スパウザ小田原 視察
(自由民主党会派)

1. 期   日  平成18年11月9日(木)〜11月10日(金)
2. 視 察 先  1. 神奈川県小田原市
3. 記載者氏名
   渋谷佳久・吉田 つとむ

 下記は、市議会提出の公式報告書に準じる形式とします。

<見出し>
(1) 小田原市、8億5千万円の買い物の価値
(2) 小田原市の「スパウザ小田原」視察報告

(1) 小田原市、8億5千万円の買い物の価値

 この度の自由民主党会派は、小田原市の「スパウザ小田原」を視察しました。

 この施設は、勤労者リフレッシュ事業振興財団が所有していた滞在型タイプの勤労者の余暇の拡大を目指して、平成9年に建設されたものです。翌年の平成10年より営業が開始されていました。内容はいわゆる放漫計画・運営の典型みたいな代物で、総工費が455億円もかかっており、国の特殊法人等整理合理化計画策定の対象とされ、小田原市が検討の末に、約8億5千万円で雇用・能力開発機構及び労働福祉財団から購入したものです。

 ともかく巨大な施設であり、現在それを賃貸借して経営されている「ヒルトン小田原リゾート&スパ」のHP(http://hiltonjapan.ehotel-reserve.com/Japan/HiltonOdawara/hotel.asp)
によれば、総敷地面積7万3千坪の広大な敷地を有し、全室オーシャンビューの客室172室(コテージ10棟を含む)のリゾートホテルである事が書かれています。

 こんな大層なものをどのようにして作られたか、国の方針でそれを手放された時に、自治体がどのような判断をするか、そしてまた、購入した時点でどのような運営方法を考えるか、大変興味がある施設でした。

 この光景は、広大さを示す単に一コマであり、庭園芝生の右側に見える遠景は太平洋です。

 ここには、バーデゾーン(各種スパ、サウナ、25mスイミングプール)や各種スポーツ施設、エステティックサロン「アクアボーテスパ」、天然温泉大浴場が配置されています。スポーツ施設では、巨大な屋根がかかった掘り切り式のテニスコート2面、同様な形式の屋内体育館、野外式のテニスコート4面、パターゴルフ場などが備わっています。写真は、掘り切り式のテニスコート。

 小田原市は、この施設を平成15年12月25日に購入締結し、翌16年2月1日に引渡しを受けていました。小田原市は、同日から世界的なホテルチェーンのヒルトン社に、それを賃貸しています。(契約は、平成15年12月25日)5年ごとの更新方式が取られています。

 年間の賃料は、その売上高(サービス料を除く)の12.5%とされ、最低賃料が4億3千万円とされています。

 数字的には、自治体にとって非常に好条件と見られますが、以前では固定資産税が2億円以上も小田原市に入っていたものであり、相模原市がヒルトンに賃貸することで、その収入がなくなっているものです。ただし、国は小田原市にそれを売却する時点で、10年間の所有権移転の禁止条項を入れています。

 さて、小田原市にとってこの買い物が良かったのか、それともそれとは逆であったか、まだまだその結論はずっと先のことになります。ただし、小田原市としては、この地が人をひきつけるリゾートホテルであることを止めることはなかなかできないことでしょう。(続く)

(2) 小田原市の「スパウザ小田原」視察報告

 自由民主党会派の視察で、11月9日、小田原市の「スパウザ小田原」を視察しました。この報告は、「小田原市、8億5千万円の買い物の価値」としています。

 現地の視察に先立ち、市議会会議室にて担当部の方から説明を受けました。(冒頭写真は、視察メンバーの全員です)昭和63年から始まった、みかん園地の転換策として構想されました。これが、後の大きな無駄とされた雇用促進事業団の勤労者リフレッシュセンターの企画でした。余暇の拡大を背景に勤労者の健康とリフレッシュを主目的にした滞在型施設とされました。

 今にして思えば、総工費455億円という上記目的の公共施設の妥当性は誰しも首をかしげるでしょう。しかし、その建設時点では、他に施設にいたる進入路などの整備で、市などが約30億円負担しています。

 国の方針が変わり、この種の特殊法人施設を大量に放棄する方針になりました。建設費に比べると、破格の価格で地方自治体などに引き渡されました。

 もちろん、民間企業に国が直接売り渡すことも考えられますが、自治体にとっては最低限、従来の固定資産税収入があることが前提とされます。小田原市の所得目的では、「スパウザ小田原の初期の建設目的・趣旨を尊重し、滞在型健康リフレッシュ施設を中心に地域振興や観光を含めて、公用・公共を目的とした多様な事業展開を行う」とされています。

 小田原市がこれを取得し、前述のヒルトンホテルに賃貸されることになりました。外資の民間企業であることで、契約関係に機密事項が多く、市議会の説明では多いな苦労があったとのことでした。

 賃貸期間は5年間とされています。その間に、建物や施設にどのくらいの老朽化が発生するか、修復費用はどれくらいの見積もりとなるか、この事態はその後の5年間でも同様の問題が発生しうるものです。公共の支出負担の問題では、町田市に例を取れば、ホテルと共用のビルとなっている市立中央図書館の建物がありますが、その共用部分の劣化修復費用支出が、議会で問題となったこともありました。ともかく、自治体にとって、この種の施設を抱えることはその収入を見越すより、費用負担リスクを心配することの方がより大きな可能性を持つことになります。

 なお、この施設がホテルであることから、大浴場やバーデ・プールの利用に関して、市民限定、期間限定で割引制度が設定されていました。また、地場産品販売、地元業者採用などの特徴は優先されているようでした。

 ともかく、巨額をかけた国の施設を格安で地方自治体が引き取ったものです。10−20年間はなんとか若干でも収入を生み出すものになってもらいたいし、将来的には有効な売却が図られることを期待したい思います。 
--------------------------------------------------------------------------------