岡山市視察報告(町田市議会 自由民主党)
(05/01/25) 

平成16年11月9日 岡山市視察報告

調査項目
● 岡山市の文化政策について
● 美術館について

          作成者 吉田 つとむ
<<概要>>

 岡山市では、文化事業の推進に関する取り扱いが、町田市などのように教育委員会所管の「生涯学習部門」の担当でなく、いわゆる市長部局の「企画」部門に入っている。
 主要には、平成12年4月、
教育委員会文化課振興係
 ↓
企画室文化政策課(現企画局文化政策課)

 その変遷については、次の表の次第である。
(提供資料の「岡山市文化課の変遷」を基に、独自に編集)
年次教育委員会事務局 市長部局
昭和46年文化課
昭和58年社会教育部文化課
平成06年
総務局生活文化部生活文化課
平成09年生活文化課文化行政係りを統合統合←上記文化課
平成11年生涯学習部文化課
平成12年分離→文化財課分離→企画室総合政策部文化政策課
平成13年
企画局総合政策部文化政策課

この文化政策課は、平成14年2月、「岡山市総合政策審議会」に提出した資料(文化とまちと人づくり)の中で、「全庁的に文化の視点をとりいれ、まちづくりを推進する。事業中心から政策中心へ。」と、その「現状と課題 ◆課題」の中で記している。

<その文化政策課の所管する事業には、予算で下記のものがある>

●文化のまちづくり推進費
 岡山市文学賞運営委託料
 おかやま音楽祭実行委員会負担金
 岡山芸術祭開催負担金
 岡山シンフォニーホール文化事業補助金
 岡山フィルハーモニック管弦楽団運営協議会負担金

●デジタルミュージアム(仮称)整備推進事業
 
●岡山シンフォニーホール管理運営費

 上記のデジタルミュージアム(仮称)の整備に関して、
○国宝・重文を含む優れた「実物」と最先端のITに支えられた「バーチャル」を融合した総合的な博物館。
○過去・現在の岡山の姿と人々の営みをまるごとデジタルアーカイブ化、劣化せず半永久的に保存・活用。
○奉還町商店街の活性化・全国発信と併せて、岡山駅西口ゾーンを形成。
○同居するNHKとの相乗効果。
  と記述している。

<教育委員会所管部門の文化事業について>
 その結果、その他の文化部門、生涯学習部門の所管は、教育委員会所管となっている。すなわち、中東の文化財を集めた「岡山市立オリエント美術館」も教育委員会所管である。
 その「岡山市立オリエント美術館」を現地取材した。
 

<<所感>>

<企画局総合政策部文化政策課について>

 今回の視察目的の一つは、「文化領域」に関して町田市では教育委員会が所管しているが、岡山市ではなぜ市長部局が担当しているか、ということであった。
質問を通じて理解したことであるが、この事業推進に当たっては新市長の誕生にあるようで、提唱政策のスムーズな実施をもくろんでことであったと推測できた。

岡山市の文化事業の目玉として位置づけられている「デジタルミュージアム」の建設が最大の事業であるという。視察の時の話には直接出てこなかったが、将来の岡山市の政令都市化をも見越した構想とも言えよう。
 
 まもなく、この「デジタルミュージアム」が完成を見るが、そのことでもって、この企画局総合政策部文化政策課の設置目的の半ばは達成されたとみなされるのではないだろうか。

<デジタルミュージアムについて>

 視察当時、まさに建設中の施設であり、現地ではその構想について説明を聞いたわけである。
 このデジタルミュージアムを作るために、文化政策課が出来たと言っても過言ではない。デジタル記録に徹することを目的にしたものであり、他に例を見ず、これからの美術館のあり方に一石を投じる施設である。
 本来は、こうした施設が出来上がった時に視察する方法もあるが、建設中に担当者から直接にその意義を聞き、機会を見つけて再訪問をする方法も取りいえるべきであろう。
 
 岡山の歴史的な遺産(国宝や重要文化財などを含む)から現在までの様々の情報に至るまでデジタルデータに保存したということであり、こうした分野に関心が深い人々にとっては、その技術がどこまで駆使されているか、アナログ表示との関連をどのように取り結ぶのか、ということにも興味がわくものである。

 岡山市の他施設や学校の学習教材としての利用が構想されており、特に学校教育では「学校ラン」と接続させるとのことであり、完成後、ここにあるデジタルデータが普段の学校教育にそのまま利用できる点も評価される。
 
 同じビル内に入居する「NHK岡山放送局」とタイアップし、ハイビジョン映像の見える講義室を設置し、具象的なものとの連携を図る構想が広がっている。

 多くの点で評価される反面、この施設に市民のリピーターが、どの程度ありうるか、さらに観光客がこの施設をどの程度に評価するか、いささかの疑問も感じたところである。特に、「費用対効果」が問われる時、この維持管理費の問題を巡っては、議論が起こりうるのではないかと考えた。

<岡山市立オリエント美術館について>

「岡山市立オリエント美術館」については、町田市の博物館と国際版画美術館をあわせたタイプのものである。所蔵作品では、中東の文化財を主に収集するが、展示品には小中学校の教書にも掲示されているような著名で、かつ高価な造形物(=アッシリア・レリーフ「有翼鷲頭精霊像」)をメインにしている。

アッシリア・レリーフ「有翼鷲頭精霊像」とは?
http://www.city.okayama.okayama.jp/orientmuseum/assyria/relief.htm

上記の作品を収納していることや、館のつくりとしては、自治体の博物館としては一級のレベルにあると思われる。

ただし、そのことによって、大勢の市民が利用するものにもつながらないことは、町田市の国際版画美術館にも共通していることであろう。

なお、同施設のHPについては、施設を訪問しようというものにとって、その判断に役立ち、分かりやすいものになっていると考えた。
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