宮津市の観光施策について

平成16年7月14日(水)宮津市視察
目的 宮津市の観光施策について

                   作成者 吉田 つとむ

<概要>

宮津市は、京都府の北側の若狭湾の一番西側煮に接しており、日本三景の一つに数えられる風光明媚な「天橋立」と言う、天然の観光資源を持つ都市です。そのため、江戸時代にも一般の観光対象にみなされてきました。

その宮津市は、他の近隣自治体と同様に、人口の減少に悩まされており、昭和30年には36,200人に上っていた人口が、近年の平成16年年4月1日現在では、総人口が22,925人にまで減少してきているのです。他方で、この宮津市は、「天の橋立」を挟んだ、市内の中心部である宮津地区と、その反対側の府中地区に分断しているのが特徴です。そのため、同じ自治体でありながら、宮津市は岩滝町を経由して、行きかうことになっています。もとより、宮津市を中心にして、その岩滝町を含めた近隣自治体の市町村合併が課題になっています。

産業分野において、第1次産業の農林水産業では、水稲を主体としたものでありますが、水産業では定置網漁業を中心とした沿岸漁業が行なわれています。第2次産業の商工業では、ニッケル製造、メリヤス生地製造の工場や海産物加工の丹後ちりめんの賃加工が主なものとなっています。
最も特徴的なものは、第3次産業分野の観光・リゾート業です。
 
 その観光・リゾート業では、年間に約260万人が訪れているといいます。「天橋立」と言う天然資源を生かした、丹後リゾートの拠点とした整備が進められています。

<所感>

 一般に、国内の観光地では、その客数の現象が大きな課題となっていますが、この宮津市では、下記のように、ほぼ横ばいか、もしくは回復傾向の実績を示しているのが特徴です。市のHPでは、古い資料しか掲載されていなませんが、視察の際にいただく、「市議会要覧」には最新データが掲載されていて、現地の説明はその資料に基づいて行なわれるので、直近の状況がつかめました。

観光入り込み客数の推移(平成16年議会要覧記事)

年次観光入込客日帰客
宿泊客
昭和50年
2650千人 2075千人 575千人
60年
2719
2098621
13年 2601 2077524
14年 2619 2086533
15年 2687 2143544

 その理由と考えられるのは、いくつかありますが、次の点に注目したいと思っています。

<交通手段の整備と、進展>

鉄道の整備では、平成8年にJR山陰本線及び北近畿タンゴ鉄道(第3セクター)の電化・高速化事業が完了し、京都・大阪からの時間距離が短縮されたことがあるとみなされています。私達が訪ねた今でも、京都からの特急で2時間を要しますが、その運行便が便利になっているようです。
次に、高速道路網の整備では、京都縦貫自動車道(宮津インターチェンジ〜大江インターチェンジ間)が平成15年3月に開通したことも、観光客を誘致することに役立っているようです。なぜなら、その高速道路の終点が、「天橋立」があるすぐ近くの文殊地区に近いことも考えられます。

<温泉の発掘と、観光施設化>

 平成10年には市内東側の由良地区で温泉が発掘され、平成11年には天橋立がある文殊地区に温泉が発掘されたことに経済効果が高く思われます。入湯税では、年間に3,200万円の市税収入があるとのことであり、その成果が出来ているようです。内部には入っていませんが、天橋立温泉駅のそばにつくられた、「知恵の湯」の人気度が高くなっていました。

<天橋立景観の観点と施設>

 この宮津市の天橋立の特徴は、約3,6キロに及ぶ保全された自然景観、海水浴場としての観光性、天橋立ビューランドからの展望が上げられます。最も有名なのが、モノレールとリフトで上がったところにある「天橋立ビューランド」の展望台から見る、有名な「股のぞき」です。実際には、「天橋立ビューランド」の施設がやや古さを感じされる施設となっていて、結果的に大きな集客力を持つとは考えがたいですが、ともかくその行為自体が歴史的なものであり、一度は見ておくべきものと評される価値を有していることは間違いありません。百年の昔は、徒歩で上って、その景観のすばらしさに浸っていたことでしょう。ある意味で、モノレールなどの利便性が、景観を楽しませる実感を薄らげているのかもしれません。ただし、この地点には、車では進入できないのが特徴で、良さであるのでしょう。

 海水浴場は、あくまで自然性を残していて、日本三景の海浜で海水浴が楽しめると言うことに尽きるのです。

 さて、この景観の砂浜と松林を保護、自然の潮流でこの砂を流さなくするため、海中下の砂の固定には絶えず監視の必要性が高いようです。この景観を堪能するための観覧船も、この文殊地区には多数配備されているのが特徴です。


<課題について>

上記のように、交通の利便性が高まると、一方で、宿泊数の減少につながってくるとも考えられます。宮津市では、年次計画などにおいて、環境客の増加、宿泊数の確保を考えているようですが、現在の状況で、大幅な宿泊数の増加は期待できるものではありません。景観の関係で、高層のホテルを建設することは得策でないですが、滞在型のリゾート施設の充実は、より集客数を増加させるものと考えます。

メディアや旅行者への対応(フィルム・コミッション)では、まだその取組みが始まったとは感じられない段階でありました。交通の利便性が高まった今、自治体がよりその意義を広める時期に入っていると考えました。

われわれが訪問した時期ではありませんが、ここは冬場の観光客にも必須の、食の面で集客力を高めることが感じられるものでした。なぜなら、食の日本海に面し、その景観を生かした通年性の観光イベントも、客を楽しませてくれるものであるでしょう。

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