宮城県白石市長選挙  電子投票視察(白石市)

1. 期   日  平成16年10月31日(日)〜11月1日(月)

2. 視 察 先  1. 宮城県白石市

3. 参加者氏名
   吉田 つとむ((自由民主党会派視察・単独)→下段の段落記事参照

 下記は、市議会提出の公式報告書をもとに、本文部分をネット化したもの。

自由民主党会派視察:電子投票の宮城県白石市の市長選挙
平成17年3月31日作成(最後の段落の注を参照)
記載者 吉田 つとむ

<前書き>

 統一地方選挙が行われた、平成15年(2003年)4月27日の(宮城県白石市の市議会議員選挙で電子投票が実施された宮城県白石市であるが、平成16年10月31日に実施された市長選挙においても、再び電子投票方式で行われた。
 この選挙の投票では、投票開始前に実施する「ゼロ票確認」に際して、大きな混乱があったと言う。その内容は、電子投票選挙において、その投票前に行うゼロ票確認において、多数の投票機の確認作業で、その表示がゼロでなく、「1」と表示されたという。すなわち、一般の投票で置き換えてみると、それは「空(から)」であるべき投票箱に投票用紙が1枚入っていた状態を示すことになり、投票所の現場は大混乱に陥ったと、現地に到着後に聞いた。
 私は、通常であれば、その投票所設置の段階から、その準備状況を視察見学するものであるが、今回の白石市擬選挙の電子投票方式選挙において、投票日当日の到着しか日程を組めず、この混乱振りをじかに見ることは出来なかった。
 ただし、投票締め切り時間の繰り上げ地域からの、投票箱(電子投票データ)の持ち込みなども含めて、電子投票選挙の開票状況を視察でき、それに基づいた報告を掲載する事にする。

<電子投票選挙の概要と所感>

 投票段階のトラブルでは、投票所の電子投票機の「立ち上げ」が上手くいかず、全投票所数39ヶ所106台の電子投票機のうち、16ヶ所62台が動かせなったと聞いた。(台数については、選挙管理委員会の情報でなく、現地にうわさによる)翌日の新聞(当地版)では、各紙とも、全投票所数39ヶ所106台の電子投票機のうち、29ヶ所62台が動かせなったと報じていた。

 そうしたトラブルの結果、1時間以上も投票できなかったところが出たという。その状況は、投票締め切り時間の繰り上げ地域から投票箱(電子投票データ)の持ち込みを行った投票立会人などから、具体的に聞くことができた。正式には、その時間数は発表されなかったが、このトラブル発生は、開票所において開票作業に入る前に、全部の参観人に対して行われた。その意味では、選挙管理委員会は誠意を有していたと考えられる。

 このトラブルの原因は、その日の段階では不明であった。

一般的には、投票所での選挙の投票開始直前に、最初の投票者に確認をもらい、投票機のゼロ票確認を行なわれる。(投票箱のゼロ票確認と同じプロセスで行われる)その際、この白石市長選挙では、電子投票機の画面表示が「ゼロ票」とならず、「1票」と表示されたとのことであった。これでは、その投票機で選挙の投票が出来ず、各地で投票事務を行う人や投票管理者がパニックに陥ったという。

 投票事務を行った一人の話では、その投票所の全投票機がそうしたトラブルを起こし、パニックに陥ったという。投票機を起動させる「コンパクトフラッシュ」のソフト内容に問題があったと考えられる。その投票所は、山間地域にあり、そのトラブルで「投票しなかった有権者はほとんどいないということであった。ただし、他の投票所のことも考え併せると、電子投票機のトラブルでその投票事務作業が行えずに、投票できずに投票所から帰った人が出たとのことであり、私たち被選挙人から見ると由々しき事態である。

