六戸町の電子投票選挙に関する関係者の聞き取り(吉田豊町長他)  

 今回の青森県六戸町議会議員補欠選挙は、町長選挙の実施に伴う欠員を補うための選挙でした。実際には、町長選挙が無投票になったことで、投票日にはこの町議補欠選挙のみが行われました。
 
 この六戸町の選挙は、日本国内では珍しく、電子投票が用いられています。六戸町の最初の電子投票選挙は12年前になりますが、その時の視察報告は以下のものがあります。詳細にしていますので、こちらも参考にしてください。

 会派視察報告(個人) 青森県六戸町・町長選電子投票選挙
 提出(04/03/17) 視察期日(2,004月1月17-19日)
 http://j-expert.jp/kako/006doc/gik/sis/2004/03.18_2.html

 投票所での見学を通じて見たこと、聞いたこと
 今回、町長選挙が無投票になったこともあって、初めて実施された町議補選は、一般の選挙に比べたら低投票率(34.75%)でした。ともあれ、この有権者は世代を超えて、電子投票機になじんでいる人が目立ちました。ただし、この電子投票の投票に関して、有権者が戸惑うことないのは、事前に電子投票選挙のやり方を何度も学習する機会があったことがまず第一点でしょう。次いで、私自身何度も操作したことがありますが、その方法はATMの操作より容易です。投票者には、投票手続きの受付後、1枚の投票カードが渡され、その投票カードを使って電子投票機に入れて、画面に現れた候補者を選択し、その氏名部分にタッチし、それを確認して投票決定を行います。

 その過程は、投票機に一体になっている表示ランプが投票が始まった時と、投票が終わった時点でそれぞれが点灯するようになっており、立会人や投票管理者にその確認を物理的に視認することができるようになっています。投票用紙の場合はその時点で「持ち帰り票」が出る可能性がありますが、電子投票の場合は持ち帰り行為がその時点で発生が起きないように設定されているわけです。最後に、投票者は投票を終えた投票カードを透明ケースに入れて終わりになります。投票管理者はその投票カードをまた初期化して、再度、次の投票者に使用する方法が使われます。

 一般に、電子投票と言うのは高齢者はその操作が苦手と言う意見があります。導入当初、あるいは一部メーカーで投票ができなかったなどの時に、そうした誤解や偏見が生じていますが、実際に、電子投票の選挙を何度か見て回ると、選挙の候補者を手書きで書くより、はるかに容易だとわかります。選管職員の方、あるいは投票管理者の方に現場で聞くと、有権者が容易に投票していることを教えていただけますし、また、投票中の有権者を自分で遠目に見ていると、その説明が的を得ているように実感できました。特に、投票所を出入りする人の顔に不安さは皆無でした。

 選挙管理委員会、職員と面談して

 選挙管理委員会の担当者の方は、実にテキパキしていました。なんの不安差を持たず、職務を担当されていました。それはこれまでに六戸町が何度も電子投票を実施してきたことが一番の理由かと思いました。また、そのことは視察した投票所でも、投票管理者の職員、あるいは一般の職員にも同様の安心感を感じたことでした。* なお、六戸町選挙管理委員会は、その業務を総務課が行っていました。地方の自治体ではよくあることです。また、関連事項を吉田豊町長の節で記載します。

 電子投票機器メーカー担当者の仕事について

 前に聞いて知っていたことですが、電子投票メーカーの担当者は、選挙の最中は電子投票機に触れない、データが入ったコンパクトフラッシュにも直接触れないとのことでした。実際に、投票現場、開票現場を見ていると、電子投票の投票プロセスがブラックボックスにならないように設定されていること、あるいは電子投票メーカーが電子投票機をメーカーの専門家の手で運用することを標準とするのでなく、選挙を実施する自治体が運用できるように設定するという基本方針のもとに運用されていることが分かりました。

 メディア記者との立ち話について

 公職選挙と言うことで、多数の新聞記者の開票取材が行われていました。ただし、この選挙が電子投票選挙で実際されているということにほとんどの記者が関心が無かった様でした。翌日の開票速報記事を読むと、その種の記事が見当たりませんでした。たまたま、出会った中で、私の存在に気づいた記者の方には、この電子投票選挙の取材に来た理由を述べさせていただきました。*何か、必要な報告事項があれば、この報告に追記することにします。
 
 吉田豊 六戸町長との面談について

 今回は、予期せぬ事態で、吉田 豊町長と2度もお話しする機会を作っていただきました。吉田町長は、事前に、私が視察に訪れることを知っていただいていたとのことでした。関係部署の職員の方からの話ではなく、IT施策を推進されていることで、ネット情報で入手されたとのことでした。
 吉田豊町長の電子投票に関する方針は明確であり、いわゆるぶれない政治と言うものでした。日頃から、行政の財務情報を明白にし、個別の問題でもどれもオープンにするという方針でした。また、行政の実情を数字化し、状況を客観的にとらえることができる心かけておられました。
 電子投票では、パネルの候補者氏名をタッチして選択することで、有権者の意思が明白に出る。候補者氏名を手書する方法では、疑問票(不明票)、按分票が出るために正確性に欠けるというものでした。その件では、昨年の統一地方選挙において、相模原市で1票差の中に3名の候補者があり、当初の選管発表に異議申し立てがあり、当選者の決定が変更されたこと、さらに、今度は逆に、落選者とされた当事者からその取り消しを求める裁判が起き、裁定が変わらないことで当事者から最高裁まで争われる状況に至っていることを説明しました。この問題の相対的な件数比率は多いとは言えませんが、現行の判定が合理的とは言えず、候補者自身にはいずれかの側が決して納得がいかないことでしょう。

 電子投票では、候補者のいずれかに投票されることになり、得票が按分されるケースは決して起きないという確信が伝えられました。電子投票の合理性、正確性が優先されるべきことも、吉田豊町長の言葉からより裏付けられました。

 選挙に立候補した人で、姓や名前のいずれかが共通した候補者が出るケースがあります。その票の按分によって、大きく得票数が変わることがあり、その結果当選した場合は良いのですが、そうでなかった場合、やり切れな差ではすまされない不合理性を持っていることになります。

 なお、2回目の面談においては、政治サイトの「政治山」の市ノ澤充氏が同席されました。この際には、大半、同氏のインタビューと言うスタイルになりました。両者のやり取りを聴き比べるという立場を取れたこともよい機会でした。
 
記:町田市議会議員 吉田つとむ 保守連合