 この間に、この八郎潟の大潟村では、大きな出来事が二つも起きていました。一つは、もちろん台風の被害です。この台風は、思いもかけなかった災害であったようです。

 もう一つの出来事は、黒瀬さんの奥さんが、8月29日の村長選挙で再選されたという内容です。

 リンクを貼って、記事を読んでいただければよいのですが、この際、黒瀬さんの文章をそっくり転載させていただきます。原文は、新聞の切り抜き写真もありますので、そちらもご覧になってください。
http://www.kurose.com/teikei/teikei.htm

<以下、転載記事>
 苗作り、田植え、草取りなど農作業をしながら、お米をお届けしていますと、電話での注文や、変更依頼の処理を間違えたり、ご質問に直ぐにご返事できないなど、お客様への対応がうまくいかず、いつもご迷惑をお掛けしており、申し訳ありません。

 その上先月1ヶ月は、さらに、ミスが多かったことと思います。どうぞお許し下さい。
 その原因は、実は、上の記事の「喜多」の村長任期満了による選挙が8月29日に行われて、この選挙対策に1ヶ月余り忙殺されたのです。ご迷惑をおかけした方には、重ねてお詫びします。

 ところで、4年前に、我が村の特殊な事情により、喜多が、地方議会の議員の経験もないなど政治にはまったく無縁で、本人も望まないままに、農家の主婦から急に村長選挙に出馬せざるを得なくなりました。
 こんな訳で、1期の限定で、出馬し当選したのですが、議会は与党6人、野党8人の逆転構成。また、他の町村と違って、農政を巡り住民が二派に分かれて激しく対立している状況の中での就任でした。しかし、悪条件の中にもかかわらず、村の空気もなごやかになるなど、4年の任期を無事に乗り切りました。
 そして今回の選挙に向けて、交代頂ける方を、昨年夏から内密に、かつ本格的に探すに捜したのですが、いま全国で動いている市町村合併問題で、我が村は、合併せずに自立(独立)と決めたことの整理や、その他色々の事情もあって、後継者を見つけることができませんでした。
 このように今回の出馬もまた、本人・喜多も黒瀬農舎としても、積極的に望んだ訳ではなくて、責任を果さざるを得なかったという、損な役回りで、我が家としては一種の災難です。

 この村は、広大な田んぼを抱えていますが、居住区域は、縦横1,5Kmの範囲というごく小さい中に、人口約3500人、有権者約2500人という、大きな街の町内会程度の村です。 
 また、選挙戦は、農政のとらまえ方の違う二派が、おのおの1000票前後の固定票を常に持ち、残る2〜300票の浮動票で勝敗を決し、投票率は、いつも95%以上。200票の差がついた場合は「大差の勝利」という、一般の町や村の選挙構造とは違った特異性を持っています。
 先の選挙では70票余りの僅差で勝ち、今度は、出馬したからにはと、200票以上の大差での勝利を目標にしていましたが、残念ながら130票の差しかつけられませんでした。 
 先ずは、この4年一生懸命責任を果すことと、後継者養成に取り組み、次回には、確実に撤退し、米作りや家庭優先の生活を取り戻したいと願っているところです。
<以上、転載記事>
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「かぜ台風」による特異な被害、.. - 吉田つとむ 09/15-00:58 No.4906

「かぜ台風」による特異な被害、残念!喜び半ばの秋。

 この記事は、黒瀬さんの書かれた文章をさらに続いて、転載するものです。

 タイトルにもあるように、不屈の精神を持っておられる黒瀬農舎の黒瀬正さんは、<「かぜ台風」による特異な被害、残念!喜び半ばの秋。>と記されていますが、現実には大変な事態であることがうかがえます。ただし、そうした苦難を突き抜けていくところが、この黒瀬さんのすごいところでしょう。
http://www.kurose.com/teikei/teikei.htm

<以下、その転載記事>
 8月20日早朝に、雨のない強風だけの台風15号が、秋田沖を通過しました。
 余り大きくない台風との予報でしたが、朝起きると村のグリーンベルトの巨大なポプラが、なぎ倒され道路遮断や電線の切断、場所によっては電柱すらも折れる暴風でした。
 奇跡的に我が家だけは停電を免れましたが、我が村の80%だけでなく、秋田県中央部沿岸地帯に長時間大規模停電や断水。隣県から応援部隊が投入されるという大騒動でした。
 下の写真のように、我が家の畑の物置小屋も、屋根が下になって無惨な姿です。
 でも、これは、20年前に私が手作りして、すでに根本が腐っていた小屋で、損害額は、ハッハッハと笑える程度ですので、ご心配なく。

