講座W「福祉の現場から」報告(原田 隆嗣
第9回清蹊セミナー 講座W

講師:松尾 清美氏(佐賀大学助教授)
 (まとめ:早稲田大学鵬志会 原田 隆嗣さん)

講座:W「福祉の現場から」 

まとめ
今回講師の松尾清美さんは現場の視点からのこれからの福祉のあり方について論じられました。現行の福祉には非常に無駄や改善すべき点が多く含まれている。それはすなわち、車いすの標準型に乗った者にしか分からない不便さであったり、ヘルパーの必要以上の介護であったりといったものである。これらの最大の問題点は、福祉を受ける側の自立の妨げになってしまうことである。つまり、車いすでの移動が限界になってしまえば他人に頼るしかなくなる。それによって自分での行動を少しずつ諦めていってしまうのである。必要以上の介護も同様に、本来自分で出来る事の可能性の芽を摘み取っていってしまう。しかしながら、要介護者とは自分で何も出来ない人間ではないのである。適切な道具、適した環境を整えれば自分で考え行動し、働く事も十分可能なのである。公的な視点から言うとこれはとても有益な事である。福祉の公的資金の流出を抑え、生産性を高める事が出来きるのである。そして、さらなる要介護者の自立を促すことにつながるであろう。政治を考える上で福祉に関する認識を改めれば、新たな可能性が見えてくるのではないだろうか。

感想
人間の尊厳とは何であろうか。それは自ら考え、自らの信念の元、自ら行動する事である。それは誰にも奪う事は出来ず、誰にでも備わっているべきものである。
病気や怪我や障害は誰にでも起こりうる可能性のあるものである。多くの人にとってそれは現実となった時、その事実を受け入れるのに大変苦労することであろう。そしてそれを乗り越え受け入れたとき、患者に対し周りの私たちは何が出来るのであろうか。人は皆「かわいそう」「何か力になってあげたい」といった感情を抱くであろう。しかしそれによって必要以上の手助けをすると、松尾さんのおっしゃるようにその人の行動する意志意欲を奪いかねない。行動を他人に頼ろうとする尊厳の無い人間を産み出しかねないのである。そこで私たちが目指すべきは、ノーマライゼーションであろう。私たちが力を貸せば生活が可能というのではなく、障害を持つ人々が当たり前に生活する事の出来る環境の提供、またそういった環境が当然であるという意識である。
そうした意識のもと、全ての人間が尊厳をもって人生を送る事が出来るよう社会に向き合っていきたいものである。

文責:原田 隆嗣