ロサンゼルス地震災害に関して
 市議会自由民主党海外視察報告(平成7年10月24日〜30日)
 ワープロ文書の復刻版記事(市議会に提出した正式文書)
(04/11/22)

 以下は、平成7年10月24日から30日の間、町田市議会自由民主党会派で、会派としてアメリカ合衆国を海外視察した際の視察報告書の一部です。
 この前年に発生したロスアンゼルス地震も視察の対象としたものですが、その報告書はワープロ文書で提出していましたので、OCR読み込みをして、震災視察報告の再掲しました。この年は阪神大震災が発生したが、当時、どのようにわれわれが考えていたものかを記したものです。
 なお、この報告書部分の記事は、文末がそろわない特徴の文体でお分かりのように、吉田つとむが書いたものです。

 新潟中越地震の発生に際し、復刻してネットにアップしました。
 なお、阪神大震災時にも多数の文書を書いていますが、それぞれの事情で散逸しています。機会を見つけて、このHPに掲載したいと思っています。ただし、なにぶん、新しい事態の記事の書き込みを優先しており、復刻やバックアップのリンク切れもままならないのが実情です。

 何はともあれ、今から9年前の時期のものであり、自分の生活領域でインターネットを知らない時代のものでした。

<見出し>
ロサンゼルス地震災害対策に関して
@ アメリカ赤十字の救援活動の話を伺う
Aカルフオルニア州〈知事)緊急対策室を訪ねる
B EQEインターナショナルの地震学者・ジェームズ・ゴルツ氏の講義を聴いて
Cロス地震災害視察総括に代えて
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ロサンゼルス地震災害対策に関して

 10月25日(現地時間〉、視察予定箇所である、アメリカ赤十字・カルフオルニア州(知事)緊急対策室・EQEインターナショナルの三つの機関、ないしエンジニアリング企業を訪ねました。その日の日程は特にびっしりであり、ホテルより出発し、最初の視察地であるアメリカ赤十字にはオープン時間の午前9時に入り、最終のEQEを出る時は(本文:噴は)事務所の終了に近い時間でした。そんなものは当たり前だとお考えの方々には、念の為に、次の内容(本文:内杏)も報告しておきます。

 ロスの特徴として、市内のエリアが広く(首都圏と言う感覚)、その日の移動は東京で言うと、宿泊地の町田市を出て、最初の視察地が東京の浅草方面辺りに出向き、次の視察地は立川付近、そして次の地点は筑波〈雰囲気的にもそんな感じの場所でした〉辺りという、大移動を重ね、最後に町田市に戻ってくると言うコースでした。しかし、ロスといえば、『車と道路の街』であり、フリーウェイ〈無料の市内高速道路)を単に乗り、100キロメートル程度の移動することは、ロス市民にとっては朝飯前のことのように感じられました。

 今回の視察対象はロス地震の災害対策に関する視察がテーマの一つです。このロス地震というのは随分と前に起きたことのようですが、今年(平成7年・1995年〉に発生した巨大災害である阪神・淡路大震災〈以下、阪神大震災と記す)のちょうど1年前、すなわち、平成6年(1994年)1月17日に発生した、マグニチュード6.7のロサンゼルス地震(直下型地震の震源地である地域名を採って、ノースリッジ地震とも呼ばれる)のことです。
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@ アメリカ赤十字の救援活動の話を伺う

 アメリカはまさに、ボランティアの国。日曜日の朝には教会でお祈りし、地域や社会団仏のボランティア活動に自然に参加するのが良きアメリカ人だと、いろいろな方々からl聞きました。

 また事ある時は、自分の身をていして、災害発生の場にも駆け、その為のトレーニングを常日頃より欠かさない、そのような誇り高い精神を、アメリカ赤十字の活動の中に見ました。訪ねたロサンゼルス支部のドン・ギドリー氏等の説明では、ロス地震に際して、6ヶ月間に延ベ1万5千人が働き、内10%が有給の職員で他はボランティア(以下、ボラと記載、ちなみに神戸の長田区にある県立体育館避難所でも略して『ボラ』と呼んでいました)であり、ボラの内30〜40が救援のトレーニングを済ませた人であったという。こうしたボラは全国に13,000人が登録しており、24時間以内に出勤でき、さらに現地で3週間滞在できる状態だともいう。

 赤十字の活動内容では、@避難場所の設置と避難誘導A食べ物の手配と供給B住宅損害の評価C家具の確保に住宅の斡旋等があり、他に重要な仕事としてケースワーカーを置くとがあり、最終的には来年の4月まで救援活動を行うということですが、保険や公的な補がある人には支給が二重にならないように管理をしているといいます。
                                                                                 
                        アメリカ赤十字のスタッフ.ボランティアの重要性を説いてくれた。


 今回の震災の反省点として、様々の人種があるので英語だけでは対応できなかったとして、英語以外の言葉が話せ、文化が理解できるボラを求めているといいます。現地での移動の途中に、震災時に暴動が発生したエリア付近をバスで通りましたが、今もその傷跡が一部に見られ、その言葉が実感出来た次第です。
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Aカルフオルニア州〈知事)緊急対策室を訪ねる

 緊急対策室と言うのは、日本では東京都総務局災害対策部がやや近いものか?ただし、いうまでもなく、アメリカの州は各々の州が一つの国家であり、州兵と言う軍隊も保有しています。アメリカでは、連邦・州・地方政府(郡・市)と連なり、その構成では日本に於ける国・都道府県・市町村とはまた異なった形態をとっています。

 ロス地震では州から連邦への連絡が早く、相次いで非常事態宣言が出されました。もちろん、ロス市で非常事態宣言が先行して出されており、アメリカ人の自治意識の高さをそこにも感じました。

 さらに緊急対策室の機能を町田市で例えると防災課が相当するかも知れないが、業務内容にライン的な要素がなく、スタッフ的な業務に専念出来る体制であるようです。災害発生後、連邦・州・地方の調整事務所が置かれ、各レベルの代表が派遣されると言う。

 広報担当のデニス・ウィリアムズ氏等によれば、地震災害が発生した州内の3の郡で州政府は21ヶ所個定式・移動式の合計〉の緊急対策所を設置し、災害申請や仮設住宅の手配を行い、またメディア機関を通じて、被災者への情報提供を行ったということでした。さらに、車社会であるロスにおいてはハイウェイパトロールを州警察が担当し、その役割も大きく、交通止めとなった道路や崩壊した橋梁を迂回する交通整理が非常に重要で、また、州兵も出勤させて治安の維持を計ったということでした。


州〈知事)緊急対策室では、スタッフを囲んで話を伺う。

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B EQEインターナショナルの地震学者・ジェームズ・ゴルツ氏の講義を聴いて

 ジェームズ・ゴルツ氏は、このロス地震を体験し、かつ本年1月17日、今回の阪神大震災を現地で観察した数少ない人物です.同氏は、大阪でその日に開催された『日米防災会議』の出席予定者であり、当日は大阪に滞在していたという。ちなみに同会議の会場は、地震が少ないという理由で大阪が選ばれたとのことです(同様に、同会議の出席メンバーであった、横浜国立大教授 佐土原聴氏 2月18日の講演での話による)。

 『EQEインターナショナル】は、ロス郊外のアーパイン市に所在し、公共的な管理や防災システム開発などの調査会社であり、同氏は主任研究解析担当者です。

 その話の内容を記すと、地震の発生地点とマグニチュード強度が特定されると、被害状況がリアルタイムで予測されるという、GISシステムと呼ばれるコンピューターソフトの解説と、適応例などでありました。

 そのGISシステムには、詳細な地図情報・人口分布状況などを含めた情報が、コンピューターに入力されており、地震の発生地点とマグニチュード強度を任意に設定すると、瞬時に、死者数・負傷者数・避難者数・倒壊家屋敷・被害家屋敷・被害金額・ライフラインの被害状況・有害物発生情報を、コンピューター画面に映し出すものでした。また、そごシステムでは昼と夜とでの被害の違いも見込んでおり、郵便番号ごとにその被害状況をできるというものでした。

 アメリカでは、ロス市が含まれるカルフオルニア南部地区3郡を連邦指定被害地に指定しており、同氏の説明では、地震発生に際してこのシステムの予測を基に、対策本部の規模を決定することが可能というものでした。(今回、阪神大震災においては、政府や自治体による、災害規模の見積もりと救援活動の意思決定に重大な欠陥があり、災害救助や災害復旧の遅れをより一層拡大させたと指摘されています。)


阪神大震災も体験したジェームズ・ゴルツ氏からは、
日本における救護や復旧体制の欠点を指摘された。

 思うに、地震発生の予知も必要な課題ですが、この例のように、いつ地震が起きるかは別にして、どのような地震が発生しても、いちはやく、被害状況を予測し、救護・復旧体制を効果的・効率的に取らせることを考えようという発想は、まさにアメリカ的であるのでしょうか。いや、今後は(地震発生時期と場所を的中させる研究に余念がない)日本においても、このアメリカのスタンスを学ぶべきであると記しておきます。
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Cロス地震災害視察総括に代えて

 短期間の視察でロス地真の全てを語ることが許されるわけではありませんが、阪神大震災以降に阪神の地に都合5回訪れた経験を踏まえての印象と感想を以下に若干記載しました。

 今は既に大半のものが修復されていましたが、被害の中でも、地盤の液状化・ライフラインのストップ・道路や橋梁の崩壊等、まさに阪神大震災の内容を一部予見するべき災害事故でした。高速道路の橋脚が折れ曲がったり、あるいは潰れたり、落橋した部分の所に車が走っていて大事故が発生するという現実が、すでに1年前にアメリカにあったのです。

 視察地での話を総合すると、亡くなった人が61名(阪神大震災では5,500名以上)にのぼり、被災家屋敷約1万戸(同様に約20万戸)に及ぶものであり、災害規模にすると阪神大震災に比較するまでには至らないのですが、震災の影響、救出・救済の状況、現地の復興状況など、私たちが見本とするべきことがらが数多く含まれていました。逆に阪神大震災は何事もスケールが大きすぎるだけでなく、自然災害の強力さだけに限らず、人的な複合的な災害様相を示しており、復旧・復興の方策にしても明確なビジョンが出てこないでいます。

 むしろそう言った現実を踏まえて、我々はロス地震に関して教訓的なことをまず学び、この重層的被害の阪神大震災の対応を検討し得るのではないでしょうか。

 また機会があれば再度訪米し、災害時における、議会や議員の対応と活動、並びに政党の役割、さらには赤十字以外のボランティア団体や機構の視察を行い、これからの町田市での防災・救援活動への参考にさせていただきたいと考えます。
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