電子投票の三重県四日市市の市長・市議補欠選挙視察(2)

1. 期   日  平成16年11月27日(土)〜11月29日(月)

2. 視 察 先  1. 三重県四日市市

3. 参加者氏名
   吉田 つとむ((自由民主党会派視察・単独)→下段の段落記事参照

 下記は、市議会提出の公式報告書をもとに、本文部分をネット化したもの。

電子投票の三重県四日市市の市長・市議会議員補欠選挙開票結果
平成17年3月31日作成(最後の段落の注を参照)
記載者 吉田 つとむ


<三重県四日市市長選挙・電子投票選挙の開票結果>

 四日市市の市長・市議選挙の開票が行われた。開票作業は午後9時20分に開始され、午後9時50分にはその開票結果が発表された。

 市長選挙では、午後9時45分時点で開票率97.9%

井上 哲夫候補 48152票(現職)
水谷としお候補 39343票
さの 光信候補  6699票
(総数 94194票)
 の結果となり、現職がその支持を固めました。

 市議補選では、午後9時50分時点で開票率98.8%
しょうじゆかり候補  7069票
とよだ たかし候補  5826票
ドリトル 中川候補  7949票
諸岡  さとる候補 36898票
西口 たかひろ候補 14264票
西口 ひろふみ候補  9948票
(総数 81954票)

 会場では、病院などで行われた手書きの不在者投票の開票確認作業が続いていましたが、大枠の結果が電子投票の開票結果発表で出たので、私はその時点で視察を終了し、ホテルにもどることにした。

<市長・市議補選の得票数の大きな相違>

 市長・市議補選の得票数の発表において、その得票数の大きな相違(10000票以上)が発生し、会場内にはそれを疑問視する考えがあった。

 たまたま、メディアの人を見かけたので、私は、「その相違は市長と市議の補選が同時であり、その選挙の投票当事者に大勢の現職市議会議員とその支持者が入っています。その人たちは、今回の立候補者の中から<市議会議員>を選出するのは困難であろう。結果としては、投票しないで終了する=白票の立場を取ったのでしょう。選挙の当事者としては、やむをえない立場です」と説明した。

 この点、いずれ詳述が必要かとその時点では考えたが、実際にはそれ以上の説明は不用とも判断した。(疑問を持つ方や、この解釈に反対の立場の方があれば、その意見を聞く機会を得たいと考える。)

<新見市と四日市市の比較>

市長・市議補選の立候補者の得票数相違に関して、私の周辺にいた選挙管理委員会の皆さん、メディアの皆さんに対して、コメント的な説明を行った。私が、行った説明の趣旨は以下の通りである。

 市長候補者の得票数と、市議補欠選挙候補者の得票数において、かなりの差が出ることは理解できることである。

 なぜなら、現職の市議会議員とその関係者(例えば支持者)にとっては、市長候補を誰に投票すべきか容易であるが、市議補選のどの候補者に投票するべきか、極めてデリケートなことになりと考えられる。その結果、(電子)投票の投票段階で(誰にも投票しないという白票という選択肢が電子投票にはルールに無いので)、現職の市議会議員とその関係者(例えば支持者)の立場では、「投票せずに、終了する」を選択するのがありうると判断した。

 ここで選ばれて議員になる人は、次回の選挙では他の現職議員はライバルになる立場からも、その意味を理解できるものである。

<(続き)新見市と四日市市の比較>

 今回の四日市市に選挙も含めて、電子投票選挙は全国10自治体(延べ12回)で実施されている。

 そのうち、今回のように市長・市議(補欠)選挙のように1回に2度の投票の選挙を行うのは、日本で最初に投票が行われた新見市の市長・市議選についで2回目のことである。
 
 私の記憶に基づけば、その新見市の電子投票選挙では、市長選挙の候補者に対する得票数が少なく、市議候補に対する得票数の方が多かったはずです。その理由は単純で、市長選挙は2名の候補者が争い、現職候補に共産党候補が対抗する形で行われたのに対し、市議選では市内全域を対象にした定数18名に対し、20名が立候補するが形で行われる少数激戦の選挙が行われた。

