6 電子投票時代の選挙運動
 
 平成14年6月23日(日)、岡山県新見市の市長・市議選において、日本で最初の電子投票選挙が行われた。
 
 その投票では、タッチパネル式の投票機が使用された。すなわち、銀行のキャッシュコーナーで、誰もが現金を引きおろす時や、振り込む時に使用しているその機械と同じものである。しかも、この新見市では、住民に選挙以前から「電子模擬投票」が実施され、延べで1万人以上の人がその経験を経ていたと言う。

 私は、現地でも数箇所の投票所を回り、その現場で投票光景を目にし、メディアのインタビューに耳をすませた。「その電子投票を一番にするのだ」ということで、前日から投票所の一つである第一中学校に、寝袋持参で泊り込んで待機した人もいたほどの画期的な取組であった。

 また、当初は障害者の人に支障が多いと懸念されていたが、逆に障害を持った人々に以外と好評な面が出た様子であった。特に、目が見えなかったり、弱視の人には、イヤホンを使った音声によるモニター画面操作の投票が行われ、投票した人が簡単だったと言う、答えが返していた。

 この選挙が電子投票で行われたのを契機に、日本各地でこの電子投票方式は取り入れられていくだろう。数年後には、全部の選挙で電子投票に切り替わって来るはずに違いない。

 さらに、新見市の選挙では、不在者投票が現状と同じ手書き式であったが、開票の手間の関係から、不在者投票でもこの電子投票式が導入される見込である。

 ところで、電子投票時代の選挙は、どのような形態になるであろうか。

 もっとも簡単なその運動方法としてあるのは、
1 電子投票機のモニターの投票画面がどんな形になっているか、
2 その投票画面では、その候補者の位置がどこにあるか、
 ということを、事務所内できちんと明示することである。あるいは、とにかく口頭ででも、画面と候補者の位置を絶えず説明することである。

 現に、新見市の市議候補の選挙事務所には、その候補者の位置を図にして表示していた事務所があった。もちろん、その候補者は当選した。また、別の候補は選挙事務所に檄文はあったが、上記の電子投票機の画面の写真や図は無かったところがあった。偶然か、その候補は落選した。余計なお世話であるが、選挙運動とは少なくともできるだけのことはするのが基本であろう。

 さらに、電子投票時代になると、候補者がインターネットを使いこなせているか、いないかは大きな差異となる。自前のホームページを持ち、議員(新人では、政治家)としての活動を日ごろから、どの程度の内容と頻度で情報発信しているものは、有権者から好感度の高い政治家と評価され、そうでないものは働きの悪いタイプと決め付けられよう。

 さらに、そのHPに掲示板をもって、住民の問いかけがあった場合にきめ細かな回答を寄せているか、住民が気軽に話しかけられるネット環境がつくられているかが、議員にとって大変重要な活動になるだろう。そうした双方向性がかなえられるものが、これからの自立型社会の政治に相応しいと判断される日がやってくるだろう。

 この電子投票選挙は、来年の統一地方選挙では、まだまだ主要な選挙形態になることは無い。しかし、その次の選挙では主流の選挙方法になっている可能性が高い。それ以上に、インターネットが、通常の政治活動や議会報告に用いられる機会が、もっと比重をましてくるだろう。

 少なくとも、2年後の地方選挙では、ネット上の選挙運動の自由化が起きていることは自明のことである。こうした、電子化・ネット化の時代にスムーズに対応できる候補者は、そうした時代に重要な役割を果たすし、その反対の候補者は有権者の選択から取り残されることは必定である。

1 日本初の電子投票を現地で見る
2 私の現地ルポを手伝ってくれた人々
3 市役所職員の頑張り
4 死闘を制した、電子投票メーカー組合
4−2 (続き)死闘を制した、電子投票メーカー組合
5 開票作業
6 電子投票時代の選挙運動
7 私の、電子投票の一般質問内容(平成13年)
8 私が受けた取材
9 参考資料