 おおよそ1時間程で上記のトラブルが解消され、投票機が作動しだしてからは、市の広報車が出動して、投票できずに帰った人にも案内をしていたとのことであった。

 投票機がきちんと起動しなかった理由は正確には不明であるが、投票を開始するためのプログラム部分に何らかの不具合があって、投票記録が「ゼロ」となるべきところ、「1」の表示が出て投票を開始できなかったものと考えられています。

 そのことで言えば、最大の不明点は、トラブルを起こした62台以外の電子投票機は作動したと言うことで、本来、起動プログラム原本が入ったコンパクトフラッシュをコピーして、おのおのの投票機毎に配布しているはずである。それなのに、起動した投票所(あるいは、投票機)もあれば、起動しなかった投票所もあったと言うのが、分からない点であった。

 各投票所から、投票機が作動しないというその不具合の情報がセンターに報告されました。その時の混乱振りは、想像を絶するものであったであろう。なぜなら、ゼロ票確認は、投票立会人と最初の有権者(投票者)に行ってもらうものですから、各投票所は午前7時にそのパニックが起こったことになる。その後、本部の応援を経て、修復作業に取り組み、最長で1時間で投票所の投票が行えるように普及したと言う。

 また、他の選挙投票所の担当者に話を聞くと、電子投票のマニュアルには、投票機が動かない時のものはあっても、ゼロ票確認時に、それが「1」になるという事例は示されていなかったと言う。とにかく驚いたとのことであった。

 白石市内の投票所では、投票所に電話が常設されていなく、かつまた、携帯電話が通じないところもあるという。こうしたトラブルにどう対応するか、付記すれば、投票業務に当たった担当者と、選挙管理委員会の担当職員の緊張感は想像を絶するものがあったであろう。

 私が取材した担当者もこうした電話回線事情の悪いところの職員であった。電子投票機が作動せず、紙の投票用紙は数枚しか用意されておらず、それを使用することも出来ずに、とてもあせったとのことであった。

 実際には、近くの公衆電話があるところに走り、そこから電子投票機が作動しないことを連絡したとのことであった。またその際、ゼロ票確認で、「1」が表示されたことが特に驚いたことであったとのことでした。

 公務員の特性か、マニュアルにない事例が発生した時には、即座に「(上部の指示を仰ぐため)本部のセンターに問い合わせる」という判断が功を奏したと考えられる。

 各投票所では、とにかく最低1台の投票機を作動させ、午前8時頃には投票が開始できたとのことであった。全体の投票機が作動するにはかなりの時間がかかったようであった。

 思うに、今回の選挙が市長を選ぶ選挙で、候補者が3名であったことで投票者を誰にするかの判断が早く行えたであろうことも、最低1台の投票機で有権者の投票を行えた結果であろう。これが、多数の候補者が立候補する市議選であったり、その両方の選挙があっておれば、とても1台の投票機で選挙の投票はできなかったし、大きな投票待ちの有権者であふれてしまったはずである。

 この白石市の選挙で電子投票システムを導入したのは、有名電気メーカーであったが、そのメーカーにとっても、電子投票機メーカーにしても大打撃であった。はたまた、日本の全域で電子投票を実施させることは極めて困難な状況になるものと思われた。

なお、本来は冒頭に記載すべきことであったが、私が現地に視察に赴いた時点では、電子投票方式の投票は順調に進んでいた。

<開票作業について>

投票時のトラブルに比べて、その開票作業は実に単純であった。市長選挙であるため、投票数の事情も把握も明快で、得票数に関する疑問票が存在する根拠も無く、選挙立会人、傍聴者からの疑問点も全く出なかった。
これこそ、電子投票選挙の開票業務の特徴であろう。なお、この電子投票機は、スタンドアローン機(単体機)を使用したものであった。

<現地取材の補遺 1> 

 白石市は宮城県の最南端部に位置し、市の中心部である在来線駅とは少しばかり離れたところに新幹線の蔵王白石駅がある。

 選挙の公開取材個所は、第三投票区である「白石第二小学校」に指定されていた。会場は広く取ってあり、事前の情報では資料が何もないとのことであっが、きちんとおいてあった。午後の3時までが正式の取材時間であったが、やや遅れて現地に到着した。