 それに比して四日市市の選挙では、市長選挙が現職に対抗して、元県議が立候補する激突型であった。他に、共産党推薦候補が立候補し、全部で3名の市長候補がそろっていた。それに対して、市議補欠選挙は、定数1名の選挙に6名の候補者が立候補する形であった。確かに候補者陣営からすると激戦であるが、公明党・共産党の候補者もいない上での選挙であった。それ以上に、定数が1名欠けていたとはいえ、他の現職市議にとって他の新人候補者を応援するのは、現実的に難しいことであり、その後援者にとっても、今回の市議補欠選挙で特定候補者の氏名に投票することは極めて難しい判断であると考えられる。投票機では、「誰にも投票しないで終了する」という選択肢があるため、今回の市議補選では支持する候補を持ちにくい有権者は、その選択をしたと理解するのが適当だと考える。

 この見解は、いかがであろうか。

<人口30万人都市での電子投票>

 人口30万人以上に都市(注:政令都市では人口10万人以下の一部の行政区で電子投票が実施された例を除く)の規模の大都市で、電子投票が行われたのは初めてであった。

 そうした意味で、東京都の杉並区、足立区や、さいたま市を始め、その他の大人口を抱える自治体の選挙管理委員会から、その関係者が視察に訪れました。自治体数で50以上、総勢で100名以上の選挙委員会職員、選挙管理委員が詰め掛けていた。その他私を含めて、数名の議員が視察に訪れていた。

 新聞、TVの取材も、この種の電子投票選挙では久しぶりの賑わいであった。やはり、「大都市」の選挙という把握であったのであろう。

 これだけ順調に開票される電子投票選挙の成果を見るならば、これを契機に、町田市の選挙でも電子投票を実施できればと思ったが、実際にはなかなか進展しないであろう。

<電子投票の今日の様相>

 タッチパネル式の画面を持った電子投票機の日本の水準は、世界的なレベルのものである。今回の四日市市の電子投票実施で、その意義は、ますます有効になってきた。

 日本のこうした技術を腐らせるわけにはいかないと判断する。四日市市で持ちいれられた記録方式は今回もスタンド・アローン(単体)方式あり、かなりのレベルで定着してきた。

 様々の考えがあり、議員が議論を行なって自分の役割を担っています。そうした皆さんの税金を有効に使ってこそ、意義があるというものである。

 なお、今回の電子投票の特徴を若干追加して記載しよう。

<今回の電子投票における問題点の発生と、その対策>

 開票作業では、投票データの入った「コンパクトフラッシュ」の読み込み作業において、それを複数の読み込み機に接続させ、まとめて「サーバー」に読み込ませていた。投票所では投票機の故障によるトラブルを避けるためにスタンド・アローン機(単体機)による投票機を用いていた。つまり、投票記録は、投票機ごとに記録媒体である「コンパクトフラッシュ」に電磁的に記録していたということである。ただし、開票作業段階では、まとめて「サーバー」に読み込ませることによって、開票作業の効率性と、設置機械の台数を減らすためのコスト圧縮をはかっていた。

 また、この四日市市の電子投票選挙における故障、トラブルとして、電子投票機が投票カードを読み込めず、予備機に入れ替えるという事例が、選挙管理委員会より、途中で報告されていた。その時点では原因までは分からなかったが、静電気の発生によるものであろうと推測されていた。
 なお、この間には、投票者は別の投票機で投票を行ったという。なぜなら、投票者には複数の投票機があり、他の投票機を用いることで、投票者の投票行為は保障、代替えされることに成るのである。あえて、予備機を導入するまで、投票者を待たせる理由はないのである。

 この投票機のデータは予備のコンパクトフラッシュのデータが、その読み込みの開票作業では用いられた。

 今回のケースにしても、投票所に置いて、電子投票選挙を行う場合、単一の投票機では、投票機が作動しないケースも想定されるべきであり、その意味では複数以上の投票機を設置することは必須と考えられて当然である。

<注:作成日を間違えて、平成16年3月31日作成としていましたが、ご指摘により、平成17年3月31日作成と訂正させていただきました。処理日は平成17年4月12日>
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