<この記事の途中に、その壊れた小屋の写真があります>

 それよりも大変なのは、台風一過の2日目以降から判明してきた田んぼの被害です。
 風向きや、地形、それにイネの生育の早い遅いによって、被害程度が大きく異なりますが、海から20Km付近までの我が村のような秋田県沿岸部は、「塩害」によって、残念ながら収穫皆無確実という田んぼも広範囲に拡がっています。
 このような、雨がなく、海から陸に向かって吹いた強風が運んだ「塩害」という、特異な台風被害は、古老の方も経験は初めてと言っています。幸いにも、我が家の被害は30%程度の減収と、平均よりもやや軽微と予想できるのは、せめてもの幸せです。
 潮風に痛めつけられ、稔らない粒はダメでも、残った粒が、より太ることにより、被害軽減につながる。とも言われていますので、それを期待しながら最後の草取りを始めました。
 喜び半減とは言っても、もう直ぐ嬉しい収穫です。新米の出荷は、10月始めとなりそうです。
<以上、転載>

 その記事に続いて、「8月の発送ミスや連絡遅延などご無礼をお許し下さい。」と記事があります。この部分を、私の転載作業では、先に書きました。
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一般農政非依存型が裏目に - 笹山登生 09/15-08:27 No.4907

吉田さん、
今回の台風の進路は、いずれも、従来のコースとは異なり、日本海側を北上したため、その吹き上げる海水交じりの暴風雨が、日本海側の米生産地域に塩害をもたらしたという特徴があります。
JA大潟村の調査では、村内の4割に当たる約3400ヘクタールの稲が枯れ、被害総額は約48億円に上っており、最終的には60億円に達すると予想されています。
大潟村にとっては、40年前に大規模農業のモデルとして村が誕生して以来、最大の被害となっています。
さらに深刻なのは、全国唯一、この村に農業共済組合がないというこです。
これは、この村の生い立ちが原因しています。
入植農家に自立志向が強く、一般農政の範疇外での経営志向をしてきました。
減反非協力というような形で、一般農家からの非難もありました。
そして、ようやく、一般農政が、これまで大潟村の先駆的農家の経営志向にキャッチアップしてきたときに、今度は逆に、大潟村が、一般農家が持っているセーフティーゾーンをもち得なかったことは、なんといっても皮肉なことです。
外資系の損害保険をかけていれば、別の話ですが。
今回も、生産調整に協力していないとのことで、県単独融資の適用に難色を示す意見が県議会などに見られているほどです。
サイトURL: http://www.maff.go.jp/work/keiei/tokyo.pdf
は、昨年農林水産省が主催した、農業災害補償制度検討会の現地検討会−東京会場-での模様ですが、この資料の三ページに、くしくも、なぜ、大潟村が農業災害補償制度に加入しなかったのか、その経緯と、それに対する不公平を言う声が紹介されています。
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村八分が適用されるか - 吉田つとむ 09/15-14:36 No.4908

 笹山さん こんにちは

 この問題は、笹山さんのHP掲示板にも掲載させていただいた問題ですが、大潟村における米作への塩害発生の事態は、秋田県としても大きな問題であるでしょう。

 さらには、笹山さんがご指摘のように、大潟村が農業災害補償制度に入っていなかったことによる、今後の問題発生が起きてくるように思っています。

 2期目の選挙で再選された黒瀬村長の最初の仕事は、この台風被害の補償問題となっています。

 笹山さんの記事では、大潟村農家の災難に関して、県議会から厳しい反応があるようです。それを自立した農業を目指してきた農家のリスクととるか、「村八分」を超したレベルの自然災害かとるか、地方自治体にとってその価値判断分かれ目だろうともっています。
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大潟村に対する秋田県内農家の屈.. - 笹山登生 09/15-21:54 No.4910

大潟村に対する秋田県内農家の屈折した気持ち

吉田さん。
吉田さんの掲示板でも書かせていただきましたように、これまで生産調整に協力してこなかった大潟村の農家に対する秋田県内農家の屈折した気持ちがあることは事実です。
その恩讐のかなたを乗り越えることができるのかどうか、それが、県内一般農家にとっても、新しい大潟村感の出発だと思っております。
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.News.kiji?InputKIJICODE=20040901r ご参照
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恩讐のかなた - 吉田つとむ 09/15-23:26 No.4912

笹山さん こんばんは

 「恩讐のかなた」となりうるか、大潟村を見つめる秋田県の農家を遠くからですが注目しています。

 他方で、幾多の困難を笑い飛ばしてきた、大潟村入植者の黒瀬正さん(黒瀬農舎)の卓越性に期待しています。なにより、この人はその奥さんが村長に再選されたという政治的な実績を持ったおられます。

 私が自分の新年会で、黒瀬正さんを講師にお願いした時、東京でも大雪となった日、なんと「新幹線」から「飛行機」に乗り換えて、無事町田市に入っていただいた経過があります。

 「闇米作り」と国にたたかれながら、自由米の作付け・自主流通をやり遂げると言う、不可能を可能とさせる大胆な判断力と、人をひきつける話術、そしてなにより、塩分の多い八郎潟干拓地で最初からの入植者として今日の水田を作り上げてきた我慢強さを持たれた人物です。

 必ずや、この苦難を乗り切ってくれると思っています。
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