 事前に議会事務局を通じて正式の視察申し出をしていたためか、その他の資料も個別に準備してあった。これは、この電子投票に関して、毎回欠かさずにその視察取材を続け、その視察報告を残しているからの事への丁寧なご配慮をいただいている結果と考えている。

<現地取材の補遺 2>

その後、白石市議会では、今回の電子投票選挙のトラブルに関して、「白石市議会の議員及び白石市長の選挙における電磁的記録式投票機による投票に関する条例」を廃止する議案が2004年12月6日(月)に出されたが、担当常任委員会で否決され、本会議でも否決されたとのことであった。<注:2005年2月14日本会議  常任委員会委員長報告(否決)に対して賛成多数で否決、とのことであった>

白石市議会では、今回の電子投票選挙において、その意義自体を否定する考えは持たず、トラブルはトラブルとして判断したものと考える。

<補>

今回は自分の日程で宿泊先の手配が十分にとれないことが予定されていたため、会派視察の予定段階で、宿泊費用の公費負担はなしとして申請していた。

<参考資料:吉田貞子議員(白石市)提供の経過メモ>
 
 上記の「白石市議会の議員及び白石市長の選挙における電磁的記録式投票機による投票に関する条例の廃止する条例」の審議経過に関して、わっかりやすい資料をいただいた。その氏名は、吉田貞子 白石市議会議員である。現地でも、状況説明を受けたこともあり、私は大いに感謝している。また、下記の資料は、白石市の電子投票選挙の実状に関して、ネットでは、最も詳しい資料となっているのではなかろうか。

<以下、資料の文章の本文>

○ 2004年12月6日(月)
  議提第13号「白石市議会の議員及び白石市長の選挙における電磁的記録式投票機による投票に関する条例の廃止する条例」の提案
   <提案理由>
1. 電子投票機器の認証制度がない
2. 公明かつ適正と言えない状況が発生した
3. 費用対効果の面で不十分
○ 2004年12月9日総務財政常任委員会付託
○ 2004年12月13日継続審査申し出
○ 2005年1月28日常任委員会
  <説明委員>
    ・助役  ・総務部長  ・総務課長  ・選挙管理委員会事務局長
    ・投票所事務主任者
  <参考人>
    ・東芝ソリューション(株)東北支社
 採決 満場一致で否決
○ 2005年2月14日本会議
  常任委員会委員長報告(否決)に対して賛成多数で否決
 <常任委員長報告要旨>
1. トラブルは人為的ミス
2. 故障は絶対ないとは言えないが、記録を確保して別機械の対応でトラブルは回避できる
3. コンパクトフラッシュの今回のトラブルは、検証作業を1段階増やすことで解消できる
4. 補助金は、今後特別交付税措置の予定だが、助成とトラブルミスの解消を国に要望する

以上の状況です。
私は、参考人に学識経験者や市民なども視野に入れ要望していましたが、かなわず。
東芝は説明の前段で、今回のトラブルが東芝の全面的な人為的ミスであることを謝罪しました。また、説明では、初期化に約15秒かかり、担当者が5秒ほどで初期化をしたことが、明らかになりました。初期化の確認作業段階を追加することでトラブルが解消されることで、常任委員会は廃止に反対の立場で一致しました。
私は、総務省が機器以外の認証制度を確立すること、廃案にせず今回の電子投票の総括をしっかりすること、特交になった場合の助成の確保を条件に、電子投票の継続に賛成しました。(以上、吉田貞子議員提供の経過メモ)
<注:作成日を間違えて、平成16年3月31日作成としていましたが、ご指摘により、平成17年3月31日作成と訂正させていただきました。処理日は平成17年4月12日>
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