● 古繊維業界の危急について

◎ 私の前書き

 友人の中野聰恭 氏(ナカノ株式会社 代表取締役−古繊維業界の経済人で、私の第2回新春の集いの講師を御願いした)から、(故繊維回収業者の方へ出された)文書が送付されてきました。古布の回収・リサイクルについては、以前に議会の一般質問で取り上げた経緯もあり、業界の一端については認識がある方だと思っています。業界の苦しい状況の重大性を考え、その全文を掲載することにしました。私のホームページに掲載したとして、この状況が各地に知らされると言うことはありませんが、中野氏の業界への愛着、ものを大事にされる態度には、心をうたれるものがあります。

 この繊維業界では、一貫してメーカーの回収責任はなく、古繊維業界の回収ルートが古来より定着していました。安い新品の衣服が大量に出回るために古繊維が増え、一方で機械産業分野の高度化などでウエス需要が減っています。また、回収に際してのビニール類の混入による資源のゴミ化が起きている情況です。業界ではリサイクル化の停滞が起き、保管倉庫の維持管理費などの問題から、古繊維類の引き取りが困難となっています。

 業界では、そのために引き取り制限でタンス貯蔵、あるいは自治体段階での一般ゴミへの転換、及び古繊維の引き取り有料化を一時的に導入しているところです。そのことによって、回収を専業とされている方々の仕事が減るのは明白です。その関係の皆さんの窮状はどのようなものでしょうか。我が町田市は、紙・ダンボール・古布を一括回収しており、回収された古布がどのようにされているか気になります。この事態を無視して過ごすわけにはいなかないものです。

 

◎ 中野聰恭氏が、回収事業関係者に充てられた文書(御願い文 2通全文)

回収事業関係者各位 殿      平成12年6月1日

ナカノ株式会社   

代表取締役 中 野 聰 恭   

 

リサイクル不能品返却要請ご支援のお願い!

 

 毎々、故繊維業界の事業に深いご理解とご協力を賜り、有りがたく御礼申し上げます。

 すでにご案内の通り故繊維業界を取り巻く環境は、国内経済の長期不振と国際的な大競争時代の中で大きく様変わりをしています。業界の取り扱い製品のウエスは主力得意先である産業界がリストラと低価格志向を続け、使用量の減少と価格破壊を起こしています。中古衣料も業界努力によって輸出数量は伸ばしたものの、円高の定着により手取り円価は値下がりしたままです。再生原料に至っては、一次産品の値下がり、原料素材の転換から水面下に沈んだまま業界のお荷物、足かせ状態が続いています。

 一方において、リサイクルは地球環境問題、ゴミ減量問題から至上命題となり、我々業界も行政、市民に向けて業界の社会的使命、地位向上のため、広く情報を公開し積極的な事業展開をしてきました。しかし時代の過渡期によくある社会制度の歪みから、需給バランスが大きく崩れ、冬物衣料を中心とする再生原料の反毛素材に至っては、全く供給過剰に陥り故繊維業者の倉庫スペースを埋め尽くし、今日のような仕入先各位に多大なご迷惑をおかけする状況を生み出しています。もとより我々業界も状況を改善すべく受け入れ態勢の整備と市場開拓の努力は続けておりますが、本来の一次原因者である繊維メーカーは製紙メーカーや製鉄メーカー等と異なり、全く回収された繊維製品を受け入れておりません。零細な故繊維業界に後始末を任せたまま、いわんやリサイクルの美名の下、販売促進の下取りセールを展開し下取り品を自らの責任で処理するどころか、故繊維業界の既存の市場で処分し、反毛原料が無価物品と成る遠因すら作っています。

 地方自治体の環境施策でもゴミの減量化から分別回収を進める一方で、ごみの発生抑制を促すために経済的手法を取り入れ、事業系一般廃棄物の受け入れ処理を有料化にしています。且つこの処理費用は値上がり傾向にあります。しかしながら集団回収、分別回収で集められる繊維製品は素材、用途、性別、季節、サイズなどの要件を満足させる色々な種類の品物と、破れ状態や排出状況によって異なる品質の商品で構成されています。この様に複雑系商品の繊維製品を排出元で仕分けし、リサイクル可能な商品だけ回収するシステム構築は不可能なところから、「込みボロ」と称して不能品を含んだままの混合回収が実情です。前述のごとく故繊維業者は、営々と築いてきた活躍する市場を壊され、リサイクル不能品は増やされ、増やされたリサイクル不能品にもお金を払い、あげく不能品の処理費用までも徴収されています。もとより故繊維業は収益事業です、が家庭系一般廃棄物のボロを減らす選別加工販売のリサイクル事業はしていますが、ゴミの発生総量を増やす製造販売事業はしていません。この場合の一般廃棄物の処理費用は誰が負担するのでしょうか? まして家庭廃棄物のボロは産業廃棄物ではありません。この社会的処理コストは、一人故繊維業界だけが負担するものなのでしょうか?

 「21世紀は環境の世紀」「リサイクルの世紀」と言われています。環境問題解決のために我々故繊維業界も生き残り、社会的役割を果たしたいと願っています。現行制度の矛盾の中で、欧米に比べて非常に遅れている故繊維の回収率を上げ、国際競争に勝ち抜いて21世紀に故繊維業界が存続できるために、排出源の一般市民には業界の窮状をご理解いただき、市況が改善されるまで冬物衣料を中心にタンス在庫をお願いしました。回収事業関係各位には回収システム上、混合回収されてしまうリサイクル不能品20%を、回収先自治体への無料返却にご理解を頂き、ご助力をお願い致しました。お蔭様で回収業界のご支援のもと多くの市民、自治体で受け入れていただきました。しかし残念ながらいまだ一部にご理解をいただけない地域がございます。再度、故繊維業界の窮状と繊維リサイクル率の向上に取り組んでいる努力にご理解いただき、リサイクル不能品の無料返却にご支援を賜りたくお願い申し上げます。

経過措置のお願い!

 経済実態と法律や環境行政の矛盾の狭間に置かれている故繊維業界の窮状をご理解の上、貴社を含め各関係部署にお願いをしております不能品の無料返却が、他都市同様に実施されるまでの経過措置として、以下の件よろしくお願いいたします。

  1.  
  2. 支払い清算の際、支払い対象となる仕入数量に3円を乗じた金額を、不能品の処理負担分として相殺値引きさせていただきたくお願い申し上げます。
  3. 上記お願いの目的はリサイクル不能品の発生元への無料返却実現のためです。重ねてご支援と関係部署への働きかけにご協力をお願い申し上げます。
  4. あくまで経過措置です。無料返却が実行され次第、上記の相殺値引きは取り止めさせていただきます。

* 頂いた文書の中で、1−3と7については書き込みがありませんでした。企業宛の文書ですので、その内容が伏せられたものと思います。

g91206081 <「古繊維業界の危急について」の記事は、この行で終